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2023.12.15 16:00

知識集約型・高付加価値企業へ転換せよ──東洋エンジニアリングのハートに火をつけるデジタル戦略

データ基盤の構築支援によりビジネスに貢献するインサイトテクノロジー社の協力のもと、本質的なデジタル・データ活用のために、「使える」「使われる」データ基盤の構築が重要であること、またその困難さとそれを乗り越えることで広がる可能性について提示する連載企画。

第三回では、日本有数のプラントエンジニアリング会社であり、2019年から「DXoT(Digital Transformation of TOYO)」に取り組んでいる東洋エンジニアリングのGlobal IT Officer 長澤道夫を招き、同社のDX戦略やデジタル・データ活用の展望についてインサイトテクノロジー取締役 CDOの高𫞎則行が話を聞いた。

プロジェクトにかかわる全情報をコンピュータで処理可能に


高𫞎 本日は、グローバルに産業プラントのEPC(設計・調達・建設)を手がけている東洋エンジニアリングにうかがいました。同社のGlobal IT Officerを務める長澤さんの職務について、お聞かせください。

長澤 現在はITインフラ戦略に加えて、ビジネス戦略に基づく会社全体のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。また、会社全体のICT委員会の下で、グローバルITというクロスファンクショナルなタスクチームを率い、海外拠点のメンバーと一緒に、サイバーセキュリティやゼロトラスト、データ統合基盤整備、グローバルITの運用保守整備などもしています。

高𫞎 東洋エンジニアリングのDXの経緯についても教えてください。

長澤 特に実際のプラント建設に関する情報は、紙ベースのものがほとんどでした。最初にIT化に取り組んだのはプロセスシュミレーションデータで、会社設立当時の1960年代はIBMのコンピュータを購入してプロセスの計算をしていました。また、80年代には、3D CADソフトも自社開発しています。ただ、結局それらの情報も建設現場に送らなければならないので最終的に紙に印刷していて、2000年代半ばまでは紙が中心でした。00年頃は、建設現場で図面に赤を入れて紙でファイリングするという状況が当たり前だったのです。

一方で、同時期から世界各国の建設現場でインターネットを介したドキュメントのやり取りができる時代になってきたこともあり、自社でインターネットベースのドキュメントシステムを開発しよう、という流れになりました。ドキュメントシステムを活用してデータベースを構築したことで、ひとつのプロジェクトにおけるデータのボリュームやアクセス履歴といったことがわかり、これらのナレッジを活用する重要性に気づき始めたのです。

高𫞎 現在は設計からその後の運用、シミュレーションに至るデータを、CADで連携する世の中になりつつあります。1980年代時点で3D CADソフトを自社開発するなど、デジタライゼーションを先駆けていたのは非常に先見的ですね。

長澤 2000年代頃からIBMのグループウェア「Lotus Notes」を使って、現場とドキュメントデータをやり取りするようになってからは、より本格的なクラウド基盤やアクセス権管理といったセキュリティの重要性を感じるようになりました。特に、プロジェクトに関するデータは絶対に外部に漏れてはいけない情報です。そのため、自社のドキュメントシステム開発の際には、IPアドレス制限やセキュリティ部門へのアラート機能などを導入し、そのコンセプトをクライアントに説明したところ、非常に評価していただきました。セキュリティというのは、私たちを守るだけでなくお客様にとっての価値にもなるのだと、そのときはじめて実感しましたね。

高𫞎 認証してログを記録するというのはセキュリティの基本で、今でいうゼロトラストセキュリティを当時から実装していたわけですね。近年は異常検知やアラート、認証認可の仕組みにAIを取り入れながらゼロトラストセキュリティの構築が叫ばれていますが、かなり早い段階でその価値を提示していたのは非常に素晴らしいと思います。

ドキュメントシステムの自社開発に乗り出すなど、御社は早期からDXに取り組んでいるように見受けられます。単純な疑問として、エンジニアリングに特化したツールから抽出したドキュメントデータをデータ基盤に乗せることはスムーズにできたのでしょうか。

長澤 最近でこそエンジニアリングのデータベースも整備されてきてはいますが、基本的にデータをそのままERPシステムに入力すればいいというものではありません。人間はドキュメントを見ればそこにある情報の意味がわかりますが、コンピュータはドキュメントだけ見てもどういった情報が含まれているのかを認識・処理できません。ですから、現在はプロジェクトに関わる情報(プロダクトインフォメーション)を、いかにコンピュータが処理できるデータに変換していくかが課題となっています。

長澤道夫 東洋エンジニアリング Global IT Officer

長澤道夫 東洋エンジニアリング Global IT Officer

エンジニアリング会社が労働集約型ビジネスになってしまう


高𫞎 東洋エンジニアリングは、19年から「DXoT(Digital Transformation of TOYO)」という取り組みをスタートしていますね。DXを加速させた理由はなぜでしょうか。

長澤 自社のドキュメントシステムを開発・運用したことで情報集約やナレッジの価値に気づき、そのタイミングで、社内で過去の総括を含めた議論を行いました。そのなかで、かつて知識集約型だったエンジニアリング会社が徐々に労働集約型になり始めているという話になったのです。実際に私も外資系コンサルティング会社への出向を経て、改めて自社の仕事内容ややり方を振り返ると、業務のコモディティ化が進行し、このままでは労働集約型ビジネスとなってしまう危惧を覚えました。そして、その懸念をエンジニアたちも同様に抱えているとわかったのです。

こうした議論の結果、急速に進化するデジタル技術を取り入れることで専門家同士のコミュニケーションを高度化する必要があるという結論に達しました。逆に言うと、それができないエンジニアリング会社は、知識集約高付加価値企業から労働集約低付加価値企業になりさがってしまうだろうということです。

高𫞎 デジタル技術の進化によって、多くの産業が知識集約型ビジネスから労働集約型ビジネスとなってしまう可能性がある。DXによるビジネススキームや情報処理、働き方といったイノベーションを図らなければ生き残れないと考えたわけですね。

長澤 2016年までにドキュメントやコミュニケーションの基盤はクラウド化できたので、この先の展開を考えると、今後はIT中心ではなくビジネス中心で会社全体を変えていく必要があるということになりました。そこで、イノベーションは会社の次世代を担う中堅・若手が主役であるべきとの経営判断によって、若手を中心としたタスクチームを結成しました。

若手もデータの前処理といった自動化できるはずの業務に忙殺される現状に辟易としていたこともあり、知識を集積しレバレッジをかけて新たな価値を生み出すための議論に積極的でした。こうして交わした議論から、「意思決定」と「Exciting!!!」というキーワードが抽出されました。これらを掲げることで、ITだけでなく、経営やビジネスといった観点からの問題意識をもつことにもつながったのです。

高𫞎 新しい潮流にいち早く危機感をもち、会社全体での変革を推進できるというのは非常に素晴らしいことですね。DXにあたっては各プロジェクトが円滑に進むために、コーポレート側から、全社を横串にする共通要素としてITシステムなどを導入するイメージでしょうか?

長澤 それは一面的には正しいのですが、当社のようなプロジェクト型の会社では、システム導入の際に個々のプロジェクトに導入して試すことができるんです。ですから、自社のドキュメントシステムも全社一斉に導入しているわけではなく、最初はプロジェクトごとに採用して各プロジェクトで成功したら、その事例をもって横展開をしていく。それが、当社ではいちばん納得感があって成功しやすいシステム導入のフローとなっています。

高𫞎 DXを手がけるにあたって、ビジネス部門の個別事情を踏まえて推進していくのはすごく大事ですね。よくグループウェアやERPシステムを表面的に導入してDXは終わりと考える人がいますが、システムで情報を共有するチャネルやコミュニケーション、デザインや運用までを整備する必要があります。また、そのためには企業文化や個々の社員特性なども加味する必要がある。マニュアルにしたらいいわけでなく、絶対に人が介在しなければならない訳です。プロジェクト横断的に展開するにあたって、必要となるDX人材育成のための仕掛けづくりも行ったのでしょうか。

長澤 プラント建設では、多様で専門的なドキュメントが膨大にあります。当社からプラントに設置する機械をベンダーに発注する際には、顧客からの要求事項を完全に満たす必要があって、必要となる条件をベンダーに伝えて不具合がないようにしなければなりません。もしベンダーが納品した1つの機械に不備があれば、プロジェクト全体では損失が数百、数千倍にまで膨れ上がることもあり、最終的には私たちの責任になります。そうならないために要件を正確に伝える訳ですが、関係する全員が何百ページからなるドキュメントを完璧に把握するというのは現実的には不可能です。そのときに絶対に必要となるのが、重要なポイントを伝えることができるプロのエンジニアとプロジェクトマネージャーです。つまり技術の“語り部”です。当社にはエンジニアを含めてそういう人材がたくさんいるのです。

システム導入においても同様の手法をとっています。業務構想や運用周知が得意な人材に“語り部”となってもらうことで、DXを進めているのです。

高𫞎 個人の適性から少しストレッチした業務を割り当てることで、人は育っていきます。結果として、能力やモチベーションが伸びていき、生産性も高まったわけですね。

長澤 当社はエンジニアリング会社なので、プロジェクトのなかではいろいろなことが起こるけれど、最後には人と人同士が話し合って解決しなければ破滅的なことが起こってしまう、という考えがあります。ですから、携わる人を無視してトップダウンに物事を進めても良いことはないですし、個人を尊重する文化はあると思います。

また、私は自分が手がけたシステムを使ったエンドユーザーが喜ぶ姿を見ると、とても嬉しくなります。その喜びを、今DXを手がけているメンバーにも同様に味わってほしいと考えています。自分の思い入れがあるモノについて熱心に話して、その熱意を評価してもらえる喜びは、どんなエンジニアでも嬉しいものだと思います。そうした体験ができるよう彼らにプレゼンテーションの場を積極的に用意したりもしています。

高𫞎 「Exciting!!!」といったキーワード含め、非常に熱いものを感じました。これは東洋エンジニアリングならではの社風なのでしょうか。

長澤 そもそもプラントエンジニアは、国外の文化も何もかもが違う国でプラントという大きいものをつくりたいというような人間なので、熱い気質をもった人は多いと思いますね。

高𫞎則行 インサイトテクノロジー取締役 CDO

高𫞎則行 インサイトテクノロジー取締役 CDO(最高開発責任者)

「生産性6倍」を掲げたことが現場に火を付けた


高𫞎 DXにおける目標設定はどのようなかたちで設けていますか。

長澤 2025年までに「生産性6倍」(19年比)を目指すという目標を掲げました。「生産性6倍」は若手チームのアイデアで、こうしたわかりやすい目標を掲げるのは非常に重要でした。要するに「生産性6倍」というのは、「今までの労働集約的なエンジニアリングをなくして、クライアントと一緒に社会課題を解決するワクワクできるようなプロジェクトをやっていく、そのうえで労働時間を半分にして利益を倍にする」という今後の方向性を一つの言葉で表現したものなんです。「生産性6倍」というフレーズを掲げることで、会社の目指すものやそのロジックを浸透させていきました。

私自身、これまでKPIやROEといった指標を掲げてDXを手がけてきましたが、頭でっかちだったと反省する部分もあります。エンジニアの魂に火をつけるのはこういう言葉だったんだな、と。もちろん、「生産性6倍」だけだと抽象的なので、よりプロジェクトの現場に刺さるKPIを設けるなど、日々進化を続けています。

それでも、こういった指標を打ち出すことにこだわったことで、DXoTの進捗率も22年度末で32%(※東洋エンジニアリングの「統合報告書2023」17Pより)まで来ている状況です。

高𫞎 各プロジェクトで成功事例やディテールをつくって横展開する話とまさにつながっていますね。ある時期からいっせいに「DXoTだからこれをやれ!」と言われるのではなく、各プロジェクトでより生産性を高めるために、現場の温度感を共有しながらシステム導入から運用までをグラデーションに進めていく。その結果、気づいたら5〜10年後にはあらゆるシステムが代替されている。そこでは、DXによって素晴らしい業務改善の体験をしている人たちがたくさんいて、その人たちが語り部となって、さらに別のプロジェクトへと伝播していく。そうやって文化として確立されていることがイメージできました。

最後に、東洋エンジニアリングのDX戦略における今後の課題があれば教えてください。

長澤 現在は終了したプロジェクトからナレッジを集積して活用していますが、プロジェクト自体は長期にわたるものなので、そこで得たナレッジを実用する時期にはすでに時代遅れになっているということがあり得ます。であれば、現在進行系のプロジェクトで起こった問題が即座にナレッジとして抽出され、同時に動いているプロジェクトへのリスク予見や対策、あるいはビジネス的な意思決定に活用できるようにする必要があります。リアルタイムで起きている問題やその対策がデータとして提示されることで、クライアントとの交渉も合理的な判断としてスムーズになりますからね。プロジェクト横断型のデータ統合と、データから得たインサイトに基づいた意思決定につなげるところまでをいち早く進めていきたいです。

高橋 リアルタイム性が高く、セキュリティも担保された状態でインサイトだけを横に伝える仕組みを整備するというのは、まさに次のエキサイティングなチャレンジだと思います。近年、金融系企業などでは、リアルタイムでの意思決定のためのデータ活用基盤の需要は非常に増えています。一方で、まだ大多数の企業はDXの目標にデータ統合を据える段階にあります。エンジニアリング企業のリーディングカンパニーとして、リアルタイムでのデータ活用を見据えているのはとても心強いと感じました。

一口にDXといっても、ビジネスをどう変革していくのか、どこが将来のコアとなるのかは企業ごとに全く違っています。東洋エンジニアリングは、目指すべきビジネスモデルを見据えたうえで、扱うデータをすべてコンピュータが処理できるデータに変換にするという大きな幹を走らせています。さらに、若手や現場の人々の心を理解したうえでの最適解に取り組まれているのが非常に印象的でした。今日のお話には、日本がDXするにあたっての多くの示唆があると思いました。本日はありがとうございました。


高𫞎則行(たかはし・のりゆき)◎インサイトテクノロジー 取締役 CDO(最高開発責任者)。東京工業大学在学中にデジタルアーツに創業期メンバーとして参画、上場後15年間役員を務めながらi-FILTER(累計売上300億円超)の開発・販売、海外事業の開拓にも従事。2020年よりインサイトテクノロジーの製品開発本部長、23年より取締役CDO(最高開発責任者)を歴任し、すべての製品開発を主導。プロダクト戦略の刷新やチーム増強を通じて製品ラインナップを2倍に拡大。

長澤道夫(ながさわ・みちお)◎東洋エンジニアリング Global IT Officer。1990年、東洋エンジニアリング入社。経理部へ配属。コーポレート経理、海外プロジェクト経理・税務を担当後、ERP導入のためシステム部に転属。その後、ITコンサル会社へ出向。システム開発や内部統制プロジェクトのプロジェクトマネージャーを歴任。2012年から東洋エンジニアリングのIT部長職に就き、2021年より現職。


【インサイトテクノロジーについて】
1995年の創業時から一貫してデータベース技術を追究し、企業自らが良質なインサイトを得るためのデータ活用基盤「インサイト・インフラ」関連の製品をプロフェッショナルサービスとともに提供し、企業におけるデータの価値の最大化、データ利活用の統制、データガバナンスソリューションの導入に貢献している。同社が主催するデータ技術者向けカンファレンス「db tech showcase」には、世界中からデータ技術のエキスパートが講師として登壇し、毎年1,000名規模のエンジニアが参加する。

インサイトテクノロジー
https://www.insight-tec.com/

■Insight Governorについて
「Insight Governor」は、企業に散在しているデータを安全に統合・可視化し、迅速な意思決定を支援するためのDXインフラ整備ソリューションです。
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■Qlik Replicateについて
「Qlik Replicate」は、異種データベースだけでなく、メインフレーム、SAP、Salesforceなどのデータを分析基盤などへリアルタイムに連携するレプリケーションソフトウェアです 。
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