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2025.03.27 16:00

和歌山県串本町を「宇宙のまち」へ変えたスペースワンとMUFGの進むチカラ

多様なプレイヤーが共創し、新たな産業を生み出すことで、人類は時代と共に経済圏を創生あるいは革新してきた。今、その舞台は宇宙へと広がっている。本連載では全3回にわたって、これまで数々のイノベーションを支え、新たな産業の誕生において重要な役割を果たしてきたMUFGが挑む、「宇宙産業が生み出す新たなエコシステム」の形成に迫る。宇宙を活用した事業者ではなく、金融という俯瞰した視点だからこそ見えてくる、これからの時代に求められる産業創造の可能性とは何か。

第2回では、宇宙輸送のシステムを開発し、サービスの事業化を目指すスペースワンが原動力となって波及した和歌山県串本町の「宇宙まちづくり推進」への意識醸成のストーリーをレポートする。

 


「あの爆発は再挑戦のゴング」

和歌山県東牟婁郡串本町にあるスペースワンの事業所。その一角に、日本全国から届いた手紙や応援メッセージが貼り出されていた。冒頭の言葉は、ロケットの打ち上げを見学した串本古座高校 未来創造学科 宇宙探究コースの生徒たちから寄せられた色紙の中央に力強く描かれていたものだ。

事業所のすぐ近くには、スペースワンが保有する「スペースポート紀伊(=日本初の民間によるロケット射場)」がある。

2024年12月18日、スペースワンが開発したカイロス2号機の打ち上げに際して、地元の和歌山県からはもちろん、日本の各地から多くの応援者が串本町に集まった。YouTubeや各種のSNSを通して、現地の熱狂を実況する者もいた。地上波の放送で打ち上げを注視した者を含めれば、数多くの人がスペースワンの挑戦を見届けたことになる。

これほどまでに、子どもから大人まで大勢の人々が期待に胸を膨らませ、一丸となって挑戦を応援する産業が宇宙産業の他にあるだろうか。

固定観念を変えることで「世界最短」「最高頻度」を目指す

「私たちは失敗という言葉を使いません」

スペースワンには、揺るぎない信念があるという。企画・営業・渉外本部の勝池優里が教えてくれた。

「私たちはこれまでに2度のロケット打ち上げを経験しました。どちらも人工衛星の軌道投入には至りませんでした。しかし、私たちは、衛星の軌道投入ミッション完了までのステップを明確に定めています。ゼロからスタートした1度目はセカンドステップまで、2度目はサードステップまで進むことができました。つまり、私たちのこれまでの挑戦は、『失敗ではなくて前進』なのです」

勝池優里 スペースワン 企画・営業・渉外本部 課長
勝池優里 スペースワン 企画・営業・渉外本部 課長

現在の日本で革新者が生まれにくい理由は、「失敗を許容できない心的態度(エートス)」にあるのではないか——。

「失敗ではなくて前進である」というスペースワンの信念。「爆発は再挑戦へのゴング」という生徒たちからの応援。このような「揺るぎない信念」と「熱のある応援」により形成されるエコシステムこそが、困難を乗り越え、新しい価値や未来を創り出す原動力となるのではないかーー。

「失敗という概念にとらわれて挑戦することをやめてしまったら、そこで前進は終わりです。私たちは、小型ロケットを打ち上げるシステム開発者・サービス事業者として、プロセス(衛星事業者などとの契約から打ち上げまで)では『世界最短(1年以内)』、打ち上げ回数では『世界最高頻度(年20機以上、一つの射場から打つ数としては世界一)』を目指しています」

根と幹への投資が、やがて地上の人々の笑顔につながる

「リスクを見極め、そのリスクをとることなくして、リターンを得ることはできないのです」

今、スペースワンを中心にして生まれた「信念と応援のエコシステム」の輪のなかには、MUFGがいる。応援する側にもまた信念と挑戦があることをサステナブルビジネス部宇宙イノベーション室の永山善己が教えてくれた。

「今、日本の宇宙産業界において、『射場建設』と『ロケット開発』の両方を成し得ているのはスペースワンのみです。スペースワンは18年7月に設立し、22年3月にスペースポート紀伊を完成させて、24年3月13日にカイロス初号機、12月18日に2号機を打ち上げています。世界的に観ても驚くべきスピードで、ロケット打ち上げというマイルストーンを超えてきているのです。それは、スペースワンが技術と情熱を有しているからだけでなく、射場とロケットの両方を有しているという物理的なアドバンテージが効いているからです。今、衛星事業の主体が国から民間へと切り替わっていく時代が訪れています。そうしたなか、需要が確実に増すのは『小型ロケットを利用した小型衛星の打ち上げ』です。日本のどこよりも早く『射場×ロケットの知見と経験』を積み上げていくことによって、スペースワンは『小型ロケット打ち上げの頻度と信頼性を強力な武器にできる』と考えています」

永山善己 三菱UFJ銀行 サステナブルビジネス部 宇宙イノベーション室 調査役
永山善己 三菱UFJ銀行 サステナブルビジネス部 宇宙イノベーション室 調査役

自ら射場を建設し、小型ロケットを開発しているスペースワンは今後、日本の宇宙産業の根っこになり、幹にもなる存在だ。射場は根に、ロケットは幹や枝に、ロケットと共に打ち上げられる各種の衛星たちは果実を生み出す花に。例えば、衛星からの各種のデータを利活用するサービスは、地上の社会や経済にかつてない恩恵をもたらし、地上にいる人々の笑顔を創出していくだろう。

22年12月、スペースワンへの出資はMUFGの「宇宙領域における事業共創投資の第一弾」になった。すなわち、日本の宇宙産業の根に水をやり、幹を太く安定したものにするという根本的な取り組みから着手し、同行は宇宙領域に本腰を入れ始めたのである。

「スペースワンのロケットには宇宙産業だけでなく、日本の自動車や家電、電子部品といったさまざまな産業の歴史が集約されています。現在、スペースワンが直接取引しているサプライヤー(ティア1)は、ほとんどが国内企業です。私たちは、日本のものづくりに絶対的な自信をもっています。今こそ、MUFGはリスクを見極め、そのリスクをとってスペースワンに投資したうえで、共に事業を前進させ、日本の宇宙産業を創生し、日本のものづくりが活性化するモメンタムを生み出していかなくてはなりません」

MUFGの担当者としてスペースワンに出向した永山の経歴および情熱も同行の本腰度を表している。

「私は、宇宙工学の修士号を取得してからMUFGに入りました。経営に近い場所にいて、資金を動かし、幅広いネットワークを活用し、さまざまな人々を支援することができる。そうした金融業ならではのポジションから日本の宇宙産業をグローバルで勝てるものにしていきたいと考えたのです。スペースワンに出向したのは、23年2月。経営企画、財務、国内外の顧客(衛星事業者)への営業、広報などに従事してきました。銀行のネットワークを使って有望なサプライヤーを探すことにも奔走しています」

宇宙のインパクトをどれだけ県内に波及させられるか

「今日は、和歌山県の未来にとって記念すべき日です。大人がガムシャラになって頑張っている姿こそ、子どもたちへの何よりの教育になっています」

これは、スペースワンによるカイロス2号機の打ち上げ後に和歌山県の岸本周平知事から発せられた言葉だ。今、「信念と応援のエコシステム」の輪には、地元の和歌山県も当然ながら加わっている。和歌山県庁の成長産業推進課に勤める𠮷田圭吾が、県内で生まれているポジティブインパクトの一端を教えてくれた。

「地元に射場があり、実際に初号機、2号機が打ち上がったことによって、県内の企業が宇宙を身近にとらえられるようになりました。自主的に勉強会を始めるなど、『宇宙のロマンを求めたチャレンジ精神』が非宇宙産業の経営者から湧き起こっているのを感じます。MUFGが主催するスペースワンとの商談会には、和歌山県の企業も参加しています。それにより、非宇宙産業から宇宙産業に参入するにあたってのニーズや課題が明確になり、日増しに『宇宙が自分ごとになってきている』のです。これからは、単に宇宙への想いを抱えるだけでは終わらず、実際にビジネスとしての一歩を踏み出すことのできる企業を行政がサポートしていかなくてはなりません。宇宙産業に関係していくプレーヤーを増やしていくためにコミュニケーションの場を創り続けていきたいと考えています」

𠮷田圭吾 和歌山県商工労働部 企業政策局 成長産業推進課 GX推進班 主査
𠮷田圭吾 和歌山県商工労働部 企業政策局 成長産業推進課 GX推進班 主査

「スペースポート紀伊」の建設が始まった19年11月以降、スペースワンが和歌山県民に及ぼしてきたポジティブなマインドチェンジの質と量は、どちらも絶大なレベルに達しているに違いない。

「和歌山県としては、25年度に『宇宙まちづくり推進』という名称で新しい予算を組んでいます。 産業、観光、教育といった切り口はもちろんのこと、『地域のなかに宇宙をどれだけ波及させられるか』という課題に県として挑戦していきたいと考えています」

「巡礼道の終着地」と「宇宙への出発地」を誇りに

「まだ初号機です。これで終わりではありません。ここからがスタートです」

24年3月当時、高校3年生だった清野健太郎は、地元の串本古座高校の公式YouTubeチャンネルを使って、カイロス初号機打ち上げの模様を足が震えながらも無我夢中で配信した。

「あのときに覚えた衝撃と希望は、今も私の心のなかで生き続けています。私は、串本町出身で宇宙が大好きな学生です。現在は、和歌山大学の観光学部に通っています。カイロスの打ち上げに際して特別見学席でのトークショーに司会的な立場でかかわったり、YouTubeで打ち上げの実況をしたり、『スペースポート紀伊』の魅力を語るツアーガイドを務めたりと、自分にできる範囲でスペースワンを応援し続けています。和歌山には、ユネスコ世界遺産に登録されている巡礼道・熊野古道の終着地があります。そして、スペースポート紀伊という宇宙への出発地があります。その誇りを胸に抱いて、これから先、和歌山の魅力を発信し、魅力的な地域資源の付加価値を向上させていきたいと考えています」

カイロス初号機打ち上げの翌月、公立校としては全国ではじめて串本古座高校に「宇宙探究コース」が新設された。このコースでは宇宙に関する専門科目が開設され、大学や研究機関、宇宙産業関連企業と連携しながら探究的な学びが行われている。元JAXA職員らが特別授業を担当し、生徒たちに実践的な知識を提供しており、県外からも親元を離れて串本で宇宙を学ぶことを選んだ生徒がいるほど注目されているという。

町全体としても、ロケット打ち上げを告知する看板が町中に設置されたり、地元の喫茶店で「串シーフードロケットフライカレー」といったロケットにちなんだ新メニューが登場するなど、地域の盛り上がりや応援が目に見える形で現れている。

「私は串本古座高校在学時に『缶サット甲子園(自作の缶サット=空き缶サイズの模擬人工衛星の技術力・創造力を競う大会)』の和歌山地方大会に出場してきました。だから、母校に『宇宙探究コース』ができたことも私にとって大きな希望です。このコースの新設は、スペースワンが串本町に射場を造り、ロケット打ち上げに向かって動いてくれていたからこそ叶ったことです。いずれは、後輩たちが『缶サット甲子園』で全国を制覇し、高校在学中、未来の就職先、あるいは起業先で本物の人工衛星をつくり、スペースワンのロケットと共に宇宙に飛び立つ日が来ると、私は信じています」

清野健太郎 和歌山大学 観光学部
清野健太郎 和歌山大学 観光学部

動力は、想像力だ。今、ロケットの打ち上げに心を動かされた大人から子どもまでが、宙(そら)を見上げている。スペースワンはロケットだけでなく、人々の心にも点火した。それは、日本の宇宙産業において壮大なエコシステムが回り始めたことを意味している。

スペースワンによってカイロス3号機が打ち上げられる日は近い。いずれ「大きな前進」を見届けることになるかもしれない。

挑戦へのゴングは、高らかに打ち鳴らされているのだ。

太平洋に面した串本町には本州最南端の潮岬があり、「本州最南端のまち」を名乗ってきた。スペースワンの誘致によって、串本町は「ロケット最先端のまち」も名乗ることができるようになった。漫画『宇宙兄弟』ともタイアップしながら、町を挙げてスペースワンを応援する機運を盛り上げている。©︎小山宙哉/講談社
太平洋に面した串本町には本州最南端の潮岬があり、「本州最南端のまち」を名乗ってきた。スペースワンの誘致によって、串本町は「ロケット最先端のまち」も名乗ることができるようになった。漫画『宇宙兄弟』ともタイアップしながら、町を挙げてスペースワンを応援する機運を盛り上げている。©︎小山宙哉/講談社
串本町にあるカフェ&レストラン「サンドリア」の人気メニュー「串シーフードロケットフライカレー(税込2,500円)」。長さが15cm以上もある大きな有頭エビでロケットを表現している。
串本町にあるカフェ&レストラン「サンドリア」の人気メニュー「串シーフードロケットフライカレー(税込2,500円)」。長さが15cm以上もある大きな有頭エビでロケットを表現している。

MUFGブランドサイト「宇宙とMUFGをつなぐもの。」


ながやま・よしみ◎三菱UFJ銀行サステナブルビジネス部宇宙イノベーション室調査役。航空宇宙工学修了後、三菱UFJ銀行入行。法人営業・企画・産業調査等の部署を経て、スペースワンに出向。スペースワンでは経営企画・財務・国内外営業・広報等の業務に従事。

かついけ・ゆうり◎外資系広報代理店勤務の後、出版社、地球環境戦略研究機関(IGES)に転職。2024年3月からはスペースワンにて、日本初の民間ロケットによる衛星軌道投入に向けて危機管理、広報戦略、ステークホルダー対応などを担当。

よしだ・けいご◎和歌山県入庁後、一貫して商工行政に従事する商工行政のスペシャリスト。起業家プラットフォーム立ち上げやデザイン経営を活用した中小企業価値創出プロジェクト、アントレプレナーシップ教育プログラムなどを企画・運営。2024年からは、宇宙やGX産業創出、スタートアップ・ベンチャー支援に携わる。

きよの・けんたろう◎和歌山県串本町出身。2024年に和歌山県立串本古座高校を卒業し、和歌山大学観光学部に入学。幼少期より宇宙に親しみ、高校1年生時に缶サットプロジェクトチームを設立。カイロス紹介動画、公式見学場特別席での司会など、多方面から宇宙を見つめる大学生として活動中。

Promoted by MUFG / text by Kiyoto Kuniryo / photographs by Kei Ohnaka / edited by Akio Takashiro

連載

金融×宇宙産業でつくる新エコシステム