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世界18カ国に拠点を持つオランダのNNグループ。その日本法人であるエヌエヌ生命保険は中小企業の事業保険に特化し、特に事業継続のためのサポートに力を入れる。その理由と展望を承継の成功者と人材育成のプロが語り、フォーブス ジャパン副編集長の谷本有香が探る。


家業にイノベーションを起こせ

谷本有香(以下、谷本):家業イノベーションラボという新たな活動を、イノベーターとして第一線でご活躍されているみなさんとエヌエヌ生命保険とで立ち上げたそうですが、その理由はどこにあるのでしょうか?

宮治勇輔(以下、宮治):スケールの大きさですね。ネットワークを広げ、より多くの人とつながるためには、自分たちだけの力では限界があるなと気がついたんです。次世代を担う高校生・大学生や異業種へのアプローチは、我々だけではできなかったことです。経営のヒントを異業種から学べることは意外と多いんです。何より刺激がもらえますしね。

髙井麻記子(以下、髙井):これまでは、人に直接会いに行くよりも先に、専門知識とか経営ノウハウを身につけなくてはと思っていたんです。でも、家業イノベーションラボに参加してみて、人を揺さぶる力を身につける必要性に気がつきました。

宮治:情熱を持って活動を続けられるかどうかは、志を持てるか否かにかかっています。たとえこせがれであっても、家業を継がなくてはいけない決まりなんてどこにもありません。さまざまな選択肢から、自らが継ぐという選択をするんです。その時、ただ先代の事業を受け継ぐだけではなく、そこに自分の想いや考え方を盛り込んで新しいビジネスモデルを築いていく。それこそが家業イノベーションラボのベースとなる考え方です。

宮城治男(以下、宮城):事業承継は重要なテーマであり、また大きな可能性を秘めています。後継者は、自らが決断をして家業にコミットしていくなかではじめて起業家精神が生まれ、事業継承が面白くなるのではないでしょうか?

信岡良彦(以下、信岡):後継者問題に悩まれている経営者は圧倒的に多いです。これまで、会社を残すためのコンサルタントは色々ありましたが、後継者に気づきや刺激を与えられるネットワークや後継者育成への取り組みは聞いたことがなかったので、家業イノベーションの可能性は無限大だと感じました。

宮治:実は、相続と事業承継は真逆の考え方なんですよね。先代が元気なうちに後継者が働きかけていくことが事業承継です。相続と事業承継を一緒に考えているうちは、事業承継は絶対に前には進みません。

信岡:「事業承継は最も友好的な乗っ取りだ」と宮治さんがよく話されていて、それを良い意味で活動に反映できればと思います。

事業承継の三種の神器とは?

谷本:非常に興味深いですね。イノベーションには、どんなひらめきやインスピレーションが必要なのでしょうか?

髙井:ひらめいたことは、とりあえずやってみるようにしています。「たこシャン」もヒラメキで生まれたワインです。デラウェアの生産が有名な大阪では、傷物のぶどうが畑の横に山積みになっていました。それをなんとかお金に換られたらという想いで父がつくり上げたのが、「たこシャン」と名付けた本格的なスパークリングワインです。ところが、その味が私はあまり好きではなくて(笑)。少しずつ味を変えてみたんです。角の立たない乗っ取りですよね(笑)。

宮治:僕もイノベーションを起こすという意識はなかったですね。どうしたらお客様に直接うちの豚を食べてもらえるのかと考えたのが原点でした。美味しい豚を育てていることに価値を見出すには、流通の経路を少し変える必要がありました。そこで既存の仕組みを活用してリスクなくブランド化を図り、直販に近い形で販売できるようにしたんです。

宮城:まさにそれがイノベーションにつながるんです。自分が面白いと思ってコミットメントすることで、新たなアイデアが生まれる。親父がやっているからしょうがないという気持ちでやっていたら、何の違いも生まれないんですよね。

髙井:新しいチャレンジをはじめるきっかけは、面白いかどうかです。会社が100周年のときに、何をしたら面白いかなと考えたのが「カタシモワイン祭り」でした。スタッフみんなをこっそり集めて会議を開き、準備を重ねたんですね。結果4000人のお客さんが来てくれて、やめられなくなり今年で5年目。スタッフみんなが当事者であり、誰よりも自分たちが楽しんでやっています(笑)。


谷本
:事業を承継する際は、先代やこれまでのステークホルダーを上手くエンゲージしていく必要があるかと思いますが、そこはどのようにケアされているのでしょうか?

宮治:僕は「営業」「お金まわり」「採用」を事業承継の三種の神器と呼んでいます。営業をやることで経営感覚が身につきますし、お金まわりを管理することで事業の流れを知ることもできます。そして、何より大事なのが採用です。大きな中小企業の後継者が悩まされるのは、大抵が古参社員の扱いです。だからこそ、自分で自分のスタッフを採るということが大事になると思っています。

家業イノベーション2.0始まる

谷本:家業承継やイノベーションを起こすうえで必要なこととは何でしょうか?

信岡:最初のきっかけづくりですね。コミュニケーションできる環境を構築することで、こんな人がいてこんなやり方があるのだと気づくだけでも価値があると感じています。

宮治:特に高校生や大学生のこせがれは、周りの友人とは家業トークはできないんですよね。だからふだん話せないことが話せて、実践している人から話を聞いたり、分かり合える場があれば、ありがたいと思います。

谷本:先代から引き継いだものに付加価値を加えた経験も鑑みて、家業イノベーションにおける2.0のフェーズはどんなところにあるとお考えでしょうか?

宮治:家業イノベーターどうしのコラボレーションができたら面白いですね。それぞれのファンコミュニティをシェアできますし、新しい価値を社会に提案できると思います。

髙井:私は自分たちのいる、同じ地区の小さな範囲で仲間を増やしていきたいと思っています。それぞれ頑張っている若い子を揺さぶったら、何か面白いことができる気がするんです。私はいつも若い子を見つけては、大きい声で囁いています(笑)。

宮城:地方には面展開の可能性はあると思います。地域の人たちと一緒に育てて、ご当地イノベーションラボのようなものができていけば理想的ですね。


髙井麻記子◎カタシモワイナリーの五代目。2013年、経済産業省「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選出。17年、日本ワインコンクールにて銅賞受賞。地域活性化につながる商品を生み出している。

宮治勇輔◎1978年、神奈川県生まれ。みやじ豚 代表取締役社長/NPO法人「農家のこせがれネットワーク」 代表理事。一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にする、新しい農業標準づくりに挑戦中。

宮城治男◎1972年、徳島県生まれ。ETIC.代表理事。2004年から、地域における人材育成支援のチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトを開始。11年、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。

信岡良彦◎1977年、東京都生まれ。2001年アイエヌジー生命保険(現・エヌエヌ生命保険)に入社。営業戦略室長、経営企画部長を経て、現在は執行役員 チーフマーケティングオフィサー 兼 経営企画部長を務める。

谷本有香◎『Forbes JAPAN』副編集長。Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、米国でMBAを取得。日経CNBCキャスターを務めた後、フリーのジャーナリストとして活躍。

Promoted by エヌエヌ生命保険 edit by Shigekazu Ohno (lefthands) text by Kaori Kawake (lefthands) photographs by Isamu Ito

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