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2025.03.19 11:00

世界一のイノベーションハブになるために 『新しい成田空港』構想が描く未来像

『新しい成田空港』構想(※)を立ち上げ、旅客ターミナルの再構築や、空港周辺の“エアポートシティ”開発を目指す成田国際空港。

2030年以降、空港に求められる役割とは。千葉工業大学学長でデジタルガレージ取締役の伊藤穰一と、成田国際空港代表取締役社長の田村明比古が語りあう。


伊藤穰一(以下、伊藤):2000年代前半ごろ、月に世界を2周ほどしていたので、成田空港は頻繁に利用していました。世界の空港を見てきて思うのは、成田はとてもきれいで、なにより品がいいですよね。

利便性も高く、細かいところまで気配りが行き届いていると感じますし、成田エクスプレスや京成スカイライナーを使えば都心から快適に移動できるので「遠い」というイメージはすっかり過去のものになりました。

田村明比古(以下、田村):ありがとうございます。開港当初は利用客の4分の3が日本人でしたが、現在は逆転して、4分の3が外国人利用客になりました。食事や買い物などで空港内に長期滞在される方が増えるなど、求められている機能も変化してきています。

一方で、空港内の施設の多くは1970年代に整備されており、当時のレイアウトのまま現在に至るものも少なくありません。老朽化も深刻な課題です。時代のニーズに柔軟に対応できる空港であるためには、単なる補修に留まらず、コンセプトを根本から変えねばなりません。

伊藤:その危機感から生まれたのが『新しい成田空港』構想であるわけですね。

田村:その通りです。『新しい成田空港』構想には、主に4つの柱があります。1つめは「旅客ターミナルの再構築」。2030年代前半から順次、3棟ある旅客ターミナルを1棟に集約します。2つめは「新貨物地区の整備」。空港内に点在する貨物施設を集約し、物流機能を最適化します。

3つめは鉄道や道路などの「空港アクセスの改善」。そして4つめが「周辺地域との相互連携」。空港周辺のまちづくりを通じて “エアポートシティ”の形成を目指します。なお、既存のB滑走路の延伸とC滑走路の新設により発着容量を拡大させる“更なる機能強化”を2028年度末に向けて推進しています。

伊藤:ターミナルのキャパシティや発着容量が増えれば、トランジットの利用も増えそうですね。日本がターゲットではない利用客が空港に長時間滞在するとなると、ターミナルの設計も変わりそうです。

田村:仰る通りです。現在のターミナルのキャパシティと便数では、日本をOD(起点・終点)とされるお客様で座席がほぼ埋まってしまうため、乗り継ぎ客は減少傾向にあります。

ターミナルのキャパシティと便数が増えれば状況も変わりますので、乗り継ぎの動線や、便と便とのコネクションなども検討事項のひとつです。

伊藤:空港の設計は独自のノウハウが必要ですからね。私はいまブータンの空港開発に携わっているのですが、そこで考えているのがモジュラーなターミナルです。最初にすべてを完成させるのではなく、キャパシティ増に伴って少しずつ拡張するような、ランプアップできる空港を作れたらと。

田村:モジュラーなターミナルは、私たちにとっても理想の形ですね。未来は何が起こるかわかりません。急に需要が増えることもあれば、コロナ禍のようにターミナルから人が消えてしまうようなこともある。柔軟性や拡張性は、空港にとって非常に重要であると認識しています。『新しい成田空港』構想でも、ワンターミナルへの集約は既存の施設を運用しながら、状況に応じた段階的な整備を計画しています。

 

伊藤穰一
伊藤穰一

エアポートシティから千葉のブランド力を高める

伊藤:空港周辺のエアポートシティは、具体的にどのような形を想定されているのですか?

田村:圏央道と隣接するエリアに、新たな貨物ターミナルの整備を計画しています。さらに、圏央道を挟んで反対側の隣接地には総合保税地域、さらには、できれば自由貿易特区のような形で発展できたらと。

伊藤:アラブ首長国連邦の空港もフリーゾーン(免税区)を活用して、うまく発展させていますからね。

田村:周辺の開発においては、ゾーニングが重要です。たとえば仁川国際空港の周辺は、ハイテク産業や観光、住宅などのエリアを明確に区切って開発を進めています。類似した機能を持つ企業を集めれば効率も高まりますので、我々も同様に取り組めればと考えています。

伊藤:IT技術やイノベーション関連の特区を設ければ、面白いことができそうです。日本はIT技術者が慢性的に不足しており、経済産業省の試算では2030年までに45万人から79万人が不足するとされています。となれば必然的に、海外からIT技術者を招くことになる。そうした技術者と密にコラボレーションできる、イノベーションセンターのような空間が、空港周辺にあってもいいのではないでしょうか。

田村:おっしゃる通りですね。ITを含め、海外人材の割合はこれからも増え続けるでしょう。さまざまな産業が空港周辺で立ち上がれば、住宅や教育など、海外人材が住みやすい環境づくりも非常に重要になるでしょう。

英語への対応も必要です。成田空港でも、英語対応が可能なスタッフの数を増やしています。翻訳機器もありますが、やはり顔を見て、表情や声のトーンで伝えることが大事です。AIが発達しても、そうした感情の部分は人間が担うべきですから。

伊藤:こうした特区ができると、家族で日本にやってきて、父親や母親が仕事をしている間に他の家族が観光をする、というパターンも増えてきそうです。

田村:そうですね。千葉県にも、もっと観光客を呼び込めたらいいのですが。実は千葉県は、インバウンド1人あたりの都道府県別消費単価が日本で2番目に低いんです。成田や佐原、銚子などには江戸情緒が残る街並みがあるものの、観光資源としてあまり活用できていない。

伊藤:それはもったいないですね。いま外国人が「日本」を体験しようと思うと、やはり京都・奈良が中心になるので、東京を経由しないツアーも増えています。成田周辺のローカルなお寺で日本文化が気軽に体験できたら、プランも変わるかもしれません。

であれば、千葉を元気にするためにも、「千葉」というブランドをもっと前面に打ち出していきたいですよね。成田空港では、そうした取り組みはされているのでしょうか。

田村:私たちも観光や地域産品に貢献しようと、2024年にプラスナリタラボ株式会社を設立しました。地元のピーナッツやサツマイモを使ったお菓子の企画・開発や、次のフライトを待つ乗務員や乗り継ぎ旅客向けに1日観光ツアーの提供を検討するなど、地域ビジネスを推進しているところです。地域の方々と一緒に、千葉の持つポテンシャルを広く届けられたらと考えています。

伊藤:千葉の持つポテンシャルはもちろんですが、特に成田の「土地の優位性」の認知を広げることが欠かせません。新興企業や文化・芸術活動等が根付いていくには、土地の価格や家賃等の面でも受け入れやすい環境が継続されていくということが重要です。

こうした要素が起点となり、多様な交流が生まれ、地域の発展が加速していきます。実際、サンフランシスコやマンハッタンも同様のプロセスを経て発展してきました。成田周辺もこの条件を十分に備えており、さらに空港周辺に国際会議場やライブ会場を設けることで、地域の「目的地化」を推進するのはいかがでしょうか。 

 

成田国際空港代表取締役社長 田村明比古
成田国際空港代表取締役社長 田村明比古

web3時代は「個」の時代

田村:成田空港では、Face Express(顔認証による搭乗手続き)などの新技術活用を進めており、今後は物流機能の自動化にも取り組む予定です。そこで伊藤先生にお聞きしたいのですが、将来的にDXやweb3が加速し、さまざまな経済活動がバーチャルな世界で展開されるようになったとき、リアルの世界にある旅行や観光などは、どのように変化していくのでしょうか。

伊藤:まず、大量生産のプロダクトの価値は減っていくと思います。一方で、一点もののスニーカーや、コンサートのような体験は価値が向上する。旅行や観光も同様で、自分だけの体験を重視する人が増えていくでしょう。

コミュニケーションコストも下がっていますから、現地に詳しいコンダクターを個人的に紹介してもらい、ブッキングまで任せたほうが、大量生産のツアーより価値のあるものになるかもしれない。web3の世界になれば、個人間の決済も簡単になります。

そうしたとき、空港として巻き込まねばならない相手は、大企業から個人に移るはずです。信用度の高いツアーコンダクターには大企業と同等のサービスを提供するなど、新たなサービスやコミュニケーションが空港に必要になるだろうと思います。

田村:自動化や省力化のもっと先に、ビジネスのやり方そのものが変わる可能性があるわけですね。単に器を作るだけではなく、そうした変化を織り込みながら、こちらも変わっていかねばならない。今日のお話で改めて実感しました。

伊藤:日本を元気にするには、海外の人たちに「日本に行きたい」と思ってもらうことが大切です。その最初かつ最重要な門構えとなるのが、成田空港でしょう。私も海外にはよく行きますが、空港が嫌いな国にはもう行きたくないですから(笑)。

日本はルールを尊重するあまり、変化に対して腰が重くなりがちです。しかし、この先も魅力的な空港であるためには、変化し続けるニーズに柔軟に対応しなくてはなりません。ぜひ将来の変化を見据えて、『新しい成田空港』構想に取り組んでもらえたら。成田空港から日本を、そして千葉を元気にしてほしいですね。

田村:外国の方が初めて出会う日本が成田空港であり、また、日本での思い出を持って出国する、その最後を見送るのも成田空港です。利用者の方のニーズにきめ細かく応えられるように、ハードだけではなくソフトの面でも、「新しい成田空港」に生まれ変われたらと思います。

※『新しい成田空港』構想検討会 | 空港運用・整備 | 成田国際空港株式会社
https://www.narita-airport.jp/ja/company/airport-operation/new-narita-airport/


田村明比古◎1980年東京大学法学部卒業後、運輸省に入省。在アメリカ合衆国日本国大使館参事官・国土交通省大臣官房審議官・鉄道局次長・航空局長などを経て、2015年観光庁長官に就任。2019年6月から代表取締役社長に就任。

伊藤穰一◎デジタルアーキテクト、ベンチャーキャピタリスト、起業家、作家、学者。教育、民主主義とガバナンス、学問と科学のシステムの再設計などさまざまな課題解決に向けて活動中。米マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長、ソニー、ニューヨークタイムズ取締役などを歴任。株式会社デジタルガレージ取締役。デジタル庁デジタル社会構想会議構成員。2023年7月より千葉工業大学学長。Neurodiversity School in Tokyo共同創立者。主な近著に、『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』(SB新書)『〈増補版〉教養としてのテクノロジー AI、仮想通貨、ブロックチェーン』(講談社文庫)がある。

promoted by 成田国際空港/text by Masashi Soiri/ Photographs by Tomohiko Ogiwara