転職は人生の転機であり、誰もが希望を胸に新しい職場へ踏み出すものだ。だが、近年その期待を裏切る「エージェント被害」が静かに広がっている。
株式会社CAREER FOCUSが実施した調査によると、転職エージェントを利用した人の6割以上が「聞いていた話と違った」経験があることがわかった。
■ 調査概要
調査名称:「転職エージェントの利用実態と満足度に関するアンケート調査」
対象:全国の23~58歳の男女500名(転職エージェント利用経験者)
方法:インターネット調査
期間:2025年10月1日~10月30日
実施機関:株式会社CAREER FOCUS
「希望していた仕事内容が異なる」が6割も
転職エージェント経由で転職した人の不満で、もっとも多かったのは「入社後のギャップ」だった。転職者の約6割が「エージェントから聞いていた内容と異なっていた」と回答している。具体的には「業務内容」「残業時間・休日出勤の頻度」「給与・評価制度」の順で多かった。

以下は実際の声だ。
・「残業は月10時間程度と聞いていたが、実際は毎日2時間以上あった」(30代・IT)
・「夜勤はないと聞いていたのに、初配属で夜勤勤務になった」(20代・IT)
・「営業ノルマがあることを入社後に初めて知った」(30代・IT)

調査元は「何らかの虚偽や誇張が含まれた情報をもとに意思決定をさせられていた可能性を示唆している」と分析。業務内容・就業時間・給与は、求職者が転職先を決めるうえでもっとも重要視する項目だが、エージェントが意図的あるいは確認を怠ったことで不正確な情報を伝達していた実態が見えてくる。
エージェントの圧力を感じた人も多数
また、転職エージェント利用者の約6割が、エージェントサイドの都合とみられる“圧力”対応を感じていた。

転職エージェントの都合(ノルマや手数料目的など)のために、求職者が希望していない求人への応募をすすめたり、内定の承諾を急かされたりなどの圧力を感じた人も多かった。
・「内定後、『この求人は人気で今日中に返答を』と急かされた」(40代・製造業)
・「希望していない求人への応募を強く勧められた」(30代・IT)
なかには「とにかく30社受けて」「不採用前提ですべて受けた方がいいですよ」など、エージェントのノルマ達成のために「数打てば当たる」式の応募を強要された事例も多数報告された。このような対応は求職者にとって冷静な判断を妨げる要因になりかねない。
心を折る「圧迫キャリア相談」も
本来ならば転職支援が転職エージェントの役割なのだが、キャリア相談の場で否定的な言葉を投げかけられたという声も少なくない。
・「40代でその年収は無理だと頭ごなしに否定された」(40代・製造業)
・「『その年齢ではどこも難しい』と言われ、相談する気が失せた」(40代・サービス業)
・「条件を変えろ、ハローワークへ行けといったメールが届いた」(40代・IT)
求職者の不安に寄り添うどころか、キャリアの可能性を狭める対応が問題視されている。一部では、担当者の質が運任せである状況を「エージェントガチャ」と呼ぶ声も聞かれた。担当者によって結果が左右されるという認識が広がりつつある。



