独立系運用会社として日本で初めて株式上場を果たしたスパークス・グループが、創業以来35年以上にわたって培ってきた日本経済・株式市場の見方を同社チーフエコノミスト清水孝章が発信する連載、第2回。今回は日本が陥ったデフレの根本的原因について。
今、日本はデフレからインフレの大転換点にいる。では、そもそも日本はなぜデフレに陥ったのか。結論から言えば、日本のデフレはバブル崩壊後のバランスシート調整にみられる国内要因だけではない。冷戦の終結と中国の市場開放によって世界の供給能力が一気に拡大し、その結果としてもたらされた世界的な「価格低下圧力」を最も強く受け止めたのが日本だった。日本は競争力を失ったからデフレになったわけではなく、世界経済の構造そのものが変わり、その変化を最も強く受ける立場に置かれただけなのである。
だからこそ、日本経済の現在を理解するためには、「なぜインフレになったのか」ではなく「なぜデフレだったのか」を起点に考える必要がある
1989年前後、世界経済は決定的な転換点を迎えた。ベルリンの壁崩壊と中国の市場開放である。この2つの出来事によって、東西に分断されていた経済圏が統合され、世界は単一の巨大市場へと再編された。その結果、供給能力は一気に拡大した。特に中国は低コストの生産拠点として急速に台頭し、日本はそれまで担っていた「世界の工場」としての位置を実質的に譲ることになった。
この変化が意味するものは明確である。日本は高コストの生産国として、安価な製品を海外から輸入する側へと転じた。すなわち「デフレの輸入」である。実際、耐久消費財の価格は1989年以降、驚くべきことに70%以上下落した。



