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2020.11.30 11:00

米田肇×はじめしゃちょー 最高の感動体験を提供するために、僕たちは未踏の地を目指し続ける #30UNDER30 #Montblanc #WhatMovesYouMakesYou

モンブランが認めたMark Maker(マークメイカー)、「HAJIME」オーナーシェフ米田肇と、今年の「30 UNDER 30 JAPAN」受賞者、動画クリエイターのはじめしゃちょー。それぞれの分野で、誰にも真似できないマーク(筆跡・足跡)を刻んでいるふたりの対談が実現した。モンブランのブランドキャンペーンテーマ「What Moves You, Makes You」をキーワードに、ふたりを突き動かす情熱の源泉を語り合った。


選んだのは、「純粋さ」から発するものづくり


米田肇(以下米田):そもそも僕らは名前が同じ。ネット上では身近な存在で、かなり以前から動画を視聴していました。中学2年の息子は「はじめしゃちょーは神だよ神。まさか対談、断らないよね」と。その懇願にも応え、今日はわくわくしてこの場にいます。

はじめしゃちょーさんは7、8年前、ユーチューブが世間に浸透する前から動画を投稿されていますが、きっかけは何だったのですか。

はじめしゃちょー:僕は富山県で生まれ、静岡大学へ進学するまでは実家で育ちました。しつけの厳しい家で、門限があり、ご飯は18時半に家族揃って食べていました。自分自身は悪ガキ気質なのに、思う存分ふざけられずにいました。

その反動なのか、静岡でひとり暮らしを始めると、「もう俺を止める者は誰もいない」とばかりに溜め込んでいた想像力を放出しました。

「コンビニのパンを全種類食べようぜ」「マヨネーズ一本ぶっこんでご飯を炊いてみよう」とか、次から次へ思いついたことを行動に移していったんです。そうして仲間といろいろふざけてやっているうちに動画を撮るようになりました。



米田:抑圧されたままなんとなく大人になっていく人もいるけれど、熱量が多かったんですね。

私は、自然以外何もないような山の中で子ども時代を過ごしました。木の棒を拾ってきて釣竿にして魚を釣り、次は剣にして戦い、その次は弓をつくるなど創意工夫のある遊びに没頭していましたね。

それにも飽きると、ザリガニをたくさん獲ってきて並べて競争させたり、食用蛙のお尻に爆竹を入れてどのくらいで爆発するかを実験したり。いま思うと不謹慎ですが、人一倍悪ふざけを楽しんできたように思います。

はじめしゃちょー:いまならユーチューバーに向いているかもしれませんね。シェフの道へはどのようにして進まれたのですか。

米田:中学時代に、海外で活躍する日本人シェフがアメリカ大統領から表彰されるというテレビ番組を見て、「シェフ、かっこいいな」と思ったのがきっかけでした。

母は料理上手な人で、いつもおいしい家庭料理を味わえたことや、父が仕事でヨーロッパに行くたびにクッキーなどを買ってきてくれて西洋文化に憧れを抱いていた、というのも複合的な理由だったと思います。

ところが、「調理師の専門学校に行きたい」と両親に希望を伝えたところ、大学へ行かないなら自費で通いなさい、と反対されて。さすがに高校生で学費は払えず、そこはあきらめて電子工学の大学へ進み、コンピュータ企業に入りました。

当時はPHSから携帯へ移行する時代。息つく暇もないほど忙しかったというのもあるのですが、本当にやりたい仕事とはどうしても思えず、結局2年間節約して学費と生活費を貯め、26歳で専門学校に入学し、27歳でお店に立ちました。

はじめしゃちょー:覚悟を決めたという意味では、僕にも似たような経験があります。

大学4年生のときに教育実習の日にちと、ユーチューバーとして受けたとても大きなお仕事の日程が重なってしまったのです。仕事の性質上、真逆の選択になるので相当悩みました。所属先のUUUMの社長をはじめ、多くの人に相談をして、不安げに反対する両親を説得して前例のない道を選んだ。

だから、そのとき歌ったCMのテーマソング「好きなことで、生きていく」は、僕自身のリアルな決意表明なんです。

米田:僕たちにはどこか子どもっぽいところがありますね。けれども、ものづくりには純粋さが必要で、純粋さから発しないと生きたものづくりはできないと思っています。私の場合、その気持ちはいまもまったく変わりはないですね。

はじめしゃちょー:興味をもったら、夢中になって突き進んでしまう。そんな子どもごころを忘れずに27年間生きてきた気がします。



方程式は一定ではない。だからおもしろい


はじめしゃちょー:ある記事の中で、米田さんが「料理をつくっていると方程式が見えてくる」と語られていたのを「すごいな」という思いで拝見したことがありました。

それは動画作りにも当てはまるかもしれないと自分なりに考えてみたのですが、まだバシッとはまる方程式が見つかっていません。

ある程度の数字を担保できる式はあると思います。例えば、たくさんのモノを並べたり、最新のものを取り入れたり、ちょっと事件っぽいテーマだったりすると視聴者も見にきてくれて再生回数も伸びていきます。

でも、僕のこれまでの動画で一番再生されたのは、巨大グミを食べているだけの動画なんです。1億回以上再生されている。米田さんは動画にも方程式があると思いますか?

米田:宇宙の法則からいうと、銀河系自体が回転しているので、太陽も、地球も、自分たちも回転しながら動いていることになります。脳みそも腸も、指紋も、すべてが渦巻の中でランダムに動いている。

だから、方程式って、実は一定ではないんですね。ファッションも違うかたちで同じような雰囲気のものが出てきたり、女性の眉毛が時代ごとに細くなったり、太くなったり。

それとよく似た現象が動画にも必ずある。世の中の流れと個々の場所で瞬間に起こっている出来事とが複雑に絡み合って動いているので、いまあるものがずっと支持されるわけではない。その流れをつかむのは難しいけれど、だからおもしろいとも言えますよね。

そんななかでひとつ方程式があるとしたら、失敗を恐れずに新しいことに挑戦することじゃないかと。トレンドに合わせてつくるのもいいですが、すでにつくったものは捨てて新しいものをつくる、つまり「最先端の外側」をつくるという発想をもつことが大事だと思います。

はじめしゃちょー:銀河系のスケールでユーチューブを捉えたのは初めてです。

トレンドの移り変わりはものすごく早い。映像が洗練されていくのかと思ったら、ファミリービデオのような映像が好まれたりもする。一方では、意図しないもののほうが再生されたりしているんでよ。この意味も、いまのお話でなんだか分かる気がしました。

僕はユーチューブ界最強のHIKAKINさんのチャンネル登録者数を抜いたときが転機になりました。大きな達成感を感じたのですが、それと同時に、自分の方向性を見つめ直そうと思ったんです。それ以降、「まずは自分が楽しむ」という発想でやっています。それってたぶん、いちばん大事なことだと思うんです。

米田:私も3ツ星を獲った当時は、超多忙な日々のなかでノイローゼになるくらい思い悩みました。それで誰に何と言われようと、自分の世界観を素直に出そうと決めて、店名からフランス料理の肩書きを取り、「HAJIME」として再スタートを切ったんです。

最先端に立つということは、自分に立ち返るということ。そしてそこから自分らしい発想で次のステージをつくっていくということなんじゃないかな。

はじめしゃちょー:技術やトレンド、数字からいったん離れてみる必要がありますね。

米田:はじめしゃちょーさんは「完璧さ」をどう捉えていますか?

はじめしゃちょー:ユーチューブの場合、自分で完璧だと思うものをつくって配信しても、視聴者が消化不良を起こすことがあるんですね。逆に、知っていく過程を見せるとか、自分が興味をもったものをゼロスタートで見せるとか。

僕は「初見」を大切にするので、ゲームの仕事などは事前プレーなしで臨みます。知識を入れないほうがおもしろい動画が撮れたりしますから。

完璧にしすぎない、匙加減が大切です。「完璧さ」はちょっと先にあるほうがいいのだと思うんです。

米田:私の知り合いにロボット工学の第一人者がいるのですが、その先生に、「肇さんは完璧すぎるのがよくない」と言われたことがあります。なぜかというと、完璧な女の子のアンドロイドをつくると誰も近寄らないんですって。

ちょっと目尻を下げたり、鼻の穴を片方大きくしたりすると、みんなが親近感をもって近づいてくる。それも一理あるなと思いました。心を揺らす人間らしさがあるほうが、完璧に近づくのかもしれませんね。



好奇心と探究心で「最先端の外側」をつくっていく


はじめしゃちょー:これまでお話を伺ってきて、米田さんがこの先どのようなチャレンジをして「最先端の外側」をつくっていかれるのか、とても興味があります。

米田:これからの時代は、ひとつの専門性だけでは限界がくる、一見関わりのないように思えるふたつの専門性が融合するなかに必ず進化があると思っています。

私は料理人ですが、もともとはエンジニア。好奇心が強いので科学や宇宙、生物学、哲学などさまざまな本を読んで勉強しています。それが功を奏し、ロボット工学の第一人者・石黒教授や企業のAIチーム、宇宙食のチームと未来をつくるプロジェクトに参加しています。

宇宙に関して言うと、いまは機能食といって体にいい缶詰や乾燥食品が主流。それを「おいしくて体にいい食事」にできないかということで開発を進めようとしています。

地球に人類が誕生して数百万年、しかし今後、宇宙に人が住むようになればひょっとすると地球よりも長い歴史を刻むことになるかもしれない。それによって、地球上でいま食べている、感動できるすばらしい料理が宇宙でも食べられる日が来るのではないかと。その第一歩を私はつくりたいな、と思っているのです。

もうひとつがAI(人工知能)ですが、これは厨房内のロボット化を目指すものです。例えば、一皿に5人で100種類のものを置く場合、ロボットアームが100本あったら一瞬ですべての調理品を指定の温度で配置することができます。そういったところを研究所と組んで情報交換しつつ、新たな創造性を探りながら「最先端の外側」を開拓していきたいと思っています。

はじめしゃちょー:料理人と情報科学って、最強だと思います。伺いたいことは山ほどありますが、米田さんをそれほどまでに駆り立てる原動力って、何なのでしょう。

米田:宇宙やAI以外にも、哲学、宗教など興味をもった分野に関する書物はかなり読んできて、様々な知識がばらばらに存在していたのですが、料理がコアとなってひとつに集約されていき、それによって人が感動したり、幸せを感じたりすることにロマンを感じるんです。そして、その源流にあるのが、幼少期、あの山の中で繰り広げた感動体験なのだと思います。

先の見えない道を進んでいく好奇心は、「進化」。生き物を観察したり解剖したりする探究心は、「深化」。この両方は何歳になってももち続けていたいですね。

はじめしゃちょー:11月に心機一転、拠点を静岡から東京へ移したのですが、その節目に最高の出会いができました。「食」というのは、映像においても世界に通用するコンテンツ。米田さんとコラボをするのであれば、むちゃくちゃすごいことをじっくり時間をかけてやってみたいです。

米田:楽しみにしています。映像にも詳しいので、少々手ごわいかもしれませんよ(笑)。



最後に、モンブランのブランドキャンペーンテーマ「What Moves you, Makes you (今ある)あなたを突き動かしたものは何ですか」をそれぞれ記してもらった。「誰よりもまず、自分が楽しむ。」とはじめしゃちょー氏、「すべての人が幸せになる新しい未来への可能性」と米田氏。



モンブランのブランドキャンペーン「What Moves You, Makes You」
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よねだ・はじめ◎1972年、大阪府生まれ。近畿大学理工学部電子工学科卒業。エンジニアとして勤務した後、料理人に転身。2008年にHAJIMEをオープンし、世界最速でミシュラン三つ星を獲得。The Best Chef AwardsでアジアNo1、世界を代表する100人のシェフ「100 chefs au monde」にも選出される。辻静雄食文化賞専門技術者賞、KINDAIリーダーアワード 文化・芸術部門受賞、農林水産大臣料理マスターズ受賞。現在、JAXAのSPACE FOODSPHEREのメンバーとして参加。

はじめしゃちょー◎富山県出身。静岡大学教育学部卒業。東京を拠点に活動。「自由」をモットーにしている超フリーダムな動画クリエイター。実験系をメインにオールジャンルでなんでもしたいことを動画にしており、からだを張ったネタや、だれもしないような斬新で手の込んだ動画で、若年層より圧倒的な支持を得ている。「740人だるまさんが転んだ」で2015年10月ギネス記録を取得。


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