2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで『Forbes JAPAN』では18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。
今年も4つのカテゴリから30人を選出。ENTERTAINMENT&SPORTS部門のひとり、映画監督の山中瑶子は19歳で鮮烈なデビューを果たし、長編2作目でカンヌへ──。海外でも評価された山中が生み出すその「空気感」とは。
その映画の「空気」に世界が共振した。現代の日本を生きる20代のカナを描いた『ナミビアの砂漠』で第77回カンヌ国際映画祭・国際映画批評家連盟賞を受賞した山中瑶子。何にも情熱をもてず、自分をもてあまし、恋人に甘え、ときに激しい怒りをぶつける主人公カナ。「日本映画でこんな女性像を見たことがない!」と評され、「私もこの感覚を知っている」と共感を呼んだ。
「同世代に刺さるものを、という意識ではつくっていないんです。その時々で知っている人の顔を思い浮かべて『この人に気に入ってもらえたら』と思ってつくっています」
19歳で制作した『あみこ』は、ベルリン国際映画祭に当時史上最年少で招待されるなど、鮮烈なデビュー作となった。2作目で早くもカンヌに到達するも「選ばれるのはタイミングや相性もあるので」と冷静に向き合う。
作品のもつ現代性も高く評価されているが「無意識や直感を軸に制作しているので、自分が生きている今の空気感が自然とにじみ出るんだと思います」と山中は言う。
長野県出身。中国にルーツをもつ母と、仕事人間の父のもとで育った。小学校は学級崩壊状態で、中学校も荒れていて「子ども時代にはいい思い出がない」と苦笑いする。高校でようやく平穏を手に入れ、映画館に入り浸った。映画監督を志して大学に進学するも、思い描いていた授業とは違い半年でやめると決めた。
「母が納得する実績をつくらねばと『あみこ』を撮ったんです」
順調なスタートに見えるが「ずっと映画をつくるのは苦しいと思ってました」と振り返る。「コミュニケーションをとるのが嫌で、1人で抱え込んでしまって。3年ほど何もしない時期もありました。でも『ナミビア』では不安を共有することで、ようやく人に頼ったり信じたりできるようになりました」。
そんな心境の変化を経て、山中の関心は今、新たなテーマへと向かっている。「これまでは自分と年齢が近いひとりの女性に焦点を合わせてきましたが、戦争ものや男性社会のほころびも描いていきたい」。
ほとばしる才気が、駆けていく。
やまなか・ようこ◎1997年、長野県生まれ。日本大学芸術学部映画学科に入学後、独学で『あみこ』を制作。同作は自主制作映画の登竜門PFFアワード2017で観客賞を受賞。24年9月に公開した『ナミビアの砂漠』で、第77回カンヌ国際映画祭の国際映画批評家連盟賞を受賞。
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