博報堂DYグループならではの「生活者データ」で一気通貫のマーケ支援を
テクノロジーの発達やDXの進展で、企業のビジネス環境は大きく様変わりしている。ビックデータの活用や一元管理によってマーケティングを強化する潮流のなかで、広告会社に求められる役割も、広告を中心としたマーケティングコミュニケーションだけでなく、事業開発や商品開発などバリューチェーン全域に広がるようになった。「総合広告会社として、これまでにも博報堂にはマーケターやクリエイター、営業など専門の分野のプレーヤーに特化したシステムはあったんですが、業界の潮流が変わればクライアントニーズも変わる。これらに対応する必要が、グループにも出てきたのが開発の背景にあります」。
こう話すのは、「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の企画開発に携わる博報堂DYホールディングスのテクノロジストである北川雄一朗だ。情報やナレッジを統合できるマーケティングプラットフォームは博報堂DYグループだけでなく他社製品も存在するが、どのような点がCREATIVITY ENGINE BLOOMの強みと言えるのか。開発に携わった博報堂テクノロジーズの大﨑翔平はこう語る。
「特徴としては博報堂DYグループが長年培ってきた、生活者データプラットフォームを活用できることです。生活者データプラットフォームには、生活者の解像度を高める調査データやデジタルのアクチュアルデータなどオリジナルデータを多く含みます。独自データを活用することで、グループならではの戦略、新たなサービスや分析の提案につなげることができます。それだけでなくメディアやクリエイティブまで一気通貫したマーケティングプランの提供やその評価をすることができるんです」(大﨑)
CREATIVITY ENGINE BLOOMは領域別に5つの機能を有する。マーケティング戦略を描くストラテジー・モジュール、メディア効果を最大化するメディア・モジュール、よりよいクリエイティブを提供するクリエイティブ・モジュール、よりよい買い物体験を支援するコマース・モジュール、生活者との新たな関係を構築するエンゲージメント・モジュールだ。これらが相補的に機能することで各領域のナレッジが重なり合い、グループでシナジーを生み出しながらより高度なマーケティングビジネスの展開を見込んでいる。
予想を裏切るホームラン級の提案を生む
会話のラリーを続けるためのAI
CREATIVITY ENGINE BLOOMは、独自のAI技術である「Human-Centered AI機能」によって支えられている。AIを実装する上でどのような点に配慮したのだろうか。「Human-Centered AI機能は、その名の通り人間中心のAIです。CREATIVITY ENGINE BLOOMにおいては、AIはあくまで社員がクリエイティビティを発揮するサポート役だという価値観ですね。AIはあくまで伴走者です。AIによって業務を効率化し、視点や軸をずらして発想したりする人がもつクリエイティビティをより社員に発揮してもらいたいと思っています」(大﨑)
AI導入にあたって、北川と大﨑はグループ全体が直面している課題や勝ち筋についてヒアリングを行い、ノウハウをどこまで型化すべきかを考えていった。
その結果、CREATIVITY ENGINE BLOOMではAIが回答を出すのではなく、複数の提案を提示するに止めることにしたという。多様なデータから、目的や要求に応じた“下ごしらえ”としての提案をAIが担い、それらに対して、人がチューニングして提案をブラッシュアップする。AIと人が会話するようにプランニングを進めていくプロセスを想定したのだ。北川は「そうでないとあまり使われないと思った」と話す。
「グループ全体に言えると思うんですが、オリジナリティを求める人が多いと思っています。プライドがあって、いわば、みんながうなぎ屋で秘伝のタレのレシピを持っているようなものです。だから、AIがやるのは助走段階です。AIが出した案を最後は人が対話するように最適解にチューニングしていくことで、その人の持ち味を強く発揮できるような展開を構想したのです」(北川)
それゆえに、AIと人間の業務分担は「あえて線は引かない」(北川)という。
「AIの提案に対して、自分ならこうするという反証や修正を繰り返す中で、自分らしさをどう表現するか、クライアントのために何をすべきか考えることができるのが博報堂DYグループの社員だと思っています。AIが出した答えをすぐに甘受する人は、あまりいないんじゃないかと。AIの案を超えていこうとするんじゃないかと、期待も込めてそう思っています」。
「私たちが線引きするラインを決めるのではなく、試作して実際に社員に触ってもらってフィードバックを受け、機能を追加していくという流れで進めています。AIはヒットを効率良く打つことはできますが、今まで世の中にないものを出すなど、大きく予想を裏切って人々をびっくりさせることはできません。ホームランを打つ仕事は、社員に思う存分やってほしいです」(大﨑)
コアエンジンは開発強化中
提案と開発を一挙に担えるエンジニアを募集
現在開発中の機能もあるというCREATIVITY ENGINE BLOOM。今後どのような展開をみせていくのか。大﨑によると、既存機能の統合を進める傍ら、順次プロダクトを発表していくという。2024年11月8日にはストラテジー・モジュールの一機能として、博報堂DYグループの著名クリエイターのコンセプト開発手法を効率的に実践できる「STRATEGY BLOOM CONCEPT」が発表された。
「TBWA HAKUHODOのチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)である細田高広が提唱する『インサイト型ストーリー』という開発手法を、AIに学習させました。エージェント化した生成AIに、得意先からの要件を伝えると、ターゲットやインサイト、コンセプトの設計をいくつか提案してくれます。その結果について人がAIと対話してチューニングしながら、落としどころを探っていける機能です」(北川)
北川の所感では、博報堂DYグループの文化は職人肌、徒弟的な丁寧な育成制度といった特色があるという。職人気質でスター性のあるプロフェッショナルが育つ一方で、ベテラン社員の“虎の巻”は広く公開されにくく、ノウハウが暗黙知化されてしまう側面がある。これらを形式知として型化していくことも、CREATIVITY ENGINE BLOOMの狙いなのだという。
ノウハウの共有が進むことで、プランニングの初心者の発想支援や人材育成にも役立てられる。
「多くの企業に共通する課題だと思いますが、コロナ禍以前は対面で議論をする機会があり、そのラリーのなかで、若手が意見やアイデアを出す機会がありました。しかし、仕事のオンライン化が進んだことで、若手が実践で学べる機会が減っていると聞きます。CREATIVITY ENGINE BLOOMを使って、思考のキャッチボールがひとりでもできるようになると言えますね」(北川)
CREATIVITY ENGINE BLOOMで、業界において「博報堂DYグループの総力を上げたい」と北川は展望を語る。博報堂テクノロジーズは、そんなプラットフォームを共につくり上げていくテクノロジー人材を募集中だ。同社は『Be a Two-way Pro』という言葉を掲げ、マーケティングとテクノロジーの二刀流のエンジニア像を掲げる。同社のエンジニアは、どのような経験を得られるのか。
「マーケティング業界はデータやテクノロジーの影響が大きいからこそ、今まさに最先端の技術を活用した開発にチャレンジできる環境です。博報堂DYグループのテクノロジー戦略会社である我々に求められているのは、社員それぞれのキャリアで培ってきたスキルに加え、新しい技術トレンド・サービスを駆使して当社グループやその先のクライアントの課題解決や成長に貢献することです。そのため、開発だけでなく、プロジェクトの企画段階から参画できる機会があるのも大きな魅力だと思います。今はまさに会社のOSを一緒につくっていけるような段階です。課題の解決策から考えていくプロジェクトはエンジニアにとってもおもしろい環境だと思います」(大﨑)
「多様な立場や価値観をもつ仲間と一緒に働くことができ、それぞれの立場や責務はありながらも自分の意見や提案をしやすい。マーケティング領域に関心があり、マーケティングOSを作ってみたい方にもぜひ来ていただきたいです」(北川)
「テクノロジー・オリエンテッド」を掲げる博報堂テクノロジーズ。ここに集結する技術によってCREATIVITY ENGINE BLOOMは進化していく。今後、広告業界に与える変化に注目したい。
博報堂テクノロジーズ
https://www.hakuhodo-technologies.co.jp/
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