それも10年、20年の話ではない。数十年、数百年先をも見据えて、その営みを連綿と続けていくのが資産家の責務であり、そこに寄り添うのがプライベートバンクの役割でもある。
LGTが目指す資産運用・管理の在り方を、LGTの会長であり、リヒテンシュタイン公国のマックス・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子、LGTウェルスマネジメント信託株式会社代表取締役会長兼プライベートバンキングジャパンCEOである永倉義孝氏の両名に聞いた。
20年以上安定的な実績を誇るLGTの運用スタイル「Princely Portfolio」
LGTウェルスマネジメント信託株式会社(以下LGT Japan)として日本拠点を設けたLGTは一族の資産を900年、30世代に渡り管理してきた。近代のプライベートバンクとして1921年に10名の従業員で設立されたバンク・イン・リヒテンシュタイン(BIL)を始祖として業務を開始し、以降100年にわたり、リヒテンシュタイン公爵家の資産管理を行うと共に、そこで実践してきた資産運用管理のノウハウを、世界中の資産家にも提供してきた。現在、3900名を超える従業員を擁し、世界約20拠点で事業を展開する世界最大の民間プライベートバンク・資産運用グループとなっている。
Bank in Liechtenstein (BiL), 約1971年頃
LGTに口座を持つことが出来る顧客は、資産運用・管理においてどのようなサービスを受けられるのか。LGT会長のマックス・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子は次のように話す。
「お客様や従業員は、公爵家と共同で投資を行うことができます。一般的に『Princely Portfolio』として知られている私たちのポートフォリオは、アメリカの大学であるアイビーリーグの基金運用に似ており、超長期的な運用方針のもとで世界中に投資し、幅広い資産クラスに分散しています」
米国アイビーリーグをはじめとする大学には、卒業生などから多額の寄付金が寄せられ、それによって学校運営が行われており、その規模は数兆円にものぼると言われている。大学の運営に必要な資金を運用しているため、一定のリターンが求められるものの、失敗は許されない。目指すのは、“ローリスク・ミドルリターン”だ。
「私たちの運用戦略の目的は資産の保全にあります。期待リターンは純粋な株式のポートフォリオに相当するものですが、リスクはより低いものを目指しています。そしてこの共同投資のアプローチは、公爵家、お客様、従業員が同じ投資戦略に沿って、共同で投資することを意味します」(LGT会長、リヒテンシュタイン公子)
LGT Japanの永倉義孝氏は、過去の運用実績について次のように語る。
「このポートフォリオの特筆すべき点は、1999年から現在に至るまで、5年間の米ドルベースのローリングリターンを計算してみると一度も元本を割り込んでいないことにあります。米ドル建てのリターンなので、日本円に換算した場合は為替レートの値動きが影響しますが、この間、ITバブルの崩壊やリーマンショック、欧州通貨危機など幾度となく金融・通貨危機が起こったにも関わらず、5年間の投資期間の計算では、米ドルベースで元本割れが一度も生じていないのです」
ローリングリターンとは、たとえば1999年1月から2004年1月までの5年間、1999年2月から2004年2月までの5年間というように、期間をずらして計測した運用リターンのことだ。つまり5年間で見た場合、どの時点から運用をスタートさせたとしても、米ドルベースでは元本割れが生じていないポートフォリオを、LGTは世界中の資産家に提供し続けているのだ。[1]
[1] 5年間のうち、短期的には元本割れが生じている時期もあります。
世界で最も国民ひとりあたりのGDPが高いリヒテンシュタイン公国のサバイバル術
株式ポートフォリオよりも低いリスクで同等のリターンを実現し続ける。そんなリスク・リターン特性をどうやって実現しているのか、資産運用・管理に関心を持っている者なら一度は聞いてみたいと思うはずだ。LGTのノウハウが詰まった「Princely Portfolio」にはどのような秘密があるのか。
「投資を成功させるのは決して簡単なことではありません。不確実性や予測不可能性は、常に投資家が対峙する現実です。私たちはリスクを慎重に評価し、目標を定めて分散し、信頼できる内外の優れた投資マネジャーと協力するように努めています」(LGT会長、リヒテンシュタイン公子)
投資対象として、プライベート・エクイティやプライベート・デットを含むオルタナティブ資産やヘッジファンドに対する資産配分を高めるのと同時に、一人の投資マネジャーがすべてのアセットクラスを統括するのは困難であると考え、アセットクラスごとに世界をリードしている優秀な投資マネジャーと協力する体制を整えてきた。永倉氏はこれを「世界最先端の投資運用」と言う。
「投資運用に関してはリスクマネジメントを重視しています。そのためには、さまざまなアセットクラスへの分散が必要不可欠であり、事実、私たちのポートフォリオには、世界中の株式や債券、不動産、プライベート・エクイティ、プライベート・デットに至るまで、ありとあらゆる資産が組み入れられています。そして、このPrincely Portfolioに横串を指している理念が、サバイバルであり、サステナビリティなのです」(永倉氏)
LGTの日本拠点となるLGTウェルスマネジメント信託株式会社 代表取締役会長兼プライベートバンキングジャパンCEO 永倉義孝氏。自らも一人のバンカーとして世界最先端の投資運用を日本に広めていく。
世界で6番目に小さな国でありながら、リヒテンシュタイン公国は世界で最も国民一人あたりのGDPが高く、公的債務がゼロという豊かさを持っている。2度の世界大戦にさらされた欧州において、小国でありながら今なおその豊かさを保持し続けられているのは、サバイバルするための知恵と、サステナビリティを重視する姿勢を常に意識しているからだ。
あまり知られていないことだが、リヒテンシュタイン公国は暗号ブロックチェーン産業の集積地でもある。こういった進取の産業を取り込める懐の深さは、国としてサバイバルしていこうとする強い意志の現れともいえる。例えば、リヒテンシュタイン郵便局は最近、ブロックチェーンデータルームに保管できる最初の切手を発行した。
そしてそれは、LGTの資産運用・管理にも一脈通じている。「すべてにおいてドアを閉じていない」と永倉氏が言うように、ファミリーアセットを永続させる、つまりサバイバルしていくうえで必要なことを柔軟に取り入れる間口の広さがあるからこそ、LGTは長期の資産運用・管理において、唯一無二の存在感を放ち続けているのだ。
社会活動をしながら資産を守るインパクト・インベストメントの価値
リヒテンシュタイン公爵家ならびにLGTが、長期にわたりファミリーアセットを維持し、かつビジネスを発展させて来られたのは、サバイバル意識の高さはもちろん、もうひとつ重要なポイントがある。それは「時代の大きな潮流を正しく認識し、長期的な視点で行動すること」だと、LGT会長、リヒテンシュタイン公子は言う。
今の時代における大きな潮流とは、何なのだろうか。
「今日では、記録的なレベルの環境汚染と、それに起因する気候変動や、世界の多くの地域における社会的・政治的偏向の深刻化といった問題があります。
私たちは投資家として、かつ一市民として、こういった地球規模の課題にどう対処するべきかを考えなければなりません。だからこそ私たちは、管理の行き届いたサステナブル志向の強い企業に投資するインパクト・インベストメントを通じて、課題解決に貢献していきます。健全な地球を次の世代に残すことは私たちの責任なのです。」(LGT会長、リヒテンシュタイン公子)
Princely Portfolio、すなわちリヒテンシュタイン公国流のポートフォリオ形成スタイルは、自分たちの資産を安全に増やすことだけに主眼が置かれているのではない。それを通じて地球規模のさまざまな課題解決を促し、結果的に資産保全へとつなげていく、壮大ともいうべき社会活動の一環なのだ。
このPrincely Portfolioが日本の資産家、そして社会にどのような影響を与えていくのか。今秋開業したばかりの日本拠点・LGTウェルスマネジメント信託に注目が集まる。
LGT Private Banking Asia
https://www.lgt.com/asia/jp/
連載「Commitment, Expertise and Sustainability~900年以上の歴史を持つプライベートバンク、 LGTが日本にもたらす変化とは?」はこちら>>
#1公開中|日本の富裕層の資産管理が変わる ──リヒテンシュタイン公爵家の「プライベートバンク」LGTが今、日本に進出するわけ
#2本記事|900年続くリヒテンシュタイン公爵家由来の運用哲学 ── Princely Portfolio
#3公開中|リヒテンシュタイン公爵家の資産を900年守り続ける 超長期に運用するサステナブルな投資の価値
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