今、アートが必要な理由
私たちは誰もがこの世界をより良いものにし、社会の分断を緩和し、公共の利益になるための解決策を探ろうと努力しています。社会起業活動は経済に付加価値をもたらし、教育機関の中に浸透し、さらに政治家の間で議論され、メディアで取り上げられています。これまで、社会変化のためのアートの力は十分に利用されてきませんでした。つまり、社会の中にある様々な枠を超えるレベルまで届いておらず、依然として世の中の大部分の人から遠く離れたものとなってしまっています。
これは単にお金のある人だけが恩恵を受けるという「ペイウォール(有料の壁)」の問題ではありません。これは考え方の問題、あるいは、アクセスできる環境が十分に整っていないことにより、恵まれない状況にある人々がアートや文化の良さを体感することができていないことが問題なのです。しかし、システム的にアートとコミュニティーを結びつけるためには、欠けているのはほんの小さなピースだけなのではないでしょうか。
30~40年前に社会起業活動という考えが生まれた時、営利と非営利の世界の間には埋め難いギャップがあると考えられていました。私利と公益の世界は結びついておらず、不信感と疑念を持って互いを見ていました。
10年前、「社会起業家(social entrepreneur)」という言葉は全く知られていませんでしたが、今では既存の構造の中で社会変化をもたらす人材を表す、いわゆる「社内起業家(social intrapreneurship)」という派生概念も生まれています。
今、さらに「アート起業家(artepreneur)」、つまりアートを通じて社会的使命を追求し、革新的で未来につながる、成果が目に見えるモデルを作り出す人たちが求められています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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