家を建てる客の幸福を願う積水ハウスは、幸せを提供するにはまず従業員が幸せになることが大切と考え、2020年11月から、個々の従業員の幸せを追求する具体策の研究を続けている。そこでは「幸せ度調査」を実施しているが、2023年度は、新たに従業員の自律と幸せの相関を調べる項目を設け、グループ会社の全従業員2万3117人の回答を集めた。
それによると、自律して働いていると思っている人ほど、幸福度が高いことがわかった。グラフを見ると、「まったく思わない」人は平均値が50だが、全体の振れ幅が大きいのに対して、「とても思う」人は振れ幅が狭く、高い値に集中している。
また、「やってみよう」、「挑戦力」、「自己裁量」など仕事への意欲に関する8項目でも、ポジティブな項目では自律していると思っている人ほど高い値を示した。個人の業績評価でも、ほぼ同じ結果を示している。
この調査を監修した幸福学の第一人者、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司氏は、「幸せと主体性や自己決定に相関がある」ことはわかっていたが、「これほど広範に幸せを構成する諸要素と自律との関係が明らかにされたことはありませんでした」と話す。
「言われたとおりにやれ」と強要しつつ「自分で考えて動け」と無茶なことを言う上司が少なくない。従業員の幸せまで考える職場がどれくらいあるだろうか。だが、もし従業員の自律性を伸ばすように職場の雰囲気や上司の態度を変えるだけで業績が上がるのなら、安いものかもしれない。
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