この厳しい結論は、英金融業界のリーダーたちで構成された資本市場産業タスクフォース(Capital Markets Industry Taskforce:CMIT)が、現地時間9月6日に発表した報告書で明らにしたものだ。かねてから発表が待たれていたこの報告書は、英国の資本市場再生を目的とした、政府への提言としてまとめられたものだ。
報告書は、英国が過去50年間、米国とよく似た成長曲線を描いてきたとしつつも、2008年から2009年にかけて起きた、いわゆるリーマンショック以降、両国の成長軌道が大きく解離している点を指摘している。
報告書は、米国が「テック界では随一の実力を誇る世界の超大国であり、金融アーキテクチャ市場やビジネスをコントロールする支配的プレイヤーであり、グローバルエネルギー市場の超大国」になっていると指摘した。一方で英国は13年間に渡り「実質賃金や、国民1人あたりの実質GDP(国内総生産)に全く成長がみられず、生産性についてもその成長はごくわずかだ」と述べている。
そこでCMITは、今後10年間にわたり、年間1000億ポンド(約18兆6000億円)規模の新規投資を求めている。これは、主要セクターに広く配分されるべきもので、具体的には、住宅建設に200億~300億ポンド(約3兆7270億~5兆5900億円)、エネルギー開発に500億ポンド(約9兆3180億円)、水道インフラ整備に80億ポンド(約1兆4900億円)を投資すべきだとしている。
近年、金融センターとしてのロンドンは地盤沈下が著しく、メインの上場先をニューヨークに切り替える企業が相次いでいる。特に大きな打撃になったのは、英国のケンブリッジに本拠を置く半導体設計企業で、同国随一の有望テック企業とされるArm Holdings(アーム・ホールディングス)が2023年9月に新規株式公開(IPO)を行なった際に、ロンドン市場を上場先として選ばなかった一件だ。それ以来、英国政府は、自国の資本市場を再生させるため、いくつかの手を打ってきた。