この世論調査は、2022年6月23日から6月27日にかけて、米国に住む1053人の成人を対象に実施された。調査結果を見ると、米国の成人のうち、気候変動が個人に与える影響について「非常に懸念している」と答えた人は35%で、2019年8月比で9%減少している。
一方、気候変動が自分の生活に与える影響を「あまり/まったく懸念していない」という回答は32%で、2019年8月比で7%増加した。
「個人には気候変動を抑制する責任があると思う」と回答した人は45%だったのに対し、全体のおよそ3分の2は、「連邦政府や先進各国、企業が気候変動対策を講じるべきだと思う」と回答した。
この世論調査が発表される直前の8月12日には、気候変動対策を盛り込んだ4370億ドル規模にのぼるインフレ削減法案が米下院で可決され、16日にはバイデンが署名して成立した。
バイデンは2021年7月、3兆5000億ドル規模の「ビルド・バック・ベター(BBB)」法案を発表。しかし、気候変動とエネルギー分野への歳出額として米史上最大となるBBBを巡っては、民主党内での調整が難航し、今回のインフレ削減法案は、最初と比べると規模をかなり縮小したかたちとなった。
今回の世論調査発表当日には、非営利の気候研究団体「ファースト・ストリート財団(First Street Foundation)」もリポートを発表し、2053年には約1億700万人が、米南部のテキサス州から五大湖近くのウィスコンシン州にかけての「酷暑ベルト」で、厳しい暑さの中での生活を強いられることになることを示唆している。
同リポートの推定では、米中部に暮らす大多数の住民が、湿気と気温を加味した熱指数(ヒートインデックス)で華氏125度(およそ摂氏52度)を超える環境にさらされる可能性があるという。暑さが最も急上昇するとされるフロリダ州マイアミ・デイド郡では、熱指数で華氏103度(およそ摂氏39度)に達する日が、今後30年で7日間から34日間に増えるとみられる。
米国では気候変動を懸念する人の割合が減少したという調査結果にもかかわらず、米国のGoogleトレンドデータによると、異常気象事象についてインターネットで検索する人の数は、2022年に過去記録に達した。たとえば、「heat wave(熱波)」という言葉の検索数は過去5年間、毎年記録を更新している。唯一の例外は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがピークだった2020年だ。
2022年夏は、米国や欧州など多くの国で異常気象事象が発生しており、干ばつ、洪水、熱波といった気象災害に見舞われている。国連は2022年4月、気温上昇を摂氏1.5度以下に抑えるには、いまこそ行動を起こして炭素排出に歯止めをかける最後のチャンスだと、各国に対して警鐘を鳴らした。
米連邦政府は行動を起こし、上述したインフレ削減法案を成立させた。この法案についてはもともと、民主党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)が反対を表明していた。しかし、7月には同じ党のチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州選出)と合意。民主党50人の賛成だけで法案可決が可能となる財政調整措置(リコンシリエーション)という制度を使い、フィリバスター(議事進行妨害)を回避するかたちで、法案可決に持ち込んだ。
成立したインフレ削減法案は、バイデン政権がもともと打ち出していた気候変動法案と比べると、規模が縮小されている。それでも米国は、2030年までに、2005年比で温室効果ガスの排出を約40%削減するという目標に向けて、気候とエネルギー分野のプログラムに3690億ドルを投じることになる。