キャリア・教育

2022.10.11 08:30

重要なのは「多様な人材」よりも「多様性のある人材」だ

Getty Images

2013年、武田薬品の社長にグラクソ・スミスクライン(GSK)のクリストフ・ウェバー氏が招聘された。当時の武田薬品の長谷川閑史社長は、「外国人、日本人というのは大きな問題ではない」「グローバルな事業運営の経験を持つリーダーがふさわしい」と説明した。

現在の全日空(ANA)の制服は、ニューヨークで活躍するデザイナー、プラバル・グルン氏が手掛けたものだ。彼は外国人としてはじめてANAの制服をデザインした人物である。

この二人の共通点は何だろうか?

二人とも一人の人間でありながら、多様なバックグランドがあるということである。

フランス人のクリストフ・ウェバーは、オーストラリアで就職し、GSKではベルギーやシンガポールなどでの経験を経て、日本の武田薬品に入社している。


クリストフ・ウェバー(Getty Images)

プラバル・グルンはシンガポール生まれのネパール人で、インドでデザイナーのキャリアをスタートさせ、その後ニューヨークに住み、ミシェル・オバマ元米大統領夫人やレディー・ガガなどの衣装を掲げてきた。

ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)が叫ばれる中で、どんな人材を採用し、どんなチームを作っていくのかはリーダーや組織にとっては大きな課題である。特に日本においては、単一民族で、同じ言葉を話し、似たような価値観や考え方の人が多いので、ダイバーシティーと言ってもピンとこなかったりするものだ。会社として大上段にD&Iを掲げても、自分のチームの採用となると困ってしまう方もいるだろう。

そこでキーとなってくるのが、上筆の2名のような人材である。ダイバーシティーと言っても色々な側面があるが、今回はわかりやすく国籍やバックグランドという側面から話してみたいと思う。


プラバル・グルン(Getty Images)

ダイバーシティーが大切だから、グローバルな取引が増えたからと言って、アメリカ人とフランス人と中国人を採用したら、組織がグローバルになるわけではない。むしろ組織が経験するのは、価値観や考え方の衝突と混沌であろう。

それよりも、この二人のように様々な価値観や考え方の中で育ち、それぞれの側面を理解している人材が組織に増えていくことが、ダイバーシティーのある組織作りにとって重要な一歩になってくる。

つまり「多様な人材を採用する」のではなく、「多様性のある人材を採用する」ことが多様性のある組織を作る下地となるということだ。これは組織の規模の大小を問わない話だ。
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文=西野雄介

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