ビジネス

2021.01.03

動物用新型コロナワクチンは、毛皮産業の将来にどう影響するか

Spencer Platt / by Getty Images

ペットやミンクなどの動物に投与する新型コロナウイルスワクチンの臨床試験が、ロシアで完了に近づいているとロイターが報じている。

世界のいくつかのミンク生産上位国では、ミンクから人間に伝染する場合がある新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を抑えるために、大量のミンクが殺処分されている。そうした状況を受け、毛皮業界は混乱と危機的状況に陥っているが、このワクチンの開発が事態を好転させるかもしれない。

このワクチンは、新型コロナウイルスが家畜に感染しうるとの関係当局の判断を受け、ロシア連邦動物健康保護センターが開発に着手したもので、ウサギ、ネコ、ミンクなどの動物への接種を意図している。

ロシア連邦動植物検疫局の局長補佐官、ユリア・メラノ(Yulia Melano)の発言としてロイターが伝えるところによれば、臨床試験は2021年1月に完了する予定で、2月には規制当局の認可プロセスが進められるという。

このワクチンは、世界中のミンク養殖業者にとって重要な意味を持つ可能性が高い。ミンク業者の多くは、新型コロナウイルスを抑え込むための極端な政策に不安を抱いている。たとえばデンマークは、ミンクで確認された新型コロナウイルスの変異種が人間に伝染するという懸念から、1700万頭にのぼるミンク全頭を殺処分する決定を下した。

全世界で160万人を超える死者を出している地球規模のパンデミックのさなかには、動物用ワクチンの優先順位はきわめて低いように思えるかもしれない。だが、感染しやすい動物集団を保護すれば、危険な変異種が新たに出現するのを防ぎ、農業従事者の生活や産業を守れることから(ただし、最後の点については、ことミンクに関しては異論もある)、感染症の抑制に長期的な利益をもたらす可能性がある。

ミンクは毛皮目的で最も多く養殖されている動物だが、これまでにわかっている限りでは、コロナウイルスにとりわけ感染しやすい。さらに悪いことに、養殖場では密集した状態で大量飼育されているため、病気が拡散する可能性が高い。ミンク集団での流行は世界中で発生しており、一部では人間に感染したケースもある。そうしたケースでは、危険な変異種が出現するおそれがある。
次ページ > 毛皮業界から歓迎される可能性

翻訳=梅田智世/ガリレオ

ForbesBrandVoice

人気記事