すでに一部で実用化の動きもあるものの、SIBにはLIBと比較して性能が劣り、重量が増すなどの課題がある。その鍵を握るのが正極の材料となる物質(ナトリウム含有遷移金属層状酸化物)だ。その組成がSIBの性能を左右するため、組成の最適化と評価のための研究が盛んに行われている。
そのひとつ、東京理科大学と名古屋工業大学による共同研究では、11年間蓄積されてきたSIB用層状酸化物68種類100サンプルのデータベースを構築し、その性能を予測する機械学習モデルを開発した。この機械学習モデルが提案した有望な組成で実際に正極材料を合成し、2.0〜4.2ボルトの範囲で定電流充放電試験を行ったところ、初期放電容量1グラムあたり169ミリアンペアアワー、平均放電電圧3.22ボルト、エネルギー密度1キログラムあたり549ワットアワーという高い性能が示された。
これらは機械学習の予測とほぼ一致する値だが、充放電の20サイクル後の容量維持率は83パーセントと予測を下回っていた。これは結晶構造の変化や粒子の亀裂によるもので、それを防ぐよう電圧の範囲を調整することで改善が見られた。
この実験により機械学習モデルの予測が有効であることが実証され、これを用いることで実験数の抑制、材料開発の高速化、低コスト化に近づくと、研究を主導した東京理科大学の保坂知宙助教は話す。さらに、SIBの電極材料が高性能化されることで、高容量で長寿命な電池が低価格で手に入るようになるということだ。環境負荷が小さい高性能二次電池の地産地消が、いち早く実現することを期待する。
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