それにしても今年は、以前にもまして“宇宙”の話題を目にする機会が多い。米国主導の有人月面探査「アルテミス計画」が、盛り上がりを見せているからだ。
2022年8月末に予定されていた無人1号機の打ち上げはエンジンの不具合などで延期されたものの、2024年には宇宙飛行士を乗せた宇宙船を月の周回軌道に送り込む予定だ。2025年以降の月面着陸を目指す方針は変わらない。
2022年9月末には、日本初の月面着陸機である超小型探査機「オモテナシ」を搭載するNASAの新型ロケットSLSが、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。
これも、アルテミス計画の一環で、SLSには有人月面探査のための新型宇宙船オリオンも搭載されている。地球と月を安全に往復できることを実証することを目的として、オリオンは今回、無人での飛行試験を行う段階にきている。
思い返せば、アポロ11号が人類初の月面着陸を果たした1969年7月20日から数えて、アルテミス計画は約50年ぶりの月面探査になる。
日本の民間企業も宇宙開発に参加
日本人と宇宙に関するニュースと言えば、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)を通じ、宇宙飛行士としてNASAのミッションに参加することが思い浮かぶ。今回のアルテミス計画が特に興味深く感じられるのには、その開発自体に日本の民間企業が数多く関わっている点があるだろう。
計画では、月の有人探査車の燃料電池システムの開発や探査車全体の設計に関し、日本の名だたる自動車メーカーがJAXAから依頼を受けている。
その他にも、日本の宇宙スタートアップが開発中の月着陸船(ランダー)を米フロリダ州から年内に打ち上げ予定であることが報じられている。地球と月との間の輸送手段の確立を目指すことを目的に、早ければ2022年11月にも打ち上げを実施する。2024年には別途開発中の月面探査車(ローバー)を月に送り込み月面探査を行う予定になっている。
この月着陸船には、JAXAが日本のメーカーや大学との共同開発した月面探査ロボなども積み込まれる計画だ。
いま、米国では民間企業を活用した宇宙技術の開発で成果が上がっている。日本も企業と連携することで宇宙開発の国際競争力の底上げを目指している最中だ。宇宙開発に関するニュースを見ていると、さまざまな企業の名前が登場し、宇宙ビジネスへの大きな動きが感じられる。
「月保険」が登場
ところで、言うまでもなく、月面探査はこれまでにない未知のリスクとの対峙になる。ミッションに参画する企業にしてみれば“保険”があれば安心して開発を進められるが、実は、専用の保険は昨年まで存在していなかった。