世界で最も影響力のあるビジネス思想家のランキングが、英コンサルティング企業シンカーズ・フィフティー(Thinkers50)により発表された。1位に輝いたのは、戦略アドバイザーでカナダ・トロント大学ロットマン経営大学院の元学長、ロジャー・マーティンだった。
経営コンサルタントで作家のスチュアート・クレイナーとデス・ディアラブが設立したシンカーズ・フィフティーは、2001年から隔年で同ランキングを発表してきた。同社は今年首位に立ったマーティンを「デザイン思考の専門家」と呼んでいる。
今秋出版された10冊目の著書『Creating Great Choices: A Leader’s Guide to Integrative Thinking(優れた選択の創造:リーダーのための統合思考ガイド)』でマーティンは、私たちが難しい決断や受け入れがたい選択肢に直面するとき、明白な選択肢や代償をただ受け入れる必要はなく、「目の前にあるモデルを使い、新しい優れた答えを作り出せる」と論じている。またマーティンは、格差拡大を受けて起きた資本主義を見直す運動の急先鋒に立ち、「社会的に有能な経営者」になることの意味を探ってきたと、シンカーズ・フィフティーは指摘している。
ランキング2位は、ブロックチェーンの専門家で、これまでに15冊のビジネス書を執筆しているドン・タプスコットだ。彼が共同創業し会長を務めるトロントのシンクタンク、ブロックチェーン研究所は、企業や各国政府に対し、ブロックチェーン技術の活用方法に関するコンサルティングを提供している。最新著書は、息子のアレックスとの共著『ブロックチェーン・レボリューション』だ。
3位にランクインしたのは、ハーバード経営大学院のクレイトン・クリステンセン教授だ。1997年出版の著書『イノベーションのジレンマ』は、破壊的イノベーションに焦点を当て、大きな顧客基盤を持たないスタートアップが業界の既存企業を圧倒する事例が相次ぐ状況について考察している。最新著書『ジョブ理論』では、共著者らと共に、イノベーション成功のためには顧客だけでなく「片付けるべき仕事(ジョブ)」の理解が必要だと説明している。つまり企業は、顧客が自社の製品やサービスを「雇う」理由に注目すべきということだ。
4位には、いずれも欧州経営大学院(INSEAD)の戦略学教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュが入った。2004年出版の『ブルー・オーシャン戦略』の著者として知られる2人は、ビジネス事例150件の調査に基づき、長期的な成功は競合企業との競争ではなく、成長の機が熟した未開拓の新市場「ブルー・オーシャン」を創造することでもたらされると語っている。9月には新著『Blue Ocean Shift: Beyond Competing(ブルー・オーシャンの移行:競争を超えて)』が出版された。