世の中の誰もが人の“想い”という情熱とともに行動することで、未来を拓いていく
設立から約3年半後の2022年7月にコーポレートブランドをリニューアルしたCARTA HOLDINGS。なぜ今なのか、そして新たに打ち出したパーパス「人の想いで、人と未来の可能性を、拓いていく。」の意味を、代表取締役社長兼COOの新澤明男(以下、新澤)に尋ねた。
「2つの会社が経営統合するにあたり、文化や価値観が共有できない段階でミッションやパーパスを決めるつもりはありませんでした。2019年の統合直後は、まだ2社がそれぞれでコーポレート機能を持った上で事業を展開しており、事業連携や協働という形でシナジーを追求していました。2022年に2つの会社がいよいよ一つになるタイミングで、僕らなりの言葉を紡ぎ、これからの更なる挑戦のために心を一つにしたいと考えました。我々が社会や世の中にとって何者であるのか、そして何をするべきなのかというところにおいて、ミッションを『The Evolution Factory』としました。さらに進化していく先にあるのは何か、社会に対して何をもたらそうとするのか、それらを表現したのがパーパスです」
代表取締役会長兼CEOの宇佐美進典(以下、宇佐美)はCARTA HOLDINGSがこれまで企業成長を続ける事ができた理由を、あらゆる環境下において人の“想い”を事業にのせて歩んできたことだと話し、また世の中の誰もが人の“想い”という情熱とともに行動することで未来を拓いていくと考えている。
「人の想いとともに進化していく姿を、CARTAグループとして大切にしたい価値観、そして社会に果たす存在意義と考え、パーパスとして言語化しました」
3つの事業領域を横軸でつなぎ、高い専門性を活かすホールディングス体制
CARTAグループには大きく分けて3つの事業がある。総合デジタルマーケティングやデータマーケティング・コンサルティングなど各ソリューションを提供するマーケティングソリューション事業、アドプラットフォームの開発および提供をするアドプラットフォーム事業、そして自社メディア運営やHR関連サービス、D2C事業など多彩な顔ぶれを持つコンシューマー事業だ。
運用型テレビCMプラットフォーム、テレシーを運営するグループ会社の株式会社テレシーでは世界初となるヘリコプターサイネージを扱い、株式会社ふるさと本舗ではふるさと納税ポータルサイトを運営するなど、同じグループとは思えないほどの意外性に溢れている。
しかし、デジタルマーケティングにおいては統一性があると、新澤はいう。
「3つの事業はバラバラに見えるかもしれませんが、広告主への提案、実際に配信する裏側の仕組み、広告を掲載するメディア、これら全てをグループ内で網羅できるという統一性があります。こうした広がりも含め、CARTAにおける一つの特徴になっているわけです」
だからといってオールインワンパッケージとして打ち出しているわけではない。
「基本的にはそれぞれの事業が独立して動いていますが、グループの中にいるからこそお互いが持つノウハウで問題点を相談しやすい。結果として広告主に対して高い効果を生み出し、メディアにとっては高い広告収益性へとつながっていきます」(宇佐美)
さらに新澤はグループ会社同士による横の連携がCARTA HOLDINGSの特徴でもあるという。
「例えばマーケティングソリューション事業の一つにDataCurrent(データカレント)という事業会社があり、クライアントのデータを再整備し、戦略を固めていくことを行っています。クライアントの課題を一緒になって浮き彫りにしていくと、当然次はどうするのか、となる。その際にDataCurrentだけで完結するのではなく、CARTAグループの中でよりサポートできる部分があればどんどん横連携をし、クライアントに対してさらなる拡充をしていくことができる。一社一社が高い専門性を持ってベストパフォーマンスを出せることがCARTA HOLDINGSの特徴です」
デジタル広告やマスメディアの境目がなくなりつつある今、広告業界は新たな転換期を迎えている。だからこそおもしろいと宇佐美は話す。
「デジタル化されていない領域をどうDXさせていくか、事業開発を進めていくかがCARTAの強み。インターネット広告の中で培った知見をベースに、広告領域だけではなく、メディアやD2C事業、HR事業などを上手く組み合わせながら事業領域を広げていくことで、さらにグループを成長させていきたいですね」
宇佐美進典 代表取締役会長兼CEO
経営陣と社員との距離の近さが経営を動かす原動力に
デジタルマーケティングにおいてアプローチが異なる2社の統合により発足したCARTA HOLDINGS。両者の特性を活かした人材育成や組織戦略はいかなるものなのか。
CARTA HOLDINGSには、自社の社員を知るために、社員が次の社員を紹介するシステムで1 on 1での対話を行う「ヒトノワラリー」という制度があり、宇佐美と新澤をはじめとした経営陣も日々多数の社員と行っている。また、ラウンドミーティングを行い、グループ各社の様々な部署ごとに社員と対話する機会を設けている。宇佐美は社員とのコミュニケーションを通じて伝えていきたいことがあると話す。
「CARTAとして新しい価値をどう浸透させていくかを考えたとき、社内にどのよう人がいて、どのような想いをもってCARTAにいるのかを知る必要がある。そして一人一人にフォーカスを当てながら、それぞれの仕事が会社のバリューに繋がっていることを伝えていきたいと思っています」
また役員を筆頭に各グループ会社からメンバーをスカウトし、チームに分かれて経営課題を討論、解決方法を模索する「CARTA CAMP」を毎年実施するなど、グループ内の繋がり作りや社員が持つ能力を常に発見、発掘していると新澤は語る。
「経営と現場の距離が非常に近いというのがCARTAの特徴の一つです。普通1500人程度の企業規模になると、どうしても縦型ピラミッド型の構造にならざるを得ない。そうなるとヒエラルキーによって上層部との距離がどうしても遠くなる。しかし我々の事業会社はそれぞれが裁量を持って事業を行い、ホールディングというフラットな組織が各事業会社をサポートする体制になっているので、経営と現場の近さを実感できる構造になっていると思います」
新澤明男 代表取締役社長兼COO
社員同士の横のつながりをきっかけに、グループ会社の枠を越えて生まれた新会社や事業、社内制度が既に稼働している。こうしたスピード感のある事業展開もベンチャー企業であったVOYAGE GROUPの強みを継承している証だ。
新澤は、CARTAは産まれたばかりのブランドのため、いち早くCARTA=デジタルの最先端企業だというブランド認知をさせ、同時に社員の姿を多くの人に見てもらえる機会を作ることでCARTAにジョインしたいと思える循環を作りたいと話す。
最後に、今後どのような人材を求めていくのかを宇佐美に聞いた。
「“想い”を持っている方に入ってきて欲しい。自分はこうしたい、ああしたいなど、意思と覚悟を持つ方と一緒に働きたいですね」
役員を含む社員同士がコミュニケーションを大切にし、互いを知ろうとすることで新たな事業を生み出し、進化を続けるCARTA HOLDINGS。だからこそ、未来を切り拓くパワーを持った人材を求めているのだろう。
宇佐美進典◎早稲田大学商学部卒業、トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)などを経て1999年10月にアクシブドットコム(のちにVOYAGE GROUPへ社名変更)を創業、COOに就任。2001年サイバーエージェントの連結対象子会社化。2002年CEO(最高経営責任者)に就任。2012年サイバーエージェントからMBOで独立。2019年のサイバー・コミュニケーションズ(CCI)とVOYAGE GROUPの経営統合に伴い、株式会社CARTA HOLDINGSの代表取締役会長兼CEOに就任。
新澤明男◎ソフトバンクを経て、1998年にサイバー・コミュニケーションズ(CCI)に入社後、2005年執行役に就任。新事業推進本部長としてeコマースやCGM系ソリューション開発などの新たなビジネスモデル構築を担当。2007年にはCOOに就任、2010年に代表取締役副社長、2013年より代表取締役社長に就任。2019年のCCIとVOYAGE GROUPの経営統合に伴い、株式会社CARTA HOLDINGSの代表取締役社長兼COOに就任。