これらの人たちの間で意見の一致が見られるようになるまでには、まだ時間がかかるだろう。合意を得られるだけの十分に質の高い研究が、十分に行われなくてはならない。だが、冒頭に挙げた最初の質問については、同意が得られ始めている。電子たばこは、禁煙に効果的なツールになり得るようだ。
使うほど効果も大きく
たばこに関する専門誌「ニコチン・アンド・タバコ・リサーチ」に8月31日に発表された新たな調査結果では、禁煙効果に違いをもたらすのは何なのか、禁煙目的での電子たばこの使用が最も高い効果を上げるのはどのような人たちなのか、といった点が明らかにされた。
健康や行動に関するその他の研究と同じように、電子たばこの禁煙効果は使用する人やその人の置かれている状況によって大きく異なる。だが、いずれもたばこ業界とは無関係の国立薬物乱用研究所(NIDA)と米国立がん研究所(NCI)が支援し、過去のその他の調査に比べてかなり詳細な分析が行われた今回の調査から分かったのは、「電子たばこを使用する頻度が高くなるほど、禁煙に成功する可能性は高くなる」ということだ。
調査を行ったジョージタウン大学ロンバルディ総合がんセンターのデービッド・レビー博士らによれば、「電子たばこを過去1か月間に20日以上使用した人たちの間では、禁煙を試みた人の割合、3か月以上の禁煙に成功した人の割合が高くなっていた」。
調査に使用したのは、米国政調査局が実施した2014~15年人口動態調査に含まれる喫煙に関する補足調査で収集されたデータだ。喫煙者2万3633人のうち1万973人には、少なくとも一度は禁煙を試みた経験があったものの、8419人が失敗していた。また、このうち少なくとも3~12か月にわたって禁煙に成功していた人は、1596人だった。
レビー博士らは、こうした人たちの電子たばこの使用の有無や使用頻度などについて分析を実施。その際には、各州のたばこの平均価格や関連法、喫煙本数、性別、年齢、人種、婚姻の有無、学歴、雇用状況、収入、居住地など、喫煙に関連があると見られるさまざまな要因を考慮し、禁煙の成功と失敗との関連性を明らかにした。その結果、電子たばこを使用する日が1日増えるごとに、禁煙に成功する確率は5%近く上昇することが分かった。
一方、こうした電子たばこの禁煙効果については、2010年にも同様のデータを基にした調査結果が発表されており、あまり効果はないとする結果が示されていた。だが、当時の電子たばこは現在販売されている製品に比べて吸引できるニコチン量が少ないなど、品質の面で劣っていたことの影響があると見られている。
電子たばこによって禁煙を実現できるのはどのような人たちなのか、どのような使用方法が最も効果的なのか、今後さらに明らかにしていく必要がある。だが、これまでその他の方法では禁煙ができなかった人たちにとっても、電子たばこは効果的な選択肢だといえそうだ。