グループの知見を結集してスマートシティを推進する
スマートシティビジネスを推進するのがFuture of Cities:FoCと呼称されるチームだ。各プロジェクトはFoCが主体となって推進するが、業種/業界に特化したプロフェッショナルチームや、業界横断アジェンダの専門チーム「SMART X LAB」、さらにデジタルの実装を手がける組織や、サイバーセキュリティに特化したデロイト トーマツ サイバーも支援体制を敷いている。FoCの全貌を語る上で、松山知規はデロイト トーマツ グループならではの総合力を前提とする。
「FoCはグループを横断した融合チームとして編成されます。まず、FoC自体がデロイト トーマツ コンサルティング、有限責任監査法人トーマツリスクアドバイザリー、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー、この三者の融合部隊であること。これが大きな特徴になっています。グランドデザインや、構想の策定ではコンサルティグ部隊が強みを発揮します。スマートシティにおいて重要なファイナンスの設計や、組織構築では監査法人と、ファイナンシャルアドバイザリーのメンバーが強みを発揮します。
そもそも、私たちデロイト トーマツは監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務などを提供する総合プロフェッショナルファームです。そこで、多岐にわたる知見やサービスを融合させる取り組みとして、MDM(Multi-Disciplinary Model)を進めてきました。『ビジネスの全体像』の頃で『カタリスト(触媒)』や『End to End』というビジネスキーワードを香野が解説しましたが、その2つを実現するために、私たちはグループ内のあらゆる知見を結集するカタリストになります。FoCこそ、ファンクションを横断した総合編成チームの取り組みを体現する組織・活動と言えるのです」
デロイト トーマツでは、コンシューマー、資源・エネルギー・生産財、金融といった領域の下、さまざまなインダストリーのグループが展開しており、各グループには各領域固有の問題を熟知した専門家が集まっている。プロジェクトにあたり、FoCと各インダストリーの専門部隊は緊密に連携する。各領域の専門知識と、最新動向を共有し、時にはチームへの参画を仰ぐこともある。プロジェクトに応じた深度で協調し、専門性を存分に発揮していく。
「例えば自動車セクターであれば、日本の自動車産業の競争力強化に貢献したい、という強いアスピレーションを持った人材が結集し、業界最大規模の自動車業界のプロフェッショナル集団を形成しています。スマートシティのプロジェクトでは、新たなモビリティが都市や生活に浸透する中において、従来の枠組みを飛び越えた連携が求められます。金融機関との連携が必要であれば金融のインダストリーの協力を仰ぎます。その他、例えばヘルスケアや、通信といった、スマートシティで重要な役割を持つインダストリーとは、タイムリーに連携していくのです」
スマートXをはじめデジタルやサイバーの専門チームとも連携
まちづくりにはモビリティや、ヘルスケア、ファイナンスといった種々のアジェンダが存在している。社会と、個々の案件が複雑さを増していく中、1つの企業や業界が単体で解決することは容易ではない。松山が挙げるキーワードは「スマートX」だ。
「スマートシティは、スマートモビリティ、スマートヘルスケア、スマートファイナンスといった次世代の要素から構成されます。この先端のアジェンダを見すえ、連関させて取り組まなければなりません。デロイト トーマツ グループには、これら各アジェンダのプロフェッショナルが集まり、政策提言、技術戦略、実装まで支援する組織『SMART X LAB』があります。例えば、スマートエネルギーであれば次世代型のエネルギー戦略と、その実装支援に取り組んでいます。産業政策や技術戦略に精通したメンバーの知見は、まさに最先端と言えるものでしょう。FoCはこのチームとも連携し、スマートXの課題を解決していきます」
グループ内にはITプラットフォームの構築や、アプリケーションの開発など、デジタル化を支える専門チームもあり、都市ごとに最適化したデジタルを実装する。また、住民のデータ、個人情報が扱われるスマートシティではセキュリティや、プライバシーの保全も重要なテーマだ。サイバーセキュリティに特化したデロイト トーマツ サイバーとも連携し、安心・安全なまちづくりを遂行していく。
グローバル、グループ外との連携でFoCの活動を活発化させる
スマートシティはデロイト グローバルでも共通の重要アジェンダだ。FoCと同様に、各国のメンバーファームにおいても、專門のスマートシティチームが活動する。各国チームのケイパビリティが共有できるよう、東京やロンドン、ニューヨークといった主要都市間で情報交換を進める会議体が構成されている。
「月次ペースで都市事例を共有するバーチャルなコミュニティによって、各国のチームが連携しています。世界のメンバーファームを横串でつなぐネットワークは、有形無形の強みとなり、私たちFoCの活動に生かされていくのです」
FoCは世界の知見を共有しながら進むが、地方に広がる活動基盤も大きな特徴だ。共に汗をかき、真摯に地域創生を考えていく。これはデロイト トーマツ グループの根底にある企業風土であり、FoCメンバーも実践者としての気概を持ってプロジェクトに携わる。
「FoCは外部パートナーとの取り組みも積極的に進めています。先端的な技術を持ったスタートアップ、地域に根ざした交通事業者、金融機関、教育機関などとの関係構築は活発です。ここに、監査法人として各地域に拠点を持つトーマツの強みが発揮されます。今後は、各地域にFoCの推進基盤を構築し、地域に根ざした取り組みにも注力していきます。地域で勃興するスタートアップや、地場に根ざした事業者や金融機関、さらには大学などの教育機関とも共創を実現します。専門性を持った有力なプレイヤーと共に走り、新たなまちづくりを強力に推進していく。この理念はまったくぶれることはありません」
本インタビューが掲載されている『Forbes JAPAN 9月号別冊 Future of Cities〜新スマートシティ宣言』の紹介はこちら
松山知規(まつやまともき)◎地方自治体や不動産デベロッパー等に対して、まちづくりをテーマにしたコンサルティング領域に従事。近年は、デロイト トーマツ コンサルティングのスマートシティチームのリーダーとして、官民双方の立場からスマートシティをテーマにした構想策定から 実行までのプロジェクトを多数支援している。