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2022.09.21 16:00

街にコネクトし、進化を加速するデジタルの力。都市とICTを学ぶ要として先端アセットが駆動する

デロイト トーマツ コンサルティング パートナー 宮下和浩

プロフェッショナルファームが培ってきたコンサルティグサービスは、先端のデジタルアセットと融合し、さらに新しいビジネス価値を創出する。デロイト トーマツ グループが立ち上げた新組織「Products & Solutions」をリードするデロイト トーマツ コンサルティングパートナーの宮下和浩が、ビジネスを変革し、継続的な成長に貢献するデジタルアセットのポテンシャルを語る。


デジタルアセットの活用をコンサルティングの中心に


デロイト トーマツはグループを挙げてデジタルテクノロジーの活用と、開発に力を入れ、新たな価値の創出を目指す企業の課題解決を支援してきた。グループ内ではデジタルアセットを積極的に活用する動きも活発である。2019年に設立した「Products & Solutions(以下、P&S)」は、デジタルを活用し、クライアントやパートナーと共にこれまでにないモノや、価値を創出するための組織だ。都市をスマート化する上でICTは重要なファクターとなる。クイックな PoC、新サービス実装の前線基地としてP&Sのプレゼンスは大きい。チームをリードする宮下和浩が、P&S設立の背景を語る。

「私たちはアドバイザリーコンサルタントとして、クライアントの戦略立案やプロセス変革を支援してきました。グローバルでは企業がいかに戦略的にデジタルを活用し、新たな価値を創出するかに焦点が絞られています。デジタルシフトやDXへの支援が活発化する中、アメリカのデロイトはデジタルカンパニーとして捉えられているほどです。日本国内では、自社のアセットを活用したコンサルティングにも力を入れています。私たちはこのモデルを「Assets Enabled Business(以下、AEB)」と定義し、さらなる価値の提供を目指して取り組んでいます。その先に目指すのは、デジタルアセットもフルに活用して価値を提供するコンサルティングファームの姿なのです」

P&Sの立ち上げはその一環だ。デジタルアセットの開発そのものではなく、それを用いたインキュベーションに重点を置き、デロイト トーマツ グループのビジネス変革や継続的な成長に寄与していく。これが組織のミッションである。

都市OS「City Connect」で生活の質の向上を目指す


デロイト トーマツが活用するアセットのひとつが、都市課題解決支援ソリューション「City Connect」だ。これは都市OSと呼ばれるソリューションで、人口減少や災害対策など、都市が抱える多くの課題を解決し、スマートシティ化を図るベースとなる。行政はもちろん、市民や企業、金融機関、医療機関など、都市を取り巻くあらゆるステークホルダーと複合的に連携する機能を持ち、課題解決のサービスやアプリケーションとして機能していく。

例えば、都市の情報を共有し、可視化するダッシュボード機能だ。自治体は公開情報や内部情報、センサーによって得られた情報などを統合し、スムーズかつスピーディーに提供できる。住民向けには緊急情報、イベント情報のタイムリーな共有も可能となっている。

「高齢者や要介護支援者に対する配食をクラウドで管理するサービスが考えられますし、単身高齢者と離れて住む家族や、医師が利用できる見守りサービスの提供も視野に入るでしょう。高齢者やハンディキャップを有する住民をオンラインコミュニティでつなぎ、運動などをサポートして健康増進を図ることなど、さまざまな用途で実装できます」

「City Connect」上でPHR(Personal Health Record)のようなヘルスケアデータや医療機関の電子カルテや、薬局の決済システムを連携させることで診察や薬の受け取りで要する不要な待機時間をカット。住民や医療機関、薬局のすべてで無駄をなくし、生産性の向上につなげられる。

避難所管理システムの人的工数を劇的に削減


災害大国・日本でスマートシティ戦略を進める上では、災害対策への配慮も欠かせない。「City Connect」には災害リスクを低減できるプロジェクトの実績があり、複数の自治体で実証実験が行われている。

その一つ、東京都三鷹市では避難所運営システムの実証実験を行った。従来、避難所の運営はすべて手作業で整理し、自治体の災害情報システムに手入力するというフローで行われてきた。これでは膨大な人的工数が必要となり、避難者の情報をリアルタイムで把握するのは難しい。

実証実験では、避難者カードの情報についてアプリを使った入力やチャットボットでの音声入力を実施。併せてQRコードや顔認証を用いて避難者のバイタル情報を管理する仕組みを導入した。避難者リストの作成で人的工数の約70%減という圧倒的な工数削減が期待できるほか、避難者の体温や心拍数といったバイタル情報も可視化できることになり、避難所内の健康管理にも役立てられる。

「防災をテーマとした実証実験は熊本県八代市も行っており、多くの自治体が関心を寄せています。こうした災害情報の提供は観光DXとも接続しており、多面的な価値提供につながります。観光客は旅先において一番の災害弱者になります。土地勘のない場所、言葉のわからない国で突然の災害に見舞われた際、このソリューションが行動の指針を示すことは重要な意味を持つのです」




存在感を持って立ち上がる都市OSの必要性とニーズ


スマートシティにおいて、都市OSは実装されなければ意味がない。そこで「City Connect」はユーザーフレンドリーな設計を重視していのが大きな特徴で、エジンニアなどの専門家でなくても、ノーコードでダッシュボードをカスタマイズし、さまざまなアプリケーションと連携ができる。各サービスが有機的に連携し、結果として住民のWell-being向上に貢献していくこと。これはまさしくFuture of Cities が目指す世界であり、都市に実装されたデジタルアセットの力だ。

「スマートシティにおける都市OSは、交通インフラやエネルギー管理など、あらゆる領域の基盤となるものです。例えばモビリティ面でスマート化が進めば、自治体にも自動運転車の管理・制御が求められるようになるかもしれません。そこで走行ルート上に道路の陥没が生じていた場合でも、ドローンによるセンシングで情報をいち早くキャッチし、補修などの対応が可能になります。人口減少などで迫られる都市のリサイズにあたり、これは重要な役割を担う機能になるでしょう」

これまで積み重ねてきた「City Connect」の実証実験を通して、あらためて都市OSの必要性とニーズが認識されている。AIが人類の知能を超える転換点―シンギュラリティはまだはるか先だ、と宮下は展望する。だからこそ、今そこにある社会課題にはデジタルアセット、そしてグループで積み重ねてきたコンサルティグの知見で貢献していく。

「デジタルで何ができるか━━、理想の未来を具体的にイメージしながら知恵を絞ることが大切です。人間の時間は有限なものです。私たちが高い生産性を持ってスマートシティの施策に取り組んでいくためには、AIなどの要素技術を生かしつつ、医療や交通、ファイナンス、エネルギーなど、あらゆるインダストリーで効率化を考えていくことが重要になります。資源の乏しい日本では、こうしたデジタルアセットの実装と、運用は国際競争力にも大きな影響を及ぼすことになるはずです。

都市OSが日本全国すべての自治体に実装されていく未来が理想です。その裾野は非常に大きいと考えていますが、これは私企業の利益を追求する取り組みではありません。社会課題の解決はデロイト トーマツ グループにとって重要なミッションの一つであり、『City Connect』はその一手段に過ぎません。Future of Cities はさらにその先、すべての住民のWell-beingを考えていきます」


本インタビューが掲載されている『Forbes JAPAN 9月号別冊 Future of Cities~新スマートシティ宣言』の紹介はこちら



宮下和浩(みやしたかずひろ)◎日系IT企業および外資系コンサルティングファーム、外資系オフショア企業で責任者を歴任。現在は新技術をソリューション化・アセット化し、それらをコンサルティングサービスに組み込む等のサービスプロデュースを実施し、顧客への付加価値提供の実現を担当。

text by Satoshi Tomokiyo / photograph by Togo Tatsune / promoted by デロイト トーマツ グループ

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新スマートシティ宣言