システムは完備、でもつながっていないのは「気持ち」?
趙氏は、次のように語る。「外出自粛ムードが高まり出した3月初頭に、以前からコーチングのトレーニングをさせていただき、親交のあった外資系企業様とお話をする機会がありました。その会社は既にリモートワークを開始されており、リモートに関わるシステムも全て揃っている状態でした。本来であればスムーズに移行できるのでは?と思ったのですが、マネージャー層内で、対面でのコミュニケーションで培ってきた部下との信頼関係が、リモートでは築きにくい、チームの一体感が感じられないという不安が出始めたという話を聞きました。そこで、『システムではなく、マインドでつながる』コミュニケーション研修の可能性を打診されました。このことをきっかけに、本プログラム開発に至りました」。
実際にリモートワークを進めている企業の実態をみてみると、オフィスで起きてはならない一番の典型例である「部下が何をしているかよく分からない、上司が何を考えているのかよく分からない」という現象が、ウェブに移行するとリアル以上に起きてしまうということに気づいたのだという。
オンラインに表示される「名前」も重要
また、そうした現象が起きる理由については、「マイクロマネジメントである進捗管理などは、お互いに自分のものは細かく報告したくないし、相手もしたくない。それ故にリモートで、お互い気持ちよく、モチベーション高くチームとして仕事をしていくためには、信頼関係が非常に重要なのです」。
オンライン上で信頼関係を築いていくために重要なのが、「表現力」だ。だが日本人は特に、表現することを苦手としている人が多い。対面の場合、日本では阿吽の呼吸である程度理解する、といった相手を推し量りながら仕事を進めるという風潮がある。リアルであれば、言葉で伝えきれないころによる多少の齟齬があっても、互いに修正できる機会もあろう。しかしリモートでは、意図的にきちんと伝えなければ、相手には伝わらない。
あなたが上司の立場にある場合、「常に私はあなたのことをちゃんと見ていますよ」、という意思を言葉で伝えていくことが非常に重要だ。それは管理するという意味ではなく、また無理に褒め称えるということでもない。やってくれていることを認め、認識しているというサインを送ることなのだ。
趙氏は、オンラインならではの具体的な信頼関係の構築法についても次のように語っている。
「企業によっては、『オンラインなんて嫌です』という方もいらっしゃいます。その場合は、一つの方法として、まずオンライン上に表示される名前の変更をしていただきます。ニックネームを書いてもらい、柔らかい方法ながらもこの会議に参加している一員として、当事者意識を高めます。すると、急にこちらが話を振っても『あ、これ発言しないといけないんだ』となって、ちゃんと話を聞いて答えてくれます。最近では、実はリモートのほうが講習を受ける受講生と信頼関係が築けるのでは、と感じることがあります」