そんな「はじめてのおつかい」が2022年より、ネットフリックスで190カ国に向けて配信され、海外で大きな反響を呼んでいる。その中には少なからず、戸惑いの声も含まれているようだ。
「公共交通機関に幼児を置き去りにする日本のテレビ番組」
英紙ガーディアン紙は「オールド・イナフ(「はじめてのおつかい」の英語版タイトル):公共交通機関に幼児を置き去りにする日本のテレビ番組」という見出しで番組を紹介している。決して間違っているわけではないが、なかなか刺激的な表現だ。また米タイム誌も、”Why Old Enough Is the Show You Should Be Watching Right Now(なぜ「オールド・イナフ」は今すぐ見る必要のある番組なのか)”というタイトルのもとに、「2020年3月に番組がネットフリックスで公開されるや、驚きと喜び、そして信じられない思いと不安が米国内を駆け巡った」と書いている。
そして、東京大学大学院工学系研究科の加藤浩徳教授の「日本の道路や通りは、子どもでも安全に通行できるように設計されている。日本には元来、自立と自給自足を大切にする文化がある」という言葉も引用する。
また、ある日本人専門家に取材したニューヨークタイムズ紙も、「日本においては、子どもをお遣いに出すことは子育ての典型的な方法であり、日本文化のアプローチの象徴ともいえる」と彼の言葉を引用している。
また米タイム誌は「(「はじめてのおつかい」を巡って)アメリカでは畏敬や歓喜から不信や懸念まで、多くの言説が飛び交った。それは必然的に、子育てのスタイルや文化の違い、インフラや政策に関する議論にまで繋がった」としている。
日本ではゴールデンタイムに放送されている「癒やし系」の番組に対し、海外メディアはとてもシリアスな感覚で受け止めているようである。
児童虐待? 違法行為?
言うまでもなく、「はじめてのおつかい」はプロによって製作されたバラエティ番組であり、「おつかい」の経路や手順には十分なフォローが施されている。子どもたちは決して放置されているわけではない。陰に隠れた大人に、安全に「おつかい」を遂行できるよう見守られているのだ。ネットフリックスで配信されている映像の中でも、通行人に紛れるスタッフたちの奮闘ぶりを繰り返し確認することができる。そういった安全面への万端の備えがあるにもかかわらず、海外の人々にとって「はじめてのおつかい」は非常にショッキングな番組なのだ。そこには、日本と欧米における、子どもの取り扱いに対する決定的な差異が潜んでいる。
例えば、アメリカでは子どもを一人きりにさせること自体が児童虐待であり、違法行為であると見做される。州によっては13歳の子どもに一人で外出や留守番をさせることさえも罰則の対象となるのだ。