ウクライナの「EU加盟」、実現へのシナリオとその課題

Dursun Aydemir/Anadolu Agency via Getty Images

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、欧州連合(EU)にウクライナの加盟を速やかに認めるよう要請した後、EU加盟に向けた申請書類に正式に署名した。

EUへの加盟を希望する国はまず、自由市場経済の確立や、EUの法体系やユーロの受け入れなどの基準を満たす必要があり、その後、長時間の交渉が必要となる。EUの最も新しい加盟国であるクロアチアの場合、2013年に正式に加盟が認められるまでに10年を要したとブルームバーグは指摘した。

欧州理事会のシャルル・ミシェル議長はユーロニュースの取材に、ウクライナの加盟について「EU内にはさまざまな意見や事情がある」と述べており、加盟国すべてがウクライナの加盟を承認する可能性は低いと考えられる。

スロバキア、スロベニア、チェコ共和国の首脳陣は、ウクライナが速やかにEUに加盟できるような「まったく新しい道筋」をEUに作るよう求めているが、EU側は今のところ乗り気ではないようだ。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は26日のユーロニュースに対し、ウクライナのEUへの加盟を望んでいるが、加盟手続きには「時間がかかる」ことを示唆していた。

EU加盟国は相互防衛条項により、「自国領土への武力侵略の被害者」である国を援助することを義務づけられているため、ウクライナのEUへの加盟は直ちに軍事的支援となり得る。

また、EUへの加盟は、ウクライナに経済的な利益をもたらし、ウクライナ人がEU域内を自由に移動でき、EU市民に与えられている様々な権利が得られるなどの利点もある。

さらに、歴代の欧州の指導者たちも2月24日、米国のシンクタンク「アトランティック・カウンシル」のサイトに寄稿した論説記事で、EUがウクライナの加盟を検討するだけでも有益で、ロシアにメッセージを送ることになるだろうと述べていた。

EUの高官は28日のロイターの記事で、欧州理事会が3月10、11日に首脳会議を開き、ウクライナの加盟の可能性について議論する可能性が高いと述べた。

長年の夢だったEUへの加盟


ゼレンスキー大統領は2020年のポリティコの取材に「ウクライナ人はヨーロッパのウクライナに住みたいと思っている」と述べており、EUへの加盟はウクライナにとって長年の夢だった。

ウクライナはすでにEUとの間に、自由貿易とより深い政治的関係を促進するための連合協定を結んでいるが、ロイターは、ロシアが彼らのEU加盟への取り組みを妨げてきたと述べている。

EUはこれまで「ロシア政府の反感を買わないように」加盟交渉から遠ざかっていたが、加盟国と欧米諸国がロシアへの制裁に乗り出したことで、障害は少なくなっているとロイターは報じている。EUはすでにロシアに重要な制裁を課しており、EU史上初めてウクライナに資金援助や武器供与を行ったり、ウクライナの難民に最長3年間の一時保護を行うよう加盟国に指示するなど、他の手段でウクライナを支援している。

クレムリンは28日、EUとその「敵対的」な行動に反発し、ウクライナに武器を持たせる動きが「地域を危険で不安定にする」と批判した。

編集=上田裕資

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事