その結果、衣食住のあらゆる場面でリユース・リサイクルが行われるようになり、独自の循環型社会が生まれた。
江戸時代は約260年も続いただけでなく、世界トップクラスの経済成長率を実現した究極のサステナブル社会である。
今回は、その生活・文化からエシカルな暮らしのヒントを探っていく。
「5R」が当たり前
江戸時代では5R(リデュース、リユース、リサイクル、リペア、リターン)が当たり前だった。
紙屑買いや古着屋、取っけえべえ(子どもが拾い集めた古釘や鉄屑をオモチャや飴などと交換して回収する業者)などの回収業者に加え、金属製品を修理する鋳掛屋や瀬戸物や漆器を直す焼継師といったリユース・リサイクル業者が数多く存在していた。
また、基本的に製品は土に還る原料でできていたため、不要なものは土へ還す(リターン)ことで環境汚染を防げたのだ。
着物は灰まで活用する
着物のサイズは着付けの仕方によって調節でき、すべてが直線縫いで容易に仕立て直すこともできるため、体型が変わっても一着の着物を使い続けられる。
汚れたり擦り切れたりした部分が増えてきたら、寝間着や布団、敷物、雑巾などにして、徹底的に使い尽くされた。
布がぼろぼろになった後はかまどや風呂釜の燃料となり、燃やして出た灰さえも、灰買いが買い取り、農業の肥料や陶器の上薬として活用されていたようだ。
ものを長持ちさせる匠の技
江戸時代の職人たちは、100年も200年も持つ道具や建築物を作ることを誇りにしていて、1度使ったら終わりではなく、形を変えながら、何百年も使用できるように考えていた。
家は何代にもわたって住み継いでいく工夫が随所に凝らされ、建物の基礎には、床下の風通しをよくして湿気やシロアリの被害を防ぐ「石場立て」が使われていた。
耐震性にも優れており、地震の多い日本に適した構造なのだ。
地産地消が基本
江戸時代は冷凍・冷蔵などの保存技術が発達しておらず、地元でとれたものを旬の時期に食べる地産地消が基本だった。野菜は四里四方といわれ、8kmから12km圏内でとれた新鮮なものを食べていたそう。
野菜は漬け物、魚は干物にすることで保存し、野菜くずは集めて堆肥作りに利用。
冷蔵庫がないためその日に食べられる分だけ買い、貴重な食べ物を無駄なく使い切っていた。