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2019.09.25 20:00

「日本発ワイン×鮨」が仕掛ける、世界の美食家たちへの挑戦

「はっこく」店主 佐藤博之(左) ワイマラマジャパン・グローバル・ブランディング・ オフィサー 大岩由紀夫(右)

「はっこく」店主 佐藤博之(左) ワイマラマジャパン・グローバル・ブランディング・ オフィサー 大岩由紀夫(右)

造り手はニュージーランド人、コンサルタントはフランス人、そして新作のお披露目はNYの三つ星レストラン――。

日本人オーナーが率いるワインブランドが提案する、新たなペアリングの形とは。


「ワインと鮨のペアリング」と聞いてまず思い浮かべるのは、白ワインかシャンパンではないだろうか。だからこそ、この常識に挑む赤ワインがある。日本発の「シャトー・ワイマラマ」だ。

1988年に創業、98年に現在のオーナーである佐藤 茂の父が取得したシャトー・ワイマラマでは、ニュージーランド人の造り手とフランス人コンサルタント、日本人オーナーという3カ国のキーマンによって、選び抜かれたわずか5種類の赤ワインが製造されている。
 
18年秋、新作の「SSS 2009(エスエスエス 2009)」をニューヨークの三つ星レストラン「Per Se(パーセ)」で披露するという大胆なイベントを終えてから、ワイマラマのグローバル・ブランディング・オフィサーを務める大岩由紀夫は、次の一手を考えていた。

前回のイベントのインパクトに負けず、極上ワインであるワイマラマにふさわしいブランディングの形とは―。思いを巡らせたのち、長年ワイン業界に身を置く自らも経験したことのないシチュエーションでのペアリングに挑戦することを決意。

パートナーとして白羽の矢が立ったのが、現在、予約は2カ月先までいっぱいだという銀座の鮨店、「はっこく」だ。


銀座も香港でも、コースは「突先」から始まる

他では味わうことのできない
「ワイン×鮨」のペアリング


ディナーのおまかせコースは握りだけで30貫。すべて酒粕を長期熟成させたうま味の強い赤酢のシャリで提供される。

「ワイマラマのワインは風味が強く、個性と主張がしっかりある鮨でなければ、太刀打ちができない」と、大岩は赤酢で握る鮨屋にワイマラマのワインを持ち込んでは、鮨との相性を確かめ歩いていた。そこで6軒目で辿り着いたのが、はっこくだった。

大岩は、メニュー表に書かれたネタに「◎〇△」をつけて、ワインとの相性を採点していった。コースを食べ終えた手元に残った採点表には、ほぼすべてに「◎」がついていた。はっこくの店主、佐藤博之もその日のことはよく覚えている。


口の中でとろけるマグロ

「鮨と赤ワインを合わせるのは難しいと思っていました。しかし、ワイマラマは違った。しっかりした味わいだけではなく、うちの赤酢に合う繊細さもあります。特に存在感があったのは、カベルネ・ソーヴィニヨンを100%使用した『SSS 2009』でした」。

「SSS 2009」はその名の通り、2009年産。10年の熟成を経て、強さと柔らかさの両方が同居する。だからこそ、はっこくの特徴でもある存在感の強いネタとシャリにも合ったのだという。

「ここまで合うのかと、大げさではなく言葉を失ったくらい。これは、世界中の人に伝えなければと思った」と、大岩はその日のことを興奮気味に振り返った。 

連載:ニュージーランドワインの固定概念を覆す最高級クラスのワイン、「WAIMARAMA」

意気投合した2人の次の展開は早かった。大岩が2回目にはっこくを訪ねた際、香港でイベントを開催することを提案すると、佐藤は二つ返事で「やりましょう」と答えた。

それは、現地の高級和食店で「SSS 2009」に、はっこくの鮨を合わせるペアリングを提供するというもの。2日間だけの、限定イベントだ。

海外で料理をするとなると、日本で提供する食材と同じものを用意することが難しかったり、調理場の勝手が違ったりする。言語の違いも障壁となり、抵抗感を持つ料理人は多い。だからこそ佐藤のフットワークの軽さに、大岩は驚いた。

佐藤は、以前大将を務めていた「鮨とかみ」が香港に店を出していた縁もあり、香港には友人知人が多くいた。そして、定期的に海外へ渡り、現地で鮨を握った経験もある。ここまでのバックグラウンドを持つ鮨職人は、他になかなかいないだろう。


香港でも北海道、「おがわの生うに」を提供

香港ならではの可能性


なぜイベントの場所は香港でなければならなかったのか? その理由は明確にある。

まず、今年3月から香港へ輸出、販売を開始したワイマラマのワインは、現地でイベントを開催することでさらに認知度向上を進める必要があった。

そして、ボルドーからのワイン輸出金額が1位の都市は、実は香港であるという事実。ボルドースタイルのワイマラマは、まさに香港人が好むワインだ。香港は、グローバルなブランディングにつながる重要なマーケットなのだ。

佐藤も香港についてこう話す。

「香港にも素晴らしい日本人の鮨職人がいます。しかし物価が高いこともあり、平均予算は高い。それなら日本へ訪れた方が、おいしくてお得な鮨を楽しめると考える人も多いんです」。

それだけ食に情熱を注ぐ人が多い都市で認知度が高まれば、ブランドとしての可能性が高まるのも当然だ。


「SSS 2009」だけですべての鮨と合わせる贅沢なペアリング

7月の香港で2日間、ランチとディナーの計4回開催されたイベントの予約席は即完売。食事後に「SSS 2009」をその場で3本購入した超富裕層の香港人もいた。

香港でのイベント成功を経て、次は何を企てているのかと大岩に聞くと、ニヤリと笑ってこう答えた。「はっこくさんとワールドツアーかな」。前回はニューヨーク、今回は香港。海外でのイベントを重ねるにつれ、本物を求める人たちの存在を実感しているという。

「赤ワイン×鮨というより、『SSS 2009×はっこくの鮨』のペアリングの感動は、他にないから。日本から世界に出て、もっと多くの方に味わってもらいたいんです」。


佐藤博之◎「はっこく」店主。1978年生まれ。以前大将を務めていた「鮨とかみ」は開店1年で、『ミシュランガイド東京2014』の一つ星を獲得。「はっこく」は、東京で今最も予約の取れない店の一軒。

大岩由紀夫◎ワイマラマジャパン・グローバル・ブランディング・オフィサー。1975年生まれ。大手ワインインポーターでバイヤーとして活躍後、18年より現職。ボルドー大学醸造学部公認ワインテイスター。

香港で開催された特別イベントの全貌


隈研吾建築都市設計事務所が手がけた「Ta-ke」の内装

7月14日と15日限定の特別イベントは、香港の中心地に位置する高級和食店「Ta-ke」で開催された。各回3,850香港ドル(約54,000円)という高額にもかかわらず、9ごと用意していた予約席は、即完売。

銀座では「突先」の手巻き寿司から始まり、30貫、玉子の32種を提供するが、香港では同じスタイルで鮨を食べきれないとの事前調査を踏まえ、今回は突先から始めることは変えず、銀座では出していない刺身5種類の盛合せを2皿、そして握り20貫、最後に玉子の32種類という構成となった。

これまで多くの美食を味わってきた現地のゲストにとっても、鮨に赤ワインを合わせるのは初めての体験だったという。

大トロのような赤身魚はもちろん、誰も想像をしていなかった、のどぐろなどの白身魚と「SSS 2009」の相性の良さとその新しさに、多くのゲストが感嘆の声をあげた。


連載「日本人オーナーが目指す世界最高峰のニュージーランドワイン」
#1:公開中|なぜNYだったのか?日本発「幻のワイン」イベントの全貌
#2:公開中|ワインを知り尽くした先に辿り着いた一つのブランド
#3:公開中|初リリースを迎えた、ニュージーランドワインの最高峰 Chateau WAIMARAMA SSS 2009
#4:公開中|佐藤可士和が挑む「ワイマラマ」のブランディング
#5:公開中|「畑がワインの味を決める」ニュージーランドでワインジャーナリストは何を感じたか
#6:本記事|「日本発ワイン×鮨」が仕掛ける、世界の美食家たちへの挑戦
#7:公開中|佐藤可士和が手がける アートとしてのワインエチケット
#8:公開中|小山薫堂が提案 京都の老舗料亭でしか味わえないスペシャルなペアリング
#9:公開中|世界の偉大なワインには、共通項がある 日本人オーナーが仕掛けるふたつのヴィンテージワイン


Promoted by ワイマラマ / text by Maho Ise / photograph by Shunichi Oda