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2025.03.18 16:00

ワイヤレス給電で未来のインフラを築く、エイターリンクの挑戦

東京都が展開する「未来を拓くイノベーション TOKYO プロジェクト」は都内ベンチャー・中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する製品等の開発、改良、実証実験及び販路開拓を行うために必要な経費の一部を東京都が補助するとともに、事業化に向けたハンズオン支援を行う事業だ。

2022年度に採択されたのは、ワイヤレス給電技術の普及を目指すエンターリンクだ。ワイヤレス給電技術が求められる背景と課題、目指す未来について話を聞いた。


2020年に創業されたエイターリンクは、ワイヤレス給電技術を基盤としたソリューションを提供するスタートアップ企業だ。これまでにもワイヤレス給電の商用化を目指す研究者や企業は多かったが、給電電力が小さく、送電距離が短いという技術的課題を乗り越えられなかった。

しかし、スタンフォード大学で研究していたエンターリンク取締役CTOの田邉勇二は、効率的なエネルギー変換により、限られたエネルギーを最大限活用する技術を確立。これにより給電電力と距離の課題を解決し、実用レベルのマイクロ波ワイヤレス給電が可能となった。同社のマイクロ波による小型センサー類へのワイヤレス給電システム「AirPlug」は、ファクトリー・オートメーション(FA)やビルマネジメントといった領域から高い注目を集めている。

FA事業では、生産ラインで大量に活用されるセンサー類へのワイヤレス給電を実現。有線ゆえに工場などで頻繁に起こる断線やそれに伴う生産停止のリスクを大幅に軽減すると評価され、大手製造業社との共同開発品は量産も始まっている。

近年はビルマネジメント領域の需要も大きい。ワイヤレス給電によってビル内に多くの温度センサーを設置できれば、最適な温度制御が可能となる。導入したすべての物件で空調消費電力を30%以上削減できたという。

さらにエイターリンクの給電デバイスの特徴が、電力とともにデータの送受信も可能なことだ。それゆえ今後は、商業施設での電子値札、人感センサーによる人流データを活用したマーケティングなどさまざまな空間での利用が期待されている。

全員から反対された起業に光明を見た

そんなエイターリンクの創業は、同社代表取締役CEOの岩佐凌とCTO田邉の出会いに遡る。当時、老舗の総合商社に勤めていた岩佐は、シリコンバレーの懇親会で田邉と知り合う。ペースメーカーへのワイヤレス給電技術を研究する田邉は、ビジネス化への道筋を探る中で岩佐へと相談を持ちかけた。岩佐は医療分野での事業化は巨大な投資が必要となるため、まずFA領域での活路を提案した。

「商社では自動車製造領域を担当していたため、FAに間違いなくニーズがあることはわかっていました。そして、顧客のペインを解決するソリューションとして、ワイヤレス給電は最適な技術だと感じたのです。当時、ワイヤレス給電は技術こそ確立していなかったものの、しっかりと投資すれば十分に実現可能という肌感覚もあり、起業を決意しました」(岩佐)

岩佐は当初、社内ベンチャーとしての立ち上げなども模索したが、最終的に自身での起業を決断。田邉に一言も相談しないまま、19年末に会社を辞した直後に「僕は会社を辞めてきました。田邉さんも大学を辞めて日本に来てください」と声をかけ、エイターリンクを創業した。

創業に至るまでには、相談した全員から反対されたという。

「私はそれゆえに、成功を確信しました。スタートアップからユニコーン企業となるためには、すでに世の中で注目を集めている技術ではなく、誰も気づいてないけど勝ち筋と思えるところでビジネスをすることが重要です。誰からも賛成されなかったことはむしろ自信につながりました」(岩佐)

ワイヤレス給電の世界規格統一を目指す

技術開発を続ける一方で、エイターリンクが注力しているのが国内外のワイヤレス給電市場の整備だ。

創業当初の2020年時点、日本国内でのマイクロ波ワイヤレス給電は運用を禁じられていた。しかし、エイターリンクは総務省や関係各所へ向けた働きかけを続け、22年5月には日本国内における電波法が総務省令によって改正された。現在、ワイヤレス給電システムはデバイスごとに技術基準適合証明や免許が必要とされている。岩佐は「ワイヤレス給電の需要が増えて普及が進むことで、規制がさらに緩和されることを期待している」と話す。

同時にエイターリンクはワイヤレス給電の世界的なルールメイカーとなることで、グローバル市場へのアプローチも進めている。現在ワイヤレス給電に利用できる周波数帯は各国で異なっており、海外展開の際には製品の周波数も整備する必要がある。当然、その調整は製造コストにも反映されてしまう。

そのため、エイターリンクはワイヤレス給電に使用する通信規格のグローバルでの統一化に取り組んでいる。23年末には、国際連合の専門機関・ITU(国際電気通信連合)が主催する「WRC-23(2023年世界無線通信会議)」に参加。「WRC-23」は無線通信規則の改正を目的としたカンファレンスであり、岩佐は50カ国以上の政府関係者との交渉を行い、ワイヤレス給電の通信規格統一を国連が取り扱うアジェンダとして採択されるまでにこぎつけた。今後は、ITUでワイヤレス給電の通信規格統一が進むことが期待されている。

並行して、エイターリンクは自社のワイヤレス給電規格や仕様を「AirPlug Specification v1.0」として、技術確立と標準化を推し進める。この『空間伝送型ワイヤレス給電システムの標準化』は、令和4年度の「未来を拓くイノベーション TOKYO プロジェクト」に採択された。

「日本は欧州と比べて、技術の標準化・ルールメイキング分野が弱いとされています。それでも、私たちの手がける標準化の取り組みに資金援助をいただけたのは大変ありがたかったです。また、補助金についても、適切なマイルストーンで使途のモニタリングを行うことで、開発の手を緩めることなくスピード感を維持しながら活用できたのは非常に助かりました」(岩佐)

加えて、東京都の補助事業の認定を受けた事実は、顧客に対するブランディングとしても機能したという。そのほか、資金面に限らず、技術面や特許・パテント運用の面において、専門家からの助言も得られた。「技術開発と特許出願はペアであり、両者を踏まえた製品開発の進め方など、我々が見えていなかった高い視座でのアドバイスをいただけました」と振り返る。

新たなインフラ技術が人類のデジタル世界を変える

デジタル化とそれに伴うIoT導入の広がりで、ワイヤレス給電の市場も拡大が見込まれている。とある調査では、空間伝送型のワイヤレス給電技術の国内市場について2023年の23億円から、40年には8400億円超(いずれも売上高)になると予測している。

岩佐も「ワイヤレス給電はジェネラル・パーパス・テクノロジーであり、将来のインフラ技術となるはず」と強調する。

「人類の歴史を長いスパンで見れば、モノの生産量が上がったタイミングには必ずテクノロジーが存在しています。エジソンが発明した白熱電球は『世界から夜が消えた』と評され、アンモニアを製造するハーバー・ボッシュ法は農業革命を起こしました。通信やインターネット技術によって、私たちは今や物理的距離を問わずに会話できます。

ワイヤレス給電がさらに普及すれば、スマートコンタクトレンズやブレインマシンインターフェースといった、新たなデジタル革命が起こるでしょう。つまり、ワイヤレス給電には人類のデジタル世界を一つの上のレイヤーに上げるポテンシャルがあるのです。

エイターリンクは、そんな新たなインフラ技術を支える黒子として、社会や地球規模の富の創造にテクノロジーで貢献したいと考えています」(岩佐)

未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト
都内のベンチャー・中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する革新的なプロジェクトを対象に、その経費の一部を補助することにより、大きな波及効果を持つ新たなビジネスの創出と産業の活性化を図る事業。

エイターリンク
2020年創業のディープテックスタートアップ。ペースメーカー等メディカルインプラントデバイスの研究開発で培った技術を基に、世界に先駆けて空間伝送型ワイヤレス給電ソリューション「AirPlug」を実用化。ファクトリーオートメーション領域及びビルマネジメント領域で事業展開。配線のない“デジタル世界”の実現を目指す。


いわさ・りょう◎エイターリンク代表取締役/CEO。大学卒業後、岡谷鋼機へ入社。トヨタ自動車等への自動運転・電気自動車関連プロジェクトに従事。2017年に米国シリコンバレーで現CTOの田邉と出会い、20年8月にエイターリンクを設立。

Promoted by 日本総研 | text by Michi Sugawara | photograph by Yoshinobu Bito | edited by Kaori Saeki