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2025.03.06 16:00

「社員みんな粒違いでいい」。急拡大の博報堂テクノロジーズ人事が語る、エンジニア文化の解像度

エンジニアやデータサイエンティストら「テクノロジー人材」を創業3年たらずで150人近く集めた博報堂テクノロジーズ。急拡大中の組織を、どう作っているのか。

HR(Human Resources)で働く戸叶 学、 丸 美樹、川野 健太が組織づくりについて語らう。



ーー2024年4月ごろまでに社員が総勢460人超と、多くの人材を集めていらっしゃいます。社員のキャリアや報酬制度について、なにか特長があるのでしょうか。

戸叶:キャリアの面では、複線型のキャリアパスを設けています。複線型とは、組織のマネジメントを専門化していくか、もしくは技術的なスペシャリストになるかの選択肢から、自由に選択でき、途中変更も可能という形です。

特長的といえるのは、どちらを選択しても報酬水準に差がないように設計している点です。ピープルマネジメントをしないスペシャリストの場合でも、最大で年収2,500万円の報酬を得ることができます。技術志向のスペシャリストで、ここまで高い報酬を得られる企業は珍しいと思います。

ベンチマークしているのは、エンジニアの採用競合になるようなビッグテックや外資系企業なんです。この点、報酬面では納得感を持って働いてもらえることを目指しています。

ーーキャリアの選択肢や報酬水準をみると、テクノロジー人材の志向に合わせた組織づくりをしている印象も受けます。

戸叶: ミッショングレードの定義や報酬制度の改定などを、経営層・社員の皆さんとのコミュニケーションを通じて改めていっているんです。人事制度はアジャイル型で、スピーディーにバージョンアップを重ねていることも、エンジニアたちの思考や価値観にマッチしていると思います。23年4月にローンチしたバージョン1.0の制度は、創業1年半ですでに2回ほど大きな改変を加えています。

当社はテック企業で、事業を取り巻くスピードも速い。日々進化するテクノロジーを学んで仕事に活かす社員の方々の側ら、HRの動きもスピーディでありたい。このような方針であることは社員にもあらかじめ伝えていて、好感触を得ていると思っています。

HRメンバーの戸叶学。大手企業やコンサル・ファームでの人事経験を経て博報堂テクノロジーズに入社。手触り感のある人事を目指して人事戦略の立案や運用の実践にあたっている。
HRメンバーの戸叶学。大手企業やコンサルファームでの人事経験を経て博報堂テクノロジーズに入社。手触り感のある人事を目指して人事戦略の立案や運用の実践にあたっている。

ーー社員とのコミュニケーションで工夫されている点はあるのですか。

戸叶:常に心掛けているのが、HRと社員の間に壁を作らないことです。私は人事制度やタレントマネジメント、エンゲージメント関連施策などを担当していますが、企業によっては社員の方と接する機会が少ないポジションです。毎月ある入社者研修や制度の説明会、人事施策の効果測定インタビューなどで社員の方々と直接お話しする機会を意識的に増やすよう心掛けています。

人事関連のことで何か気になることがあった時に、まず私の顔を思い出してもらいたいんですね。「HRの業務をしている、戸叶という人が来た」と認識してほしい。制度の話は退屈な部分もあると思いますし、HRの人柄が私を通じて伝われば、後になって何かを問い合わせする際にも、心理的なハードルが下がる気がしていて、それが理由ですね。

川野:私は先月入社したのでその説明を聞いたばかりなんですが、「人事だからと言って壁を作りたくない」とは、実際に話されていましたよね。その時は、好きなスニーカーのブランドを語っておられて、その話の方が印象に残っています(笑)

ーー人柄が伝わり、親しみやすさを意識する点は、博報堂DYグループらしい部分といえそうです。人事関連の制度に博報堂DYグループらしさ、のようなものはありますか?

戸叶:給与水準では外資系企業をベンチマークしています。それに加えて当社は、博報堂DYグループのよいところや温かみのある仕組みは残しながら、報酬やスピード感は外資系やスタートアップと変わらないものを追求して、両者の“いいとこどり”の人事制度を実現したいと思っています。

丸:福利厚生に関する制度では、例えば「フリーバカンス」という、各自が好きなタイミングで年に2回、連続5日間の休暇を取得できる休暇制度は特長的ですね。

役職や年次などに関係なく皆が取れる休暇なので、社員にとっても取得の心理的ハードルは高くないのではと思います。年次有給休暇とは別に取得ができて、これを使って長期の旅行をする人もいれば、家族とゆっくり過ごす人もいたり、使い方もさまざまです。

それぞれが休暇に入るタイミングで業務の引継ぎをするので、業務をシェアできるいい機会にもなっています。 

「 アスピレーション」を歓迎する組織へ

ーーテクノロジー人材を独自の制度設計で迎え入れていらっしゃいますが、人材育成や人材開発において、大事にしていることはありますか。

戸叶:当社のスキルアップにおけるテーマは、「やりたい・学びたいを我慢しない」です。人が成長するときのキーとなるのは「アスピレーション」だと考えていまして、それを大事にしたいんです。

仕事を楽しむ意識の強いエンジニアの方々にこそ、自分自身の内発的動機やアスピレーションをベースにした学びが大切だなと。

こうした考えを基に「博報堂テクノロジーズアカデミー」という学びのプログラムを用意しています。

博報堂テクノロジーズアカデミーのプログラムは大きく2つありまして、ひとつは博報堂DYグループの一員として働く上で欠かせない「生活者発想」の価値観やマーケティングの知識、ビジネスパーソンとして欠かせないスキルを学ぶ「実践型プログラム」。

もうひとつは、PLP(パーソナライズド・ラーニング・プログラム)というもので、社員が主体的に選択したスキルアップ施策に会社が投資する制度です。人材育成の予算は各組織に配賦しているので、HRではなく直属の上長の承認が得られればいろんな形で学べる。海外のカンファレンスに学びに行った社員もいます。こうした人材育成にかける費用は、企業あたりの平均が一人当たり約4万円とも言われるなか、当社はその数倍ほどの予算を設けています。

丸:博報堂DYグループが、「粒揃いより、粒違い」であることを大事にしているんですよね。出る杭は打たれない、むしろ歓迎といった雰囲気です。みんな同じではなくて、それぞれに違いがあるのを認め、尊重しています。

このベースに、博報堂DYグループの「生活者発想」がありますよね。生活者発想とは人々を「消費者」として捉えるのではなく、多様な社会で主体的に生きる「生活者」として捉えるアプローチのことです。生活者を知るには、自身も多様性のある生活者であることを大事にするということですね。

戸叶:さらには、エンジニアの人たちは、内発的動機から自律的に学習し続けて、それを「好きな事だから苦に思わない」という方々が多いと思います。「博報堂テクノロジーズアカデミー」はどちらのプログラムも基本的には自由参加です。会社が必須とする研修を沢山設けるよりも、こうした自由なプログラムの方が、カルチャーフィットすると考えているんです。

技術で遊ぶように仕事をする人もいたりするので、野球で例えるなら、その人にしか打てないような球、その人が「これがやりたい」のポイントを狙って、大きいホームランが打てるような人になるため、会社の制度を使い倒してほしいな、と思っています。

 「粒違い」たちが自由に働く

ーー中途入社の社員も多く、さまざまなバックグラウンドの社員がいると思います。どんな組織文化が醸成されているのですか?

川野:粒違いを大事にする文化のある組織だと思います。私が採用されたのもその一環だと考えています。私は聴覚障害のある人が出場する自転車競技「デフリンピック」のプロ選手でした。前職ではアスリート社員として働き、人事の仕事も経験しました。バックグラウンドや経験が異なる粒違いの人たちが集まって、多様な視点が組織に集まるのだと思います。

働き方の自由度が高いのも特長です。例えば、私は自分の声のボリュームの調整が難しく、周囲の話し声などから場の雰囲気を掴むことが得意ではないんです。前職では、オフィスに大勢人がいる環境だと周囲に気を遣ってしまい、なかなか会話ができませんでした。

働き方の自由度が高い今の環境では、たとえば在宅でオンライン会議に参加できたり、出社したときには個室ブースを活用できたりと自分に合った形でコミュニケーションを楽しめています。

さらに、雑談を歓迎する文化があることで、意見を出しやすく、自然体で関わることができるのがありがたいです。主体的に取り組みやすくなるので、自分にとっても良い環境をつくっていける実感があるのも魅力的ですね。

HRメンバーの川野健太。自転車競技を2013年に始め、わずか2年後にはアジア太平洋ろう者競技大会 ポイントレース3位入賞。以降、トルコやブラジルでのデフリンピックを始め、数々の大会に出場した経験を持つ。
HRメンバーの川野健太。自転車競技を2013年に始め、わずか2年後にはアジア太平洋ろう者競技大会 ポイントレース3位入賞。以降、トルコやブラジルでのデフリンピックを始め、数々の大会に出場した経験を持つ。

戸叶:仕事にも、大きな裁量がありますよね。HRという立場もあるかもしれませんが、営業開始から約2年経った今も、会社を作りあげているなという実感が強くあります。

基本的には、上司から「これをやって」と言われることはほぼなく、会社にとって必要だと自らが考えることを上司に提案し、承諾を得たうえでプロジェクト化し進めています。アスピレーションを大事にしている点はHRにも共通です。

丸:仕事をただこなすことはあまりなく、向学心や好奇心が強い人が多く、ボトムアップで、メンバーの目線からプロジェクトが動くこともありますよね。私は長く博報堂DYグループの会社にいた後に別会社を経験し、博報堂テクノロジーズに入社したのですが、中途入社の場合、過去の経験から何かを決めるのはためらわれる場面もあるかと思うんです。

でも、博報堂テクノロジーズはむしろそうした過去の知見も歓迎です。それから、エンジニア職種の社員はもちろんですが、私たちのようなHR領域の社員などを含めても、テクノロジーやものづくりへのリスペクトや興味関心があるという点が共通したひとつの軸になっていますね。

ただ、裁量や自由がある反面、自律性を求められるところはありますよね。対面で会う機会が少ないので、コミュニケーションの取り方も個人に任せる部分が大きくなるわけです。コミュニケーションが苦手だったり、その機会を多くもてなかったりする社員を孤立させないような仕組みも積極的に考えていきたいと思っています。

丸 美樹。グループや関連会社などを含め長年にわたり博報堂DYグループで人事領域の業務に従事。 人事業務のDX化や効率化を図りながら、人事制度を分かりやすく伝えるチャレンジをしたいと語る。
丸 美樹。グループや関連会社などを含め長年にわたり博報堂DYグループで人事領域の業務に従事。 人事業務のDX化や効率化を図りながら、人事制度を分かりやすく伝えるチャレンジをしたいと語る。

ーー多様な人材が集まるとなると、一体感をつくるのが難しいこともあるのではないでしょうか。

丸:一体感の醸成については、まさに今、社内でチャレンジしているところで、約1年前に部門横断の「Be Open」というプロジェクトが発足しました。

このプロジェクトでは、社員交流、組織活性、情報共有の3つを軸とする活動をしています。例えば、社員交流や情報共有として、興味関心の近い人が集まって技術勉強会などを行っています。お互いに技術を開示して知見を交換し合い、そこから実績を生んでいくのはエンジニアのカルチャーでもあるなと思います。

以前は、社員各自のノウハウが共有されていないこともあったと思うんですが、ここにこうしたカルチャーを融合することで、博報堂テクノロジーズがまた新たな価値をグループにもたらせるのではないかと思います。

人事もITの力を信じ、好奇心を持つこと

ーー博報堂テクノロジーズの成長で、グループの組織文化にも、新しい風が吹きそうですね。今後、博報堂テクノロジーズの組織づくりをどのように進めていかれますか。

戸叶:営業開始から約2年、これまでは特に会社の基盤作りに注力してきましたし、事業を取り巻く環境や組織・社員規模も大きく変容しているので、そろそろ定点的な効果測定を行う必要性も感じています。

その足掛かりとしては、これまで出来ていなかったエンゲージメントサーベイを実施して、全社レベルで定量的な効果測定をする予定です。博報堂テクノロジーズの課題を見つめて、次にどのような手を打っていくか、真摯に考えたいと思っています。

丸:HRがテクノロジー・オリエンテッドな彼らのことを尊重し、その上で人事として何ができるかを考えながら並走していきたいと考えています。

多くの社員が在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせてハイブリッドな働き方をしていることもあり、情報交換の機会を増やすことが課題だと考えています。また、技術がアップデートされればエンジニアのみなさんの仕事ぶりも変わってくるため、その変化をHRがキャッチアップしていくことも重要だと思います。

川野:私はエンジニアの仕事にも興味をもっていて、プログラミング言語などのITスキルを身につけて、HRの業務を効率化する方法を考えていきたいと思っています。当事者視点でのDE&I推進にも積極的に関わっていきたいと思っています。

戸叶:川野のように、自律的であることが博報堂テクノロジーズで働く上では重要です。ITの力を信じてくれていて、好奇心を持って楽しむように仕事をして、関心の輪や関わるフィールドを広げていきたい人。当社はそんなテクノロジーオリエンテッドな人材と一緒に会社を作っていきたいと思っています。そうした人に加わってもらいながら、会社としてより大きな仕事を実現し、共に社会に対してより大きなインパクトを与えていきたいですね。

(記事は2025年3月6日時点の情報です)

博報堂テクノロジーズ
https://recruit.hakuhodo-technologies.co.jp/

Promoted by 博報堂テクノロジーズ / text by Kana Kubo / photographs by Yutaro Yamaguchi, Shuichi Oda / edited by Asahi Ezure