配属された部署で上司から与えられた仕事をこなし、ライフステージの変化に応じてフルタイム勤務の職場を退職し、時短・パートタイム・派遣勤務など条件に沿った職場・働き方にシフトせざるを得ない。そんな旧態依然とした働き方は、ボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)ではする必要がない。
中国・清華大学を経て、東京工業大学大学院及び清華大学大学院を卒業後、大手総合コンサルティングファームに入社。その後BCGに転職したシニアアソシエイト・陳 楊子(チェン ヤンズ)は、自身が志向するキャリアの方向性に合うプロジェクトを毎回自らの手で選んでいると言う。
3児の母でもあるプロジェクトリーダー・伊原彩乃は、ライフステージに幾度も大きな変化があったにもかかわらず、BCGで活躍し続けている。
新卒で入社してフルタイムでコンサルティングワークに没頭した20代、結婚・出産、育児休暇、職種を変え時短勤務での復職、夫の海外赴任に同行し退職も経験した30代。その後BCGのコンサルタントに復職し、業務内容をフレキシブルに調整しながら活躍し、現在40代を迎えている。
そうしたBCGだからこそ提供可能なフレキシブルな働き方について、上記2名の経験を聞いた。
グローバル人材として成長していくためのプロジェクトを選ぶ
中国で生まれ育ち、清華大学を卒業後、東京工業大学大学院と清華大学大学院化学・生命理工学を学んだ陳。学業を続けるなかでエンジニアとしてできることの限界を感じ、より世界にインパクトが与えられると考えビジネス道を選んだ。そして日中のビジネスの違いを知り、世界各国のビジネスの違いに興味が湧いたという。「グローバルなビジネスの現場で活躍できる人材になりたい」と考えるようになった彼女はグローバル進出の第一歩として中国企業ではなく、日本の大手総合コンサルティングファームに飛び込んだ。
「そのファームでは、日系企業の海外展開や広告戦略など幅広い案件に携わりました。コンサルティング領域全般を手がけるなかで、戦略部分についてより深く関わりたいと感じ、転職を決意しました。より自らの語学力を生かし、国内外の関係当事者をつなげ、戦略を構築できる人物になりたかったからです。もともと興味のあった消費財分野に挑戦できそうな点もBCGへ入社する理由のひとつでした」
自身が希望する仕事を選ぶ、望む業界での仕事ができるとは、にわかには信じがたいが、なぜそのようなことが可能なのだろうか。
「BCGの社内には、新しく開始するプロジェクトがどの分野のどのような仕事であるか確認できるシステムがあります。加えてそのプロジェクトに必要なスキル、働き方に至るまで社員であれば誰でもその一覧を見ることができます。興味があれば、そのプロジェクトリーダーに参加希望を申し出ることも可能です。
もちろん希望が毎回通るとは限りませんが、再応募も可能です。また他業種から転職した人でも、スタッフィングチームのサポートにより、OJTの形でさまざまな業種のプロジェクトに参加することも可能です。私も入社後半年間くらいまで、サポートしていただきました」
それでもなお、新たな仕事への挑戦に、プレッシャーは感じないのだろうか。
「もちろん不安です。しかし入社すると、個別にキャリアアドバイザーの担当が付く制度があり、相談することができます。多いときで1~2週間に1回キャリアアドバイザーとの面談があり、その都度成長を感じることができます。
他にも、BCGがグローバルで活用しているオンライン・ラーニングシステムが充実しておりとても助かっています。実際に現在進行中のプロジェクトで、データ分析ソフトウェアを新たに2つ使用する必要がありましたが、このシステムを使い、無事にマスターすることができました」
そうして陳は、日々、自身のスキルの向上を感じているという。実際の業務は、どのように進んでいるのだろうか。
「前回参加したプロジェクトでは、BCGイタリア、中国、韓国オフィスのパートナーに話を伺い、より深い知見を得ることができました。BCGのグローバルネットワークを活用し、それを迅速にプロジェクトに反映できた経験はとても刺激的でやりがいを感じるものでした」
さらに彼女は、BCGの魅力を象徴するエピソードも教えてくれた。
「クライアントの考える施策にリスクがあると思えた場面がありました。上司に『本当に止めるべきだと思うなら、気になる内容を織り込んだ資料を作成して説得するべき』と指南してもらったことです。つまりBCGはクライアントの意見をすべてそのまま受け入れるわけではなく、正しいことのためにNoと言えるコンサルティングファームです。そのスタンスに改めてBCGで働いていることに誇りをもちました」
陳は、将来のキャリアについてこう語ってくれた。
「BCGには『One BCG, Many Paths』と呼ぶコンセプトで、多様なキャリアパスが用意されています。制度として、国内外の企業や外部組織(官庁・NPO等)への出向や、留学ができます。私は今後その制度を利用することを念頭に入れながら、さらにグローバルな人材になるためのスキルを高めていきたいと考えています」
休職、時短、退職を経てなお、活躍し続けられるBCG
伊原のキャリアパスからは、自身のライフステージの変化に合わせた働き方を選択できるBCGの懐の広さがよくわかる。「いま私は40代を迎えたのですが、新卒からいままでほとんどのライフステージを、BCGの仕事とともに経験してきました」
伊原はライフステージの変化を、年代ごとの3つに分けて説明する。
「まずは20代。BCGに新卒アソシエイトとして入社しましたが、はじめてのコンサルティングの仕事は楽しくて仕方ありませんでした。プロジェクトに日々没頭し、しばらくしてからはそれに加えて新人コンサルタントのトレーニングの体系化にも関わり、充実した日々を送っていました」
同様にプライベートにおいても充実した生活を送っていたが、結婚・出産を経て、心境の変化もあったという。
「母が専業主婦で、家に帰ったときにいつも居て、親身に話を聞いてくれる時間が、私の楽しみでした。そのため、そうした時間をわが子にも用意したいと思う気持ちがあって、仕事を続けることそのものに悩みました」
その結果、30代の伊原は「仕事は続けつつも軸足は子育てに置く」決心をする。育休中の子どもとの日々の合間に、会社に相談してみたという。
「思い切って働き方を変えてみようと決意しました。もともとフレキシビリティーの高い職場で、そうした変化にも寛容だったので『戻りたくなったら戻ればいい』と考えていました。昭和のビジネスマンだった父は、私のそうした考えに心底驚いていましたけれど。当時はまだ制度もないなかでしたが、会社はごく自然に私の考え方を受け入れて、どうしたら私の思いを実現できるかを一緒に真剣に考えてくれました」
復職時は、子どもとの時間を考慮して時短勤務にした。当時もいまも、出産後もコンサルティングの仕事を続ける人が大半のなか、担当する職務内容は以前プロジェクトと兼務していた新人のトレーニングのみという特殊な形での復帰だった。
「上司との話し合いで『新人トレーニングの仕事だけを担当するくらい、仕事の量を絞れるのが理想ですが』と話したら、『そうすればいいじゃない』と即答してくれました。コンサルティングチームからビジネスサポートチームに転籍となり、時短勤務の毎日が始まりました」
その後2人目の子どもが誕生したタイミングで、今度はボードメンバーの上司に請われて、時短勤務のまま、マーケティング・広報の仕事を行うようになった。
「BCGには、クライアント以外の方にも広く知っていただくことで日本の競争力強化に貢献できる知見がたくさんあります。そういったBCGにあるさまざまな知見を、背景も理解したうえで整理し、時に調査や分析も行い、広く発信するというものでした。当時、これはコンサルタントの経験がある人しかできないということで、私に声をかけてもらいました」
そうした転籍、仕事内容の変化に対して、精神的な動揺はなかったのだろうか。彼女は微笑みながら答える。
「もともとコンサルティングのプロジェクト自体が、数カ月から1年ぐらいのスパンですから、面白そうな仕事に次々と移っていくこと自体に、まったく抵抗感はありませんでした。むしろワクワク感のほうが強かったですね。ビジネスサポートチームへの転籍を俗に言う『マミートラック』と捉えられることもありますが、私自身も周りの人もそういった感覚はまったくありませんでした。コンサルタントのままではできなかった仕事を、時短勤務のなかでおもいっきり経験させてもらいました」
そうしたなか、夫の海外赴任が決定し、彼女は当たり前のように、退職して3人の子どもと共に帯同することを決意したという。ここで一旦、伊原のBCGでのキャリアは中断した。
「そのときもやはり『戻りたくなったら戻ればいい』という“休職”のような感覚でした。赴任先では専業主婦として3年間過ごしました。住んだ国は気候変動による被害や損失を受け始めていると考えられる状況で、そういった被害や政府の発信、人々の考えに触れる日々でした。また、パパ友、ママ友に大使館や国際的な組織の関係者が多かったこともあり、普段の会話のなかでも、グローバルかつ政治的にものを考えることが当たり前になりました。気候変動がどのように政治やビジネスの場でとらえられ、人々はどのような考えをもち、そのなかで日本企業には何ができるのかという視点が、自分の中に加わったのです」
そうした経験を、BCGのかつての上司との雑談のなかで話したところ、「コンサルタントに戻ってこないか。官公庁や気候変動のテーマはどうだろう」と提案された。子どもたちも大きくなり、いわゆる「子育てが落ち着いたら」という時期にも重なったという。夫にも背中を押され、帰国後、再び伊原はBCGに復職する。今度は、パブリックセクター(官公庁、大学法人、学校法人など)に対して、気候変動やサステナビリティ領域を専門にコンサルティングを行う仕事だ。
まさに激動のライフステージの変化を過ごしてきたが、本人はそこまで大きな変化だったとは考えてはいなかったと、来し方を振り返る。
「コンサルティング、人材トレーニング、マーケティング・広報、サステナビリティと、やること自体は変わったのですが、そのベースとしてやはり20代で身につけた『コンサルティングの頭の使い方』を常にしていました。そのうえで興味深く感じる仕事をしてきただけなのです」
しかしこうしたさまざまな経験値の組み合わせが、彼女を代えがたい人材に育て上げた。このキャリアは、BCGだからこそ育ったものなのではないだろうか。
「BCGはずっと、私自身がプライベートでどうありたいかという考えを、徹底的に尊重し続けてくれました。そのうえで私がどのような形で価値を出せるかを、いつも相談に乗ってくれるのです。私はこのありがたい環境のなかで、最大限の価値を生み出すことに注力するのみです。その積み重ねをいつか振り返ったときに、いま、感じているのと同じように、『あのときよりも成長できた』と感じることができるではないでしょうか」
プロフィール:
伊原彩乃(いはら・あやの)◎東京大学工学部卒業。2003年BCGに新卒入社。出産により休職。復職後はマーケティングに従事。夫の海外赴任で退職。帰国後にBCGに再入社。BCGパブリック・セクターグループ、気候変動・サステナビリティグループのコアメンバー。プライベートでは3児の母。
陳 楊子(チェン・ヤンズ)◎清華大学卒。東京工業大学大学院、清華大学大学院修士卒業。大手総合コンサルティングファームを経て、2021年にBCGに入社。消費財領域等のグローバルなプロジェクトに携わる。