スケートボードをルーツに持つ柔軟な視点とペンティングやドローイング、コラージュなどさまざまな手法で作品を生み出す山口幸士。WONKのキーボードを務め、米津玄師など著名アーティストの楽曲も手掛ける江﨑文武。異なるフィールドで活躍する二人のコラボレーションは、景色や光を捉えた絵画と、そこから着想を得て制作された楽曲で構成されたインスタレーション作品となっている。
ゲストキュレーターの山本は、広告代理店、雑誌編集者を経て2010年にSumallyを創業。宅配収納サービス「サマリーポケット」を成長させたのち昨年代表を退き、新たに立ち上げたSMLでは、今春に代々木上原にクレープカフェ「ØC tokyo(オーシー トーキョー)」をオープン。ネットワークを生かし、食やアートを中心にさまざまな企画をプロデュースしている。
本展が生まれた経緯について山本は、次のようにコメントする。
「昨年、文武くんと一緒に山口さんの個展を訪れた際に、ペインティングを実際に目にして改めて感銘を受けた彼が、『自分のアルバムのジャケットを描いていただくのではなくて、むしろこの絵に僕が曲をつけたいなぁ』とポロッとこぼしていたのが印象深く、今回キュレーションのお声がけをいただいたときに、そのアプローチをギャラリーでのインスタレーションとして実現できないかと思い、この度の展示に辿り着きました」
日常の一コマのような景色が放つ淡い光と音
『Reflection / Reverb』というタイトルは、山口が描き出す景色という光の“反射=Reflection”と、それにインスピレーションを得て江﨑が譜面に書き下ろした“残響=Reverb”が響き合う様子を表現したもの。
ギャラリーには大小13点の油彩のキャンバスとそのために作られた楽譜がペアで並んでおり、中央に佇む自動演奏ピアノが奏でる音が空間を包み込む。どの絵画の楽曲が演奏されているかは、作品の下に設置された小さなランプの灯を見ればわかる仕組みだ。
「一連の絵画1枚ずつにサウンドトラックのように曲をつけていくというコンセプトの展示にはこれまで僕は出会ったことがなく、創作者として尊敬している2人との企画に静かに熱く興奮しています。初夏の外苑前で織り成される2人が紡ぐ世界観に満ちた空間を実際に体感してみていただけたら幸甚です」(山本)