もし、安心とは「変わらないこと」ではなく「変化に慣れること」だとしたら。そんな価値観の転換が、静かに広がりはじめている。地震や感染症、物価の上昇など、暮らしを取り巻く環境がめまぐるしく変わるいま、人々はリスクを避けるよりも上手に付き合う方向へと意識を移行しつつあるようだ。『EQO Inc.』の生活者リポートでは、日常の中に少しずつ不安を取り込み、心身を慣らすように過ごす人たちの姿が浮かび上がってきた。
【調査概要】
調査対象者:全国の15〜69歳(中学生以下を除く)
回答者数:1,236人
割付方法:性年代別に均等回収
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2025年10月15日(水)〜16日(木)
調査企画:QO株式会社
調査委託先:株式会社マクロミル
備えるより慣れる「無毒化スキル」
日本を含む昨今の世界では、地震や水害、感染症、物価高騰など、暮らしの安定を脅かす出来事が続いているため、日常的に不安を感じている人も多い。それでも不安を遠ざけるだけでは、かえって心をすり減らしてしまう。EQOのリポートは、こうした時代を生き抜くためには変化を受け入れる力に目を向けることが大切だと示している。不確実な状況をゼロにするのではなく、少しずつ慣れていく。この「慣れる力」を、EQOのリサーチャーはリスクを飼い馴らす「無毒化スキル」と呼んでいる。
EQOの見立てでは「備えの在り方そのものが防御から調和へと変化しつつある」とし、不安や変化を毒として遠ざけるのではなく、少しずつ無害化していくことが、これからの安心を支える新しい考え方だと語る。
世代で異なるリスクとの付き合い方
調査では、特にX世代女性(45〜59歳)が変化に慣れることを前向きに捉えている傾向が強かった。変化に慣れることが「時代に合っている」と答えた割合は約6割にのぼり、他の世代よりも高いという結果になった。家庭や職場の変化を多く経験してきた世代だからこそ、不安を完全に消すよりも上手に付き合う現実的な知恵が根づいているようだ。

リポートには、実際の声も寄せられている。

SNSで揺れる感情も「無毒化」でコントロール
災害以外でも不安を煽る要素はある。それがSNSだ。SNSは共感や「好き」を共有できる場であると同時に、情報があふれることで不安を生む場になることも事実だ。また、多くの人が偏った情報、フェイク情報をSNSで目にしている。そのため「真実がわからない」と感じたり、何もしていなくても世界の不安が自分の感情に入り込んでくる。こうした情報の揺れに慣れ、心のバランスを保つことも、いまの時代の無毒化スキルの一部といえるだろう。



