エディブルフラワーとはその名のとおり、食べられる花、つまりは“食用花”のことを言う。一般的なスーパーマーケットなどでも扱いが少なく、日常ではあまり食しないものがゆえ、花を食べることに抵抗を持つ方もいるかもしれない。
しかしエディブルフラワーは、外観の美しさだけでなく、味わいや栄養面においても優れている部分が多く、ガストロノミーの世界ではその可能性が注目されつつあるようだ。今回は計り知れないエディブルフラワーの魅力に迫ってみたいと思う。
豊富な種類
ひとことにエディブルフラワーと言っても、その種類は多岐にわたる。バラ、マリーゴールド、ビオラ(パンジー)と言った観賞用として聞き慣れた花の名前もあれば、アリッサム、ペンタス、ナスタチウムのように食用として定着しているものもある。いずれも色調もサイズもさまざまで、料理に鮮やかさや個性を瞬時に与えることができる。
年間通して収穫できる花もあるが、野菜同様に季節によって出回るラインナップは変わるため、旬を感じることができるのも魅力だ。ちなみに、観賞用の花にはホルモン剤や指定農薬以外の薬品などが使われていることが多く、食用としては適さないので注意したい。
愛らしい外観
食卓に花が飾られているだけて、華やかな気持ちにさせられるのと同様、エディブルフラワーをあしらったお皿が目の前に現れると、ぐんと気分が盛り上がる。例えばグリーンサラダに数輪散らすだけで、芝生に花が咲いたかのような華やかさが加わり、そこに生命力を感じる人もいれば、その愛らしさに癒される人もいるはずだ。
エディブルフラワーをあしらったグリーンサラダ
料理に視覚的なストーリーを与え、アート作品のような芸術性をもたらしてくれるエディブルフラワーは、“映え”目線でも頼りになる。
複雑で奥深い香り、食感、味わい
しかし、その魅力は見た目の美しさだけでなく、香りや食感、味わいやその余韻にまで広がる。
例えば香りで言えば、バラはお馴染みの甘美なフローラルさを、エリゲロンはハッカのような清涼感、ランタナは南国フルーツのようなトロピカル感をもたらしてくれる。ビオラにはサリチル酸メチルという成分が含まれているため、湿布のような独特の香りも感じられ、目が覚めるような爽やかさを放つ。
ビオラは食感も特徴的で、口に含んで咀嚼すると、モロヘイヤのようなネバネバ感をも楽しむことができる。アブラナ科のストックは貝割れ大根のような風味を持っており、マリーゴールドはスパイシー。ペンタスやトレニアは根元が甘く、幼少期にツツジの花の蜜を吸った経験を思い出す。エディブルフラワーの多彩且つ印象的なフレーバーは、料理の味わいに立体感と複雑味を与えてくれるのだ。
ペンタスを飾ったカルパッチョ。クセのない香味と仄かな甘さが心地よい。