Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2019.12.27 11:00

「利益はいい、気にするな!」残業ゼロ・男性育休100%を達成した、地方の中小企業の挑戦

「残業をゼロにする、と宣言したら『売り上げが落ちる』『納期が間に合わない』などと社員からいろいろ言われましたよ。それでも、やると決めたんです」

新潟県長岡市を拠点として、公共産業用屋根の建築金具を製造するサカタ製作所の代表取締役社長、坂田匠はそう振り返る。

サカタ製作所は男性主体の職場で『働き方改革』とは縁遠い業界のメーカーでありながら、残業ゼロ、そして男性の育児休業取得率100%を実現するなど、急進的に『働き方改革』を進めている企業として注目を集めている。これまでに「ホワイト企業アワード」最優秀賞、「グッドカンパニー大賞」の優秀企業賞、さらに厚生労働省が提唱するイクメンプロジェクト「イクメン企業アワード2018 両立支援部門」のグランプリなども受賞している。

従業員数150人ほどの地方の中小企業がなぜ、働き方改革の最先端企業へと変貌を遂げたのか。


取り組み1年目で約3500万円の残業代を削減

それまでのサカタ製作所は、どの部署も長時間残業が常態化していた上に、女性の管理職もいなかった。社長の坂田自身、仕事に時間をかけることが会社の付加価値に直結すると思っていたという。

改革のきっかけは、2013年9月、ワーク・ライフバランス代表取締役社長、小室淑恵氏の講演「経営戦略としてのワーク・ライフバランス-多様な人材が活躍できる仕組みづくり」を当時の総務部長が聴きに行ったことだった。その内容に感銘を受けた部長は、総務部の女性メンバーにも聴きに行くよう勧めた。女性メンバーたちの賛同を得て、役員の許可を取り付け2014年11月、従業員全員が集まる年一回の全体集会に、小室を招くこととなる。

小室は講演で、当時のサカタ製作所の勤務状況にも触れた。女性管理職がひとりもいないなんて、今まで関わった企業の中で見たことがない。残業体質が常態化しているのは、経営者・管理職が労働生産性に対する見識が欠如しているからではないか。間違った時間管理意識が根強くて、マヒしている。残業はすぐに減らせるはず。しかしながら、お聞きしたサカタさんの実情では到底無理でしょう──。

「散々な言われようでした。でもグウの音も出なかった」

小室の言葉を受けて、講演直後に坂田は立ち上がり社員全員がいるその場でいきなり「残業ゼロ」をめざすと宣言した。

「本来なら役員会議を経て決定しなければいけないのに、その場で残業ゼロ! と言ってしまったんです」

もともと、残業を前年比20%減らすという目標が役員会議で決定していたところに、いきなりのゼロ宣言。売り言葉に買い言葉のごとく、坂田の一存で決め、全社員に公言してしまった。

まずは残業に関する会社方針を社内通知し、残業に対する考え方の意識統一をした。そして、業務内容を見直し、残業削減に向けた取り組みを、管理職の評価項目とした。管理職がリードし、全社員で本格的な残業ゼロに向けた取り組みが展開されることになった。

その過程で、仕事ができる人に業務が集中する、この人にしかできないという属人化した仕事のあり方を反省し、詳細な業務の「棚卸し」を実施。もし残業の原因が取引先にあるのなら、管理職が取引先と交渉した。部署別に時差出勤、時差勤務をするなど、これまでにない工夫を凝らし、残業削減の取り組みが行われた。

残業ゼロにするためには、それまでの働き方に大きな影響を及ぼす。売り上げが落ちる、坂田は利益が下がると言われた時も「気にしなくていい、利益はいいから残業するな」、納期が間に合わないと言われても「顧客に謝ればいいから残業するな」と、一貫して方針を変えない姿勢を見せた。

ただ、「信用を失くすよ」と言われた時はさすがに堪えたという。それでも、「その可能性はあるが、ここでは退けない」と、残業ゼロに邁進する。

社内への浸透は意外と早かったと、坂田は語る。社員1人あたりの平均残業時間は2014年が1カ月で17.6時間だったのに対し、2016年には1.1時間に。

「私はただ、逃げ道をなくしただけ。うちの社員は素晴らしくて、私の自慢でもあり誇りでもある。めいめいが工夫してくれましたね」

社内に18〜19あるチームが上期、下期と分けて改善活動を続けたところ、最終的に残業ゼロを達成。その結果、年間3447万円もの残業代が削減され、その全額は社員にボーナスとして支給され、モチベーションアップにつながった。


事務イスとしてバランスボールの使用を許可したり、昼休みの運動や仮眠を推奨するためヨガマットを社員へ配布したりするなど、職場環境の工夫も凝らしている

男性育休を推進して見えた課題

同社はさらに、男性育休100%への取り組みへと進化していく。きっかけは、ある男性社員が、育休を取りたがっている、という話からだった。本人は取りたがっているが、取れない、上司に言い出せないという。坂田氏自身は当時、そもそも男性でも育休が取れる制度があることを知らなかった。

育休を取りたい本人に話を聞いてみると、「忙しいし、周囲に迷惑がかかるから取れない。同じ時期に子供が生まれる同僚が育休を取らないので自分も取れない」と告白した。そんな彼に、会社として積極的に育休を取るよう勧めたという。

同時に、忙しいから自分が休めるはずがない、妻が出産しても育休の申請をしないと話していた社員の部署にも行き、本人だけでなく部署の全員に男性育休の必要性を説いた。

「休みを取りたくないのに、会社から取らされるのは良くないけれど、収入面の不安はないし、業務の引き継ぎはしっかり行う。それなら育休を取りましょうよと」

男性の育休時には、休業前月収のおよそ6割となる「育児休業給付金」が雇用保険から支給される。さらに社会保険料免除、税金の負担軽減などで、最大で育児休業前の9割以上がカバーされるため、育児休業によっていきなり家計を圧迫することはない。しかし一般的にこの制度はあまり知られていない。

サカタ製作所では、男性社員の休みにくい雰囲気を解明するため、総務部の女性社員2名を「推進スタッフ」に任命。過去に育休を取得しなかった男性社員に聞き取りを行った。

たとえ育休を促されても、売り上げ、成果も求められる矛盾した雰囲気。そして、周囲の目や評価への不安、経済的な心配といった問題が浮き彫りとなる。しかし、ここでも坂田が声をあげる。「イクメン推進宣言」だ。

全体集会などの場で、育休を取得した社員や推進した管理職を高く評価し「業績が落ちても構わない」とここでも明言。社長がハッキリと声をあげたことで、男性の育休取得が当たり前になり、イクメン企業へとより具体的に進んでいったのだ。


技術開発部 技術開発課 正司亮平 育休取得が終わって、1歳の頃。お気に入りの幼児用のビスケットを細かくひと口サイズに割って食べさせているところ。「パパは帰宅後、すぐに子どもと遊んでくれるので、手際よく食事の準備ができます。子どもと関わる時間を大切にしてくれるので、子どももパパが大好きです」(妻より)

出産予定日が決まっている育休は、病欠と違って、前もって休む時期が明確でわかりやすいはずであり、引き継ぎや準備期間は充分にあると考える。対象社員が休みに入っても業務に支障がないよう、常に情報共有を行い、生産性の高い仕事のやり方を部署単位で工夫を盛り込むなどし、工場の作業者に対しても多能工化を進めている。結果、誰が抜けても仕事がまわせるようにしなければならないという意識が高まり、業務の相互理解やチームワーク形成が進み、組織が活性化されているという。

サカタ製作所の男性社員の育児休業取得者は2017年で4名、2018年で6名。その全員が平均1カ月程度の期間で育児休業を取得している。また、休んだことによるキャリア形成への影響や人事評価を下げることは全くない。

現在、サカタ製作所では、担当取締役や直属の上司から、本人に必ず育休を取得するよう三者面談を行い、総務から育休や短時間勤務などの説明もする。その他にも、イクメン社員・イクボス上司を表彰するなど、男性育休に積極的な姿勢を打ち出している。

残業ゼロや男性社員の育休を進めていくことで、意外な発見もあった。それは、「その人にしかできない仕事、というのは実は生産性が悪く、他者が代わりに行うことで改善点が見えてくる」というもの。自分しかできないから休めない、会社も休ませられない、というのは、結果的に会社の生産性を落とすことにつながる、ということも見えてきたのだ。

社内で「ベビーブーム」が起きる

男性社員の育児休業取得率が100%となった今、社内の環境は大きく変わった。赤ちゃんのいる社員だけではなく、子供のいる社員も育児に関わる理由で有給休暇を取りやすい雰囲気になった。学校行事の参加が増え、子供が急な病気にかかっても病院の付き添いができるようになったという。

また、働き方改革の最先端企業というイメージが周知されることより、企業の魅力が向上。優秀な人材の採用活動にも効果が出て、採用には困っていないという。

以前はワンマンだったと話す坂田。子育てより仕事、帰宅は毎日夜10時、全てにおいて自分が一番の存在であるべきで、営業、技術、すべての業務をこなさなくてはならないと考えていた。

しかし、会社の規模が大きくなるにつれ、坂田の考え方は変わっていったという。経営者はマネージャーであり、社員を信頼しなくてはならない。問答無用で「俺について来い」というやり方から、社員に寄り沿っていくという考え方へと変化していった。

「会社は公器であり、世の中そのものである。社員にとっていいことは、世の中のためになる、という考え方へと変わっていきましたね」

社員のより良い生活のため残業ゼロ、男性育休取得100%の方針をとったことにより、逆に生産性が向上し、主要事業の売り上げも堅調だ。恐れていた減収や信用失墜はなく、むしろ表彰されるほどの優良企業へと変化を遂げたのだ。

現在の社内の雰囲気について聞くと、坂田は笑顔を見せた。

「うちの会社では今、ベビーブームが起きているんです」

男性も女性も育休や育児に関する有休の申請が取りやすい環境、そして残業ゼロにより、終業後の時間に余裕が生まれ、翌日のための静養と気分転換ができる。

定時に帰宅後、子供の宿題を見てあげるなど家族の時間を持てるようになり、安心して子育てができる環境・家庭円満へとつながっている。


製造部製造課 遠藤佑太 育休期間中に撮影。下の子供と妻と3人で丸い発砲スチロールのおもちゃで遊んでいる。「いないいないば~」をするとキャッキャと笑ってくれるという。小さいなりに、「ばぁ~」って言ってるそうだ

「うちのやり方を全国規模で広めれば、少子化は解消できます」と、坂田は自信をもって話す。

男性が育休を積極的に取るために会社は何をすべきかを尋ねた。坂田によると、社長からの育休取得を推奨する強いメッセージを定期的に発信すること。取得率を高めるために、育休取得が当たり前の企業風土を定着させること。そして、上司側から、育休を取得させる、休ませることを前提に面談をし、スムーズな育休に入る準備を整えること・本人の不安を払拭させることなどが大事だという。

「いっぱい働けばいい世の中になる、と思いがちですが、決してそんなことはない。働き方を考え直すことで、世の中はもっとよくなっていくはずです」





【#もっと一緒にいたかった 男性育休100%プロジェクト】




がむしゃらに働き、家庭をかえりみない…。そんな働き方はもう時代遅れだ。7社の名だたる企業のトップが宣言した「男性育休100%」。パートナーや子供と「#もっと一緒にいたかった」という後悔と誠実に向き合いながら、次世代のビジネスリーダーにその熱い思いを届ける。

Promoted by サカタ製作所 text by Rikako Ishizawa photo by Miki Anzai

タグ:

連載

#もっと一緒にいたかった