経営・戦略

2024.07.27 08:00

ハローキティ「一本足打法」からの脱却 複数キャラ戦略で急成長フェーズへ

辻󠄀 朋邦|サンリオ代表取締役社長

データと論理で経営する

アフターコロナに移行すると、デジタルタッチポイントとの相乗効果でリアル拠点でのビジネスも活性化した。こうした成果は、「(社長就任後の)構造改革や組織風土の改革なしには実現できなかった」というのが辻󠄀の偽らざる実感だ。
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例えば物販事業では、前年度売り上げをベンチマークにする文化が根付いていたため、コストや顧客満足度を顧みることなくSKU(最小在庫管理単位)をとにかく増やしてトップラインを上げようとするのが当たり前だったという。「SKUを減らして無駄なコストを減らし、店舗のディスプレイも買い物をしやすいかたちに改善しました。さらにデータサイエンスのチームをつくったことで、初来店のお客様、2回目、3回目のお客様などの属性に応じたアプローチができるようになったんです」。

屋内型テーマパークの「サンリオピューロランド」も重要な拠点のひとつだが、チケット販売におけるダイナミックプライスの導入や顧客満足度の高いプログラムの投入、オペレーションの改善などにより客単価を上げ、利益が出る体質に変えた。24年3月期はピューロランド単独でも23億円の営業利益をたたき出しており、過去最高を更新している。

データを基に物理的な顧客接点におけるオペレーションや商品展開の改善に取り組んだことが、アフターコロナのインバウンド/外出需要や複数キャラクター戦略の成果による集客増の受け皿として機能し、足元の成長を支えているのだ。
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経営の意思決定の仕組みも変えた。創業者のトップダウンではなく、数字や論理に基づいた議論によりKPI(重要業績評価指標)、KGI(経営目標達成指標)を定め、社員全員が同じ方向を向ける体制にしたかったという。そのために外部から人材を招き、取締役会や経営会議のメンバーもほぼ一新した。

これらの改革が現時点で「成功」といえるのは業績が証明している。

「改革期でいちばん大事なことは、スモールサクセスをいかに積み重ねられるか。業績が上がることで、改革の意義と必要性を現場が深く理解してくれるようになります。改革の成果とビジネス戦略の成果が相互に作用しあうサイクルを初期の段階でつくれたことが成長のスピードを早めてくれたと思っています」

サンリオの株価は24年3月27日に上場来高値(3137円)を記録し、6月末時点の時価総額も7554億円と高水準を維持している。向こう10年の目標として掲げるのは、時価総額1兆円、営業利益500億円の達成。そのための基盤は整いつつある。


辻󠄀 朋邦◎1988年生まれ。慶應義塾大学卒。一般企業を経て2014年、祖父の創業したサンリオに入社。企画営業本部担当執行役員、取締役企画営業本部副本部長、専務取締役メディア部担当、キャラクタークリエイション室担当、映画準備室担当を経て20年7月より現職。

文=本多和幸 写真=ヤン・ブース

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