多文化主義を掲げ、多様性あふれる国として知られるオーストラリア。FIFA 女子ワールドカップ2023は、オーストラリアとニュージーランドの2カ国による初の共催大会となった。街には至るところにのぼりが立ち、街全体が大会を盛り上げる熱気に満ちていた。
観客動員の累計数は、これまでの記録を大きく塗り替え197万人超に。優勝国スペインのテレビ視聴者数は女子サッカー史上最高を記録するなど、各国でさまざまな最多視聴者数を記録した。
本大会の特徴は、選手や監督、審判員以外にも、チームスタッフや大会運営スタッフ、ボランティアスタッフにも多くの女性が関わったことだ。各会場を担当する大会メディアオフィサーも女性が増え、試合の準備や運営、公式会見の進行も担当。彼女たちの活躍も、今大会の象徴的なシーンになったといえる。
自らがロールモデルへ。小さな変化の重なりが、社会を変える
1991年の初開催以来、FIFA女子ワールドカップの協賛を続けているザ コカ・コーラ カンパニー(以下、コカ・コーラ社)は、2030年までに世界全体で女性管理職比率を50%に引き上げる目標を掲げている。コカ・コーラのASEAN and South Pacificで代表を務めるクラウディア・ロレンゾは、協賛を続ける理由を「ジェンダー平等は、私たちがサポートするべきことだから」と話す。
「女子ワールドカップを応援することで、すべての女性たち、これからを生きる子どもたちが、自分が創りたい未来を考えられる。そんな世界にしていきたいんです。それは結局のところ、性別にかかわらず誰もが自分の夢を信じることができるようになる」
約30年前にコカ・コーラに入社したブラジル出身のクラウディアは、「当時のブラジルでは、女性が指導的な立場に立つことを想像するのさえ難しかった」と話す。
「ブラジルを離れ、両親と離れて仕事をすることは私にとって壮大な旅でした。20年ほど前、初めてリーダーポジションを任されたのですが、当時、リーダシップ会議の部屋に入ると女性は私一人でした。女性のロールモデルが少なかったので、どう振る舞えばいいのだろうと途方に暮れたと同時に、私自身がリーダーとしてより多くの女性が活躍する文化を形成し代表する役割を担っていかなければいけない、と思ったのです。
その後、私はコカ・コーラ社内でラテン系女性として初めてのPresident(代表)になりました。このような変化は実際に起き始めています。そして私たちはこの旅を続けなければなりません。東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドのさまざまなバックグラウンドをもつ人々と仕事をするなかで、私は対話を続け、指導的地位にある女性の障壁を理解したいと考えています」
FIFA女子ワールドカップ2023の大会期間中、コカ・コーラ社は一日がかりのDEI Summitをオーストラリア・シドニーで開催した。世界中から集まったコカ・コーラのリーダー、そのパートナー、招待客を前に開会のスピーチを担当したクラウディアは、これからの社会をつくる一人ひとりが「情熱を持って行動を起こす必要性」を強調する。
「私自身、約30年女性リーダーとしてキャリアを歩んできました。ロールモデルとしてどのような役割を果たすべきか、また周りの方々がどのような役割を担うべきか、常に省みて考えるべき立場にあると思っています。情熱が大事であることはもちろん、目標を達成するためには、情熱と規律を組み合わせていかなければいけないと考えています。
世界を変えるためには、自分自身の目的を理解することから始める必要があります。個人の目的と社会の目的を見つめ直し、戦略を立てて実行に移せば、強力な力になる。“情熱と行動”は、もっとも力を発揮できる組み合わせだと信じています」と観客に語った。
大切なのは、違いを受け入れるオープンさ
DEI Summitは著名なアボリジニの教育者による挨拶から始まり、サウジアラビアのアクティビストManal Al-Sharifも登壇。Manalは「女性にも運転する権利を」と2011年に自ら運転する活動を始めたことで世界的に知られている。グローバルで多彩に活躍するスピーカーの顔ぶれは、まさにコカ・コーラのDE&Iの思想が反映されたものだった。個人のストーリーからコカ・コーラ社員の取り組み事例まで、幅広い切り口でダイバーシティについて考える機会となったDEI Summit。パネルディスカッションに登壇した、コカ・コーラGlobal Chief Diversity, Equity and Inclusion Officerのタメカ・ハーパーは、「ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンはビジネス上の必須事項だと考えている」と、コカ・コーラが推進するDE&I戦略について話す。
「私たちはダイバーシティにおけるグローバル・リーダーを目指しています。そのためには従業員のエンゲージメント向上に貢献し、エクイティを確保するインクルーシブな企業文化を育んでいくべきだと考えています。これらを推進していくための取り組みのひとつとして、従業員エンゲージメント調査に“インクルージョン”に関する具体的な質問を盛り込みました。これにより、従業員が職場でインクルージョンをどのように実感しているのか、より深く理解できるようになります。例えばエクイティに関しては、会社の方針や福利厚生を見直し、グローバル・スタンダードや最低基準を設け、それらをクリアすることを徹底しています」
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを叶えていくために、私たちにはどのような行動が必要なのだろう。大切なのは「違いに対するオープンさ」だとタメカは言う。
「一人ひとりに異なる経験があり、その違いを受け入れ、違いを理解しようとする姿勢が欠かせません。他人について学び、好奇心を抱くこと。他者の考えや話を不快に感じることがあっても、その素直な反応を受け入れ、その話から何が重要なのかを自分自身に問いかけることが非常に重要だと思っています」
議論ではなく行動で日本全体を変えていく
2022年、コカ・コーラ社における女性比率は世界全体で1.1%増加した。管理職に限らず、新入社員から役職者まで、すべての層で女性の割合が高まったのだ。日本コカ・コーラがいかにしてこの増加に貢献したのか、日本コカ・コーラ社長のホルヘ・ガルドゥニョは次のように話す。
「外部採用を強化したことも影響していますし、社内の若い人材の成長支援にも力を入れてきました。中には、リーダーに就くにはまだ十分に準備ができていないと思っているメンバーもいましたが、会社として意志をもち、リスクを承知のうえで成長をサポートするというコミットメントとともに機会を提供したことで、急速に成長し、才能が開花していくサクセスストーリーが多く生まれたのです」
単に数字を追うだけではなく、社内に「ジェンダーを超えて、エクイティやインクルージョンの文化を根付かせた」点で、その意義は大きいとホルヘは言う。
「コカ・コーラは、社会全体の健全な競争を引き出し、さまざまな産業にインスピレーションを与え、多くの業界が行動を起こすようにリードしていく存在でありたい。社会に変革を起こす、そんな役割を担っていきたいと考えています」
スペインの初優勝で幕を閉じたFIFA WOMEN’S WORLD CUP 2023。これまでにないほど女子サッカーの盛り上がりが感じられた大会となった。DE&Iの挑戦に終わりはない。私たちは今、取り組み続けることの大切さを突きつけられている。
Forbes JAPAN Web編集長谷本有香が振り返る
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