こうしたフランスの豊かなラップカルチャーをたたえ、音楽ストリーミング配信大手のSpotify(スポティファイ)は5月、ラップやR&B、アフロビートの優れた作品やアーティストを表彰するフランス初の祭典「Les Flammes(レ・フラム)」を後援した。
これらの音楽ジャンルの隆盛は、フランスの人口動態の急速な変化を反映している。フランスでは移民の割合がどんどん増えてきており、これは政治的な緊張も高めてきた。
英紙ガーディアンによると、フランスのラップ界は長年、国内の主要な音楽賞で自分たちがまっとうに評価されていないと不満を募らせていた。そのため、レ・フラムの開催はフランスのラップ界で広く歓迎されているという。
スポティファイによると、フランスでストリーミング配信を通じて聞かれている音楽ジャンルとしては、ラップ、R&B、アフロビートの3つがほかを圧倒している。2022年には、国内のベストセラーアルバム上位20位の半数超がラッパーの作品だった。2021年にはラッパーのAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)が、フランコフォン(フランス語話者)のアーティストとしては世界最多のストリーミング再生回数を記録している。
一方、フランスのラジオ局で流される音楽では、ラップはわずか12%にとどまっている。これも、フランスでラップやラッパーらが軽んじられているとみられがちな一因だ。
こうした状況を変えていこうと、音楽メディア企業のBooska-P(ブスカペ)とYard(ヤルド)が立ち上げたのがレ・フラムだ。メインスポンサーとしてスポティファイを誘致することにも成功した。レ・フラムのウェブサイトでは、このイベントは個々のアーティストやグループをたたえるのと同じくらい、ラップというジャンル自体にスポットライトをあてるものだと宣言している。
賞の部門は、フランスの黒人コミュニティーで発達したさまざまなスタイルを反映したものになっている。
審査員の1人である作家のメコロ・ビリギはガーディアンの取材に、レ・フラムの開催を通じて、ラップがフランスの文化生活に果たしている中心的な役割について国民の理解が高まることを望んでいると語っている。
「ラップは根底的にアフロ・アメリカン音楽です。アフロの音楽に育まれ、アフロの音楽を育んでもきました。これ(レ・フラム)はフランスのブラックカルチャーの祭典なのです」(ビリギ)
ビリギは、英国の「ブリット・アワード」では2020年にラッパーのDave(デイヴ)が最優秀アルバム賞を受賞しているが、フランスでラッパーがこうした賞を獲得するのはまず無理だろうとも述べている。
レ・フラムはYouTube(ユーチューブ)とTwitch(ツイッチ)で生中継された。選考では一般の人も投票でき、多くの部門で約50%が一般投票に配分されている。
最優秀アルバム賞にはGazo(ガゾ)の「KMT」が輝き、Gazoは最優秀男性アーティスト賞にも選ばれた。また、Tiakola(ティアコラ)が最優秀ニューポップアルバム賞など3部門を制したほか、ナカムラは最優秀女性アーティスト賞を受賞した。
(forbes.com 原文)