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2022.09.06 16:00

デロイト トーマツ グループの強みを生かすFuture of Citiesチームが見定める変革のベクトルとは

デロイト トーマツ グループ ガバメント&パブリックサービシーズ インダストリーリーダー 香野 剛

デロイト トーマツ グループ ガバメント&パブリックサービシーズ インダストリーリーダー 香野 剛

「カタリスト(触媒)」と「End to End」―この2つはデロイト トーマツ グループがスマートシティイニシアティブを進める上でのキーワードだ。スマートシティの取り組みは、従来のプロフェッショナルファームが担ってきた第三者的なアドバイザリーにとどまらない。スマートシティイニシアティブのリーダーを務める香野剛が、カタリストとしてさまざまな組織をつなぎつつ、自治体や地元企業と共に汗をかいて進む実践者のあり方を語る。


カタリストとして多様な価値観をつなぐ


スマートシティプロジェクトは、そもそも公的な政策として進められるものだ。そこで重要になるのがプロジェクトの進め方である。デロイト トーマツ グループはスマートシティの領域として経済、モビリティ、セキュリティ、行政・教育、生活、環境という6領域に大別し、網羅感を持って考えている。テーマは広範になるため、行政のみ、あるいは単一のインダストリーの民間企業のみで進めることが難しい。必然的に、スマートシティのプロジェクトではクロスインダストリーの「官民連携」が求められる。デロイト トーマツ グループのスマートシティイニシアティブ(Future of Cities:FoC)をリードする香野剛は、官民連携ならではの課題を指摘する。

「官と民ではスマートシティによって実現したい姿を共有しつつも、その推進において、各々が重視するポイントは異なってくるのです。例えば、これまで公共の主な担い手であった行政は、地域住民の生活の向上を第一義として施策を考えます。一方、民間企業にとっては、地域住民の生活の向上を実現するサービスの提供は、自社の収益を得るためのプロセスとして位置づけられることになります。このことは時間軸でも同様です。民間の事業者は自社の事業構造に応じて投資と回収のサイクルを考えていく必要があり、通常、行政の時間軸とはギャップが生じがちです」

こうした相違は官と民の間だけに生じるのではない。官の中には国家機関である中央省庁、東京都や大阪府のような広域自治体、その下には渋谷区、新宿区、多摩市といった基礎自治体があり、それぞれが異なるレイヤーで機能する。道路を所管する部署や住民の健康福祉を所管する部署といったように、同じ自治体の中でも組織が機能別に分かれており、それぞれの目的と予算を持って事業を推進していく。スマートシティのプロジェクトは、以上のような行政のレイヤーや、機能別の組織に横串を刺し、つなぎ、一気通貫で、かつ連続的な取り組みとして進めていく必要がある。

民間事業者はどうか。通信事業者や、デベロッパー、モビリティ事業者、金融機関など、スマートシティプロジェクトでは複数インダストリーから成るコラボレーションで進む。バックグラウンドや商慣習が異なるために多様な価値観が多様化した事業者間をいかに融和し、連携を図るかが肝要だ。そこで香野が挙げるキーワードが「カタリスト(触媒)」である。

「官民それぞれの多様な価値観を持つ組織をいかにしてつなぎ、プロジェクトを推進していくか――これが、デロイト トーマツ グループが最も重要視するポイントです。だからこそ、私たちはそれらをつなぐカタリストでありたい。スマートシティの構想から実装まで、さまざまな価値観を持つプレイヤーのコラボレーションを推進していきます」

デロイト トーマツの総合力を生かしてワンストップで支えていく


もう一つのキーワード「End to End」は、スマートシティの方法論である4つの「結ぶ」を、グループとしてすべて提供できるという強みを表すものだ。戦略コンサルティング系のファームであれば構想策定、監査法人系のファームであればファイナンス設計や組織設計、IT系のファームであればデジタル実装といったように、多くのプロフェッショナルファームはバックグラウンドに依った得意な領域を持つ。デロイト トーマツ グループは監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務・法務という5つのビジネスでサービスを提供しており、デジタルテクノロジーの観点でもコンサルティングサービスを提供する。そこで、スマートシティプロジェクトの各フェーズにおいて、「構想策定」「ファイナンス設計」「組織設計・立ち上げ」「デジタル実装」といったケイパビリティを一気通貫で提供できるのだ。

「これらの強みを一つのファームで提供できるのはデロイト トーマツ グループのみです。『End to End』というキーワードのもと、この総合力を優位性として発揮します。スマートシティはこれまでのまちづくりや都市計画と同様、民間企業の事業に比べて長い時間軸のなかで進めていく取り組みになります。時には多くのプレイヤーが牽制し合い、プロジェクトの推進が阻まれることもあるでしょう。そこに第三者的アドバイザリーが介在しても、コンフリクトを解消することは容易ではありません。私たちはスマートシティプロジェクトにおいて、自治体のアドバイザーになるだけでなく、自治体や地域の有力企業と一緒に実践者としても汗をかいて取り組んでいきます。

デロイト トーマツは自らコンソーシアムの一員となって地域に入り込み、スマートシティに関する先端的な知見を提供してプロジェクトをリードしていく。場合によっては事業主の一員となって推進していくこともある。プロフェッショナルファームとして培ったアドバイザリーの強みを加えて、スマートシティビジネスを「End to End」で進めていく。




ビジネスパートナーを超えて同じゴールに向かうために


複数のインダストリーを巻き込むスマートシティプロジェクトの推進には、プレイヤーが持つ多様な文化や、価値観を熟知することが必要だ。しかし、プレイヤーはそれぞれの背景を持ち、時には独自の課題も抱えている。

行政サイドは複数年度にまたがるプロジェクトでも予算は年次で策定されるため、年単位での成果が重視される。一方、民間から参画する事業者は多様だ。自社の新サービスのテストフィールドとしてスマートシティを捉える事業者もいれば、中長期的なビジネスの変革の場として位置づけていたり、長期的な不動産価値の向上を目指すために短期的なリターンは考えていない事業者もいて、それぞれにビジョンと、戦略を持っている。

香野がスマートシティ施策で重んじるのは、それぞれのプレイヤーが持つ価値観や目的を把握し、それらを実現したい都市像と紐づけることだ。異なるプレイヤー間でも共有できる目指すべき都市像にプレイヤーごとに異なる価値観や目的を紐づけて統合し設計していく。

「そのプレイヤーがどのような価値観を有し、何を目的としているのかは、一朝一夕の関係性ではつかみかねるでしょう。そこで、ケイパビリティを一気通貫で提供できる強みと、地域に根ざして進められる関係性が生きてきます。私たちは地域とプロジェクトに入り込んで関係性をつくり、担当者のミッションまで緻密に理解して丁寧に各プレイヤーの目的をみえる化し、共通の目指すべき都市像に紐づけていきます。地道な取り組みであっても、参画するプレイヤーが同じ方向を向き、進んでいくためには不可欠なプロセスです。ここに、自らが触媒となり、身を投じながら取り組んでいくカタリスト、そしてEnd to Endの思想があります」

グループの総合力があれば、プロジェクトの複合的な課題にも対応できる。しかし、それはあくまで「手段」である。実現したい姿、つまり目指すべきスマートシティ像をメンバーで共有することが重要だ。香野はあらためて、クライアントと共に汗をかき、取り組んでいく姿勢を強調する。

「その地域においてスマートシティを実現し、受益者にもたらすWell-beingが最終的なゴールです。この軸をぶらすことなく、構想から実装まで伴走していくこと、それがFuture of Cities――スマートシティチームが担っていく役割なのです」


本インタビューが掲載されている『Forbes JAPAN 9月号別冊 Future of Cities〜新スマートシティ宣言』の紹介はこちら



香野 剛(こうのつよし)◎国、地方自治体、国公私立大学、医療機関などの公的機関に対する会計監査および会計制度構築、戦略立案、組織変革等の各種コンサルティングサービスに従事。国や地方自治体の委員会の委員も歴任。著書に『国立大学法人の会計基準詳解』(共著:清文社)など。公認会計士。

text by Megumi Takayama / photograph by Hiromichi Matono / promoted by デロイト トーマツ グループ

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新スマートシティ宣言