大盛況の中8月20日に幕を閉じたFIFA 女子ワールドカップ2023。同協会への協賛を続けるザ コカ・コーラ カンパニーは、開催期間中の8月18日にDEI Summitを開催した。Forbes JAPANのWeb編集長 谷本有香は開催地・シドニーへ赴き、熱を帯びた今大会とDEI Summitに密着。そこで谷本自身が体感したコカ・コーラというグローバル企業におけるDE&Iへの熱量と、そこから得た日本社会が変わるためのヒントをお届けする。前編「記録を塗り替えたFIFA 女子ワールドカップ2023協賛するコカ・コーラが掲げるDE&Iとは」はこちらから
コカ・コーラレッドに囲まれて過ごした、シドニーでの1週間。
今回の旅の目的は、日本コカ・コーラが応援をするFIFA Women's World Cup 2023への参加と、その期間中に開かれたDEI Summitの取材のためである。
そんな旅を通じ、改めて感じたのは、コカ・コーラは、単なる製品ではなく、ブランドであり、カルチャーそのものなのだということ。
なぜか。
思い至ったきっかけは、移動中や、ランチなどでご一緒させていただいた日本コカ・コーラの広報・渉外&サスティナビリティー推進本部 副社長の田中美代子氏の言葉だ。
田中氏はもともと、約15年にわたりヘルスケア業界で活躍されていた。そんな彼女に、日本コカ・コーラから声がかかった。「転職するつもりはない」と断った上で、複数回にわたり、コカ・コーラ社員たちと会話を重ねていった。そして、最終的に、田中氏はこんな思いに至ったという。
「こんなにも気持ちよく話せる、思い溢れるこの人たちと一緒に働いてみたい——」。
それが、キャリアチェンジのきっかけとなった。
カルチャーというものは、わかりやすく一つの現象として具現化するものではない。多面的で多層的で、けれど、どこを切ってもその企業のアイデンティティがにじみ出てくるような、そんな価値観だったり、行動規範だったりする。そして、その「文化」を媒介するのはいつのときも「人」でしかありえない。
今回、私がシドニーでインタビューをさせていただいたのが、そんなコカ・コーラのカルチャー・ポリネーターたちだ。
ASEAN & South Pacific Operating Unit 社長のクラウディア・ロレンゾ氏。そして、Global Chief Diversity, Equity and Inclusion Officerのタメカ・ハーパー氏。共に、女性リーダーである。
当然、この巨大グローバル企業をリードする方たちだ。仕事も圧倒的にでき、人からの信頼も厚いのであろう。
ただ、私が驚いたのは、そんな「凄い」リーダーとしての彼女たちの側面ではなかった。
「お互い本当に悩ましいわよね」と、率いる立場という身における女性同士の共感や、インタビューが終わろうとすると、「ちょっと、この女子会、楽しすぎるからもう少し続けない?」と言って見せたチャーミングな笑顔、そして、「とってもいいインタビューだったわ。ねえ、ハグしていい?」と、心も体も包み込んでくれた彼女たちの人としての温かさに対してである。
私自身も長年取材の経験があるが、こんなに家族のように受け入れられ、そして、仕事を超えて、繋がれたような感覚になれ、なおかつ、こんな女性リーダーのもとで働いてみたい、そんな気持ちにさせられたのは初めてだったと思う。そのような中で、DE&Iとは何たるかを私は突きつけられたような気がした。それは、お題目ではない。文化なのだとー。
今回の旅のテーマでもあるDE&I(Diversity, Equity, & Inclusion)。最近は、そこにBelongingという言葉をつけて語られることも多くなった。
Diversity とEquity。そのふたつは概念だ。多様性を認知し、正当、公正さをもって推進する。しかし、そこにInclusionというアクションが加わる。多様な人や考えが受け入れられ、公正公平に権利が与えられ、包括されていく。それが実現した結果、Belongingという帰属意識が生まれ、この仲間たちとともに、同じ方向を向き、その企業の北極星を目指したいという強い思いが生まれる。
そのDE&I、さらにBelongingを支え、実現させてくれるのは、やはり人の力、とりわけ、トップの力が大きい。そして、DE&Iの企業文化は、こうやってトップの人々が体現し続け、コミュニケーションを絶えず行い、組織に浸透させていていくものなのだろう。
シドニーの地で、「Dadirri(ダディリ)」というアボリジニの言葉があることを聞いた。
「心の内で、深く耳を傾けること」だという。
自身に向き合い、内なる声に耳を傾けるーー。まるで瞑想のようなその行為は、ノイズばかりが増幅されるこの世の中において、自らの核なるところへアクセスする大切なアクションだ。
恐らく、企業も同じである。
昨今、パーパス経営という言葉が注目され、なぜ自分たちが存在しているのか、また、自身たちの強みをもとに、いかに社会へ貢献していくことができるのか、世間からも時代からも問われ続けている。
そんな中において、ただただ先代から受け継がれてきた「理念」という言葉を表面的になぞるだけでなく、変わり続ける時代の中で、動かぬ「コア」に耳を傾け、アクセスする。
その核なるところの主語は、いつも「私」であるはずだ。
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