「金」のオンライン取引(EC)に、いち早く着目したブリオンジャパン。平井政光CEOが最前線で思いついた、誰も成し得ていない金の新たな「カタチ」とは。ローンチを眼前に控えたプロジェクトの全貌を、短期集中連載で明らかにする。
成熟した投資家は、なぜ「金」を選ぶのか2018年2月5日、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価が歴史的暴落を記録した。リーマン・ショックを超える下落幅となった株安は、世界の株式や債券、為替市場のみならず、新興の暗号通貨市場にも波及。金融市場には暗鬱な不安心理が渦巻いた。
──山高ければ谷深し。
だが、そうした有事のときに、輝きを増す資産がある。「金(ゴールド)」だ。
金取引のテック企業、ブリオンジャパンのCEO、平井政光は、金の最たる魅力を、「普遍的な安全資産として何千年も前から取り引きされてきた信頼性」と指摘する。
「いつの時代も政治や経済の先行きに不安感が広がると、金は有用な逃避先として注目されてきました。しかし一方で、社会全体をひき付けるほど大きなトレンドになったこともない。実は金は、株や不動産と違ってブームになりづらい特性があるのです」
金は価格変動が小さく、大きなリターンは期待できない。だから大衆受けせず、人気を集めることがなかった。だが、平井によると、「ある程度の経験や知識があり、生活に余裕のある個人、すなわち“成熟した投資家”は、そんな金の安定性に重きをおく」という。
資産の形成で大切なことは、現在と未来の経済情勢をどう捉えていくかである。今後、景気は改善していくと考えるなら、株式をメインにする。反対に悪化するとするなら、現預金と併せ、金でもつ。インフレで通貨の価値が下落すると、金は上昇しやすい。つまり、金は株と補完関係にあり、通貨の代替として買われる。
成熟した投資家は、資産を増やすことよりも、どうやって資産を守るのかを優先する。インフレや株安等のリスクに備えて、自分の資産を減らさないための防衛策に知恵を絞るのである。
デジタル化の本質金は、それが実物資産であることも魅力のひとつである。現物という裏付けは、いざというときに力を発揮する。売らずにコツコツと蓄えていく長期保有が肝となる。また、金の売買は為替の影響を大きく受けるが、タイミングを見計らってコツコツと買っていけば、たとえ円安に大きく振れて割高感が出ても、平均単価を抑えることができる。
実際、欧米や中近東、インド、中国では、何かあったときに備えて、常々、金を買い足していくことは当たり前に行われている。しかし、日本ではそうした姿勢はなかなか見られない。いったいなぜか。
個人が資産の運用・防衛を実践するなかで重要となるのは金融リテラシー、すなわち、お金を融通するための知識と決断力である。そしてそれを向上させる最も適切な措置は、実際に投資をしてみることだ。
だが、日本人の一般的な資産形成のプロセスをみると、若いときは住宅費や教育費がかさみ、投資に回す余裕は往々にして少ない。シニア世代になってローンが終わり、退職金や相続を受け取ると、ここで一気に資産が増え、ようやく運用を考えるようになる。
しかし、それでは時すでに遅し。資産運用や投資といっても経験を積んでいないから、どうしていいのかわからない。むしろ財産を減らすことだけは避けたいと考える。だから、「貯蓄から投資」に進まないのだ。
日本人の金融リテラシー向上のために求められるのは、若いときからコツコツと実践を積むことができる投資環境をつくることだ。そんな入り口に安全資産の金は役に立つ。平井はそれを24時間365日、いつでもどこでも低コストで取引できるサービスをつくり、従来型の対面販売では成し得なかった顧客の“利便性”を向上させることを目指した。
それこそが、「デジタル化の本質」なのだと彼は言う。