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2025.03.06 11:00

休憩で休めている実感が高まると、企業の生産性は向上するのか?

2025年1月末、パーソル総合研究所は調査レポート『はたらく人の休憩に関する定量調査』を発表した。パーソルグループのシンクタンクである同研究所の研究員・田村元樹は、休憩で休めている実感の高さが企業の生産性向上に資すると話す——。


パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンクとして、労働市場や人と組織に関する調査・研究を推進。すべての働く人、社会に対する貢献を掲げ、客観的・中立的な立場でのシンクタンク機能を果たしている。 

そんなパーソル総合研究所は、今年1月末に『はたらく人の休憩に関する定量調査』を発表した。

この調査を主導したのが、パーソル総合研究所研究員の田村元樹だ。田村は大手医薬品卸売業社の営業職を経て、政府系シンクタンクに出向。現場経験を生かして研究機関で働くなかで、研究と実務の隔たりを痛感する。両者をつなぎたいという想いから、社会疫学、公衆衛生学を専門とする研究職に転向した異色の経歴のもち主でもある。社会人生活と並行して博士号を取得するというキャリアパスは、リスキリングの好事例としても注目されるところだ 。そんな田村は、パーソルグループが掲げる「はたらいて、笑おう。」というビジョンに共感し、24年にパーソル総合研究所の門をたたいた。

田村は『はたらく人の休憩に関する定量調査』を実施した理由について、次のように話す。

「私は、自身の研究成果を社会課題の解決に役立つ形で社会実装することを目指して、パーソル総合研究所に入社しました。

特に、働き方や労働環境の改善に向けた具体的な取り組みが不足している点に課題を感じていました。例えば、マイクロマネジメントの研究は1900年代前半から存在し、部下の成長機会を阻害する原因やメカニズムなどはすでに数多く示されています。しかし、その知見をどう具体的に実践すればいいのか、といった解決策はあまり提示されていません。その結果、働き方改革や技術進歩による就業環境の変化が進んでも、現場には旧態依然としたやり方が根強く残っているのが実情です。

働き方がなかなか変わらないにもかかわらず、企業や労働者は生産性向上が迫られている。そこで、労働者の心身不調の予防や生産性向上という観点から、これまであまり注目されてこなかった“休憩”にフォーカスしました」(田村)

田村元樹 パーソル総合研究所研究員
田村元樹 パーソル総合研究所研究員

生産性を発揮できない「プレゼンティズム」

ここからは今回の調査結果について、田村の分析を交えて見ていく。

まず、目を引くのは休憩の取得傾向だ。平日5日間のうち、45分以上休憩を取得できている割合は月曜が最も高く、金曜に進むにつれて取得できている休憩時間は短くなる傾向にある。これについて田村は、週初めは業務負荷が比較的低く、時間調整がしやすい状態で仕事をしている可能性が高いとする。また、金曜に近づくにつれて、「ひとりで休憩」する傾向が強まることにも着目。この変化は、疲労の蓄積や多忙によるコミュニケーションの減少と関係している可能性があり、結果として仕事への集中力低下につながる懸念があるとした。


また、休憩は個人だけの問題でなく、上司や同僚を含めた職場全体に関わる問題でもある。その顕著な例が「職場におけるピア効果」だ。ピア効果とは、同じ職場の人の行動や態度が自身の生産性や仕事への取り組み方、満足度に影響を与える現象を指す。今回の調査では、上司や同僚が積極的に休憩を取得もしくは取得することを促してくれると、自身も休憩で休めている実感を得られ、心身のリフレッシュに有効であることが確認できたという。一方で、上司や同僚が休憩を取らず、自分も休憩が取りづらい状況は「周囲の行動や職場風土による同調圧力」として、負のピア効果を発揮する。このように周囲の影響を受け、自分だけ休憩を取得することに気が引けるのは負のピア効果の典型的な事例であり、組織の問題として解決すべきだと田村は指摘する。

さらに、今回の調査では、休めている実感の有無が心身の不調リスクとも密接に結びついていることが明らかとなった。心身の不調リスクは「プレゼンティズム」という概念で説明される。「プレゼンティズム」とは、出勤しているにもかかわらず心身の不調から生産性が下がる状態を指す。調査結果からは、休憩時間が短い人だけでなく、休憩で「休めている実感がない」人の場合も、プレゼンティズムの発生割合が約2倍高くなるとされている。
休憩とプレゼンティズムの関係は、経済産業省が15年に発表した『健康経営オフィスレポート』 でも言及される一方で、両者の関連はこれまで明確に証明されてこなかったという。これまでは、休憩することで心身症の予防・改善が期待され、その結果としてプレゼンティズムを防げる可能性があるとされていた。今回の調査では多変量解析という学術的な手法で両者の関連を証明した。「休憩とプレゼンティズムの関連を、直接的に示した調査ははじめてだと思います 」と、田村は胸を張る。

ほかにも、同調査では休憩の過ごし方を「不本意タイプ」「自己投資タイプ」「エンタメ没頭タイプ」「交流タイプ」「仮眠タイプ」「ひとり時間タイプ」の6タイプに分類。これらの6タイプにおいて、休めている実感の割合が高いのは「自己投資タイプ」「エンタメ没頭タイプ」「交流タイプ」の順で、強制的に休憩を取らされる「不本意タイプ」は最も休めていない実感の割合が高いことを明らかにした。



「散歩や身体を動かす『自己投資タイプ』、音楽やゲームを楽しむ『エンタメ没入タイプ』、上司や同僚と会話や食事をする『交流タイプ』は、いずれも一度仕事から離れて別の環境に移るということが共通しています。環境を切り替えることでリフレッシュ効果が高まるのだと考えられます。

意外だったのは、『仮眠タイプ』はプレゼンティズムの発生割合が最も高いという結果です。近年、短時間の昼寝はパワーナップとして有用性が注目されていますが、仮眠を取る環境や時間帯が不適切な場合、十分な休息の効果を得ることが難しいのではないかと考察しています」(同)

休憩で休めている実感を高めるために企業と個人が取り組むべきこと

今回の調査データに基づき、田村は改めて企業の職場文化の見直しを推奨する。

「何よりも休憩で「休めている」と実感できることが、業務パフォーマンスを高める要素だととらえる必要があり、ソフトとハードの両面を整えていくことで実現できるのではないかと考えています。ソフトについては、休憩を奨励する文化の醸成や制度の導入をしてほしいと考えます。例えば、休憩時間を固定的に設けるのではなく、業務実態に合わせた休憩時間を取得できるよう、就業規則を見直すことは一丁目一番地で取り組みやすい施策と言えるでしょう。習慣や制度を変えることでみんなが進んで休憩を取るようになれば、職場全体でポジティブなピア効果が発揮されるはずです」(同)

また、制度などのソフト面だけでなく、ハード面での見直しも重要だ。田村は、グループ企業において本社だけが立派なカフェテリアやワークスペースを設けるのではなく、全社員が公平感をもってリフレッシュ設備を使える環境整備の重要性を説く。

企業にはハードとソフトの両面で、休憩の効果が等しく行きわたるような制度・環境設計が求められている。

企業側だけでなく、働く個人が休憩する習慣を意識し、さらには、仕事中の休憩は“お互い様の意識”が肝要とも強調する。休憩できる環境を互いに整え合えば人々の行動は変容し、結果としてより生産性の高い組織づくりを実現できるはずだ。

「パーソル総合研究所が昨年2024年10月 に発表した『労働市場の未来推計2035』において、35年時点で1日当たり1,775万時間の労働力不足、働き手で換算すると384万人分不足することが予測されています。今後は、多様な人々が労働参加し、多様な働き方となっていくなかで、個人のパフォーマンスを最大限に引き出すための就業環境整備はますます重要となります。そのための投資こそが企業の成長ドライバーへとつながります。また、働きやすい職場の実現は、労働市場におけるブランディングとも密接に結びついています。休憩で休めている実感を高めることは、企業にとっても大変メリットのある話なのです。

健康経営を通じて、生産性が高く働きやすい職場づくりを推進する。そんな社会を実現するために、改めて休憩の重要性に目を向けてもらえればと思います」(同)

『はたらく人の休憩に関する定量調査』の詳細はこちら


たむら・もとき◎大学卒業後、2011年に大手医薬品卸売業社へ入社。在職時に政府系シンクタンクへ出向。その後、民間シンクタンクや大学の研究員、介護系ベンチャー企業の事業部長を経験。高齢者を対象に、余暇的な労働など多数の調査・研究に携わり、24年1月から現職。専門分野は公衆衛生学・社会疫学・行動科学。

Promoted byパーソル総合研究所 / text by Michi Sugawara / photographs by Shuji Goto / edited by Akio Takashiro