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2023.03.20

伝統とテクノロジーが交差するグローバルシティ〜シンガポール人がスタートアップビザを利用して京都で起業したわけ

京都には、外国人の起業促進のためのビザ制度「スタートアップビザ」がある。運営するのは京都府、京都市、日本貿易振興機構京都貿易情報センター(以下JETRO京都)の3者だ。京都府商工労働観光部経済交流課の澤田美香にその狙いについて話を聞くとともに、同ビザを利用して起業した「KOUad(コウエド)」CEOのオン・リンに京都の魅力について話を聞いた。


外国人の起業促進のためのビザ制度「スタートアップビザ」は、京都が世界市場で活躍できる企業の創出を目指すスタートアップ・エコシステム拠点都市として、府内の産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが狙いだ。京都府商工労働観光部経済交流課京都海外ビジネスセンターの澤田美香が説明する。

※スタートアップビザについてはこちらの記事も参照

「社会構造が激変するなかで京都の産業が持続的に成長していくためには、既存の企業さんの成長を支援していくことは当然ですが、それだけでは不十分です。新しい発想をもつ企業も育てていかなければなりません。社会課題を解決するような技術革新や新しい産業を創出するには、国内だけでなく、国外から人材を引き込むことが必要です。京都はスピード感がまだまだ不足しているので、外国人の熱量を取り込むことで、いい影響が得られると期待しています」

澤田美香 京都府商工労働観光部経済交流課京都海外ビジネスセンター

澤田美香 京都府商工労働観光部経済交流課京都海外ビジネスセンター


国からの認定を受け、京都がスタートビザ制度を開始してから3年が経過し、外国人の起業促進は次のフェーズに進もうとしている。澤田が続ける。

「京都産業の世界的な競争力を強め、雇用の拡大や地域経済への循環に資する分野として、「ものづくり」、AIやIoTなどの「情報通信」、「環境・エネルギー」、「ライフサイエンス」、「ソーシャルビジネス」、文化やアートなどの「コンテンツ」、「農林水産」、「京の食文化」、「観光」を優先事業領域としています。今後、より一層、外国人の方たちが京都で起業したいという魅力を高めるため、テーマ性のある地域イメージを内外に発信する必要があると考えています。

例えばITの分野で起業する場合、海外ではシリコンバレー、国内だと渋谷が候補に挙がりますよね。京都もそうしたテーマ性のある地域のイメージをもっと内外に発信していく必要があるのではないかと考えています。京都府では、けいはんな地域でのフードテック産業、太秦映画村の辺りではクロスメディア産業といったように、テーマ性をもった地域開発に府内各地で取り組むこととしており、地域の特性に合った誘致活動として海外への情報発信を強化していきたいです」

これらの地域産業において、外国人起業家との連携やオープンイノベーションを促進することで、新たな商品やビジネスモデルの開発を促し、新しい価値を生み出そうというわけだ。

「京都の既存の企業さんとも協業して地域経済の循環や貢献を促し、やがてここから世界に進出していけるようなグローバルスタートアップやユニコーンが誕生することを目指しています」

スタートアップビザに対して、これまで250人以上の外国人から相談や問い合わせがあり、今年2月時点で17人がビザを取得、そのうち6人が実際に京都府において起業した。その1人が「KOUad(コウエド)」を創業したオン・リンだ。

京都の伝統工芸に建築素材としての可能性を見出す


オン・リンは、もともとシンガポールで、建築素材やインテリアなどを提供する企業を15年以上経営していた。その事業を拡大させるためにオンが選んだ地が京都だった。

 「京都はスモールシティですが、工芸品など伝統的な産業がものすごく多く存在する地域です。文化的に豊かな歴史があるので、自分が求めているものをすぐに見つけ出すことができるし、アクセスもしやすい。それが京都の魅力のひとつです」

商材になりそうなリソースが充実しているため、オンは京都での第二の起業を決意したのだという。

「私は、ヨーロッパ向けの建築デザインに使えるハイエンドマテリアルを探していました。大切にしているのは、その素材が『ハンドメイド』であることです。京都は西陣織から陶器までクラフトインダストリーがとても盛んで、そうした素材を探すのにベストフィットだと思ったのです」

ただ日本の素材をそのまま海外に販売するのではなく、市場に合わせた形で提供する。オンがこだわるのは“共創”だ。

「日本の職人と海外の建築デザイナーとの掛け合わせによるオープンイノベーションによって、海外で受け入れられる新たな価値が生まれます。例えば畳は、日本では床にしかほとんど使われないと思いますが、現地の建築デザイナーと話をしていると、壁の素材として利用したいという意見がありました。そのように素材に新たな価値を与え、現地のニーズに合わせて素材を提供しているのです」

「KOUad(コウエド)」を創業したオン・リン。京都の伝統工芸や素材を取り入れた建築素材やインテリアなどを取り扱っている。

「KOUad(コウエド)」を創業したオン・リン。京都の伝統工芸や素材を取り入れた建築素材やインテリアなどを取り扱っている。


コラボレーションによってサステナブルを世界に訴求


外国人が異国の地で起業するには、困難なこともある。オンも例外ではなかった。

「言葉の壁もありましたが、法人の設立から銀行口座の開設、税務、社労士関連、法律のことなどやらなければならないことが山ほどあり大変でした。でも、JETRO京都さんのサポートのおかげで法人の設立はスムーズにできました。JETRO京都さんに英語を話せる人がいたことがありがたかったです」

職人の開拓についても、一筋縄ではいかないことがある。なかには保守的な人もいるからだ。

「職人さんによっては、接触を断られたり、連絡がつかなかったりすることもあります。そういうときは橋渡しをしてくれる人を探します。日本では紹介や信頼が大事であり、関係構築が重要なカギを握るということを学びました。JETRO京都のような機関など、つないでくれる人なしにはなかなか前に進めません」

オンは職人が集まる業界団体などにも顔を出し、積極的に関係構築を図っている。こうして徐々に日本の商習慣に慣れていったオンは、京都での日々に刺激を受けている。

「京都にはたくさんの高品質でユニークな商材があり、国際的に評価されているものも多いですが、お話をうかがうと、評価されている理由がよくわかります。私には、これらの商材が海外のマーケットに結びついていく予感があります。また職人さんたちの間にも、新しいアイデアやマーケットを受け入れる土壌があると感じています。そうした土壌があるからこそ、私自身もここに根を張ってビジネスを続けていきたいと思いますし、そうしたポテンシャルのある京都と世界のマーケットとの架け橋になりたいのです」

オンは現在、陶磁器作家の松本治幸や金工の大山求、染め師の中島健のなどのアーティストや職人たちと提携をしている。

京都の伝統工芸は単なる伝統ではなく、いまの時代にもマッチしているとオンは強く感じている。

「京都の伝統工芸は、自然の素材を生かすという意味ではサステナブルですし、機能性も備わっています。それらを分解して再構築する。どうしたら海外向けにフィットするのかというところも含め、職人さんと一緒に考えるというプロセスにワクワクしています。

シンガポールでも取り組んできたことですが、サステナビリティや自然に配慮した商材を、ヨーロッパを含めた世界に広げていきたいのです。建築業界に限らず幅広い業界にその理念を受け入れてもらうために、アジアでコラボレーションを増やしていきたいという思いをもっていました。その点からしても、この京都はピッタリだったのです」

なぜ京都が「ピッタリ」なのか。京都には伝統工芸だけでなく、最先端のテクノロジーをもった企業も多く存在する。それらの企業との協業を期待できるからだ。

「京セラやオムロン、任天堂といった大企業と伝統工芸を結びつけた取り組みはすでに行われているかもしれませんが、もっとサステナビリティを強調するべきですし、それが広く海外で認知されるべきです。一般の消費者に向けて、そういう啓蒙活動も世界でできたらいいと思っています。異質なものと出会うことで、新たな価値は生まれます。ジョイントプロジェクトを推進することで、京都の伝統工芸が新しい価値をもって世界に広まればいいと考えています」

 


KOUadは、日本の工芸品で新しいライフスタイルを提案している。

KOUadは、日本の工芸品で新しいライフスタイルを提案している。

京都には外国人が起業しやすい環境が整っている


行政もこうした協業を促すための取り組みを強化している。前出の澤田が紹介する。

「ビザを取得し、ビジネスをはじめたら終わりではなく、そこからからが本当の勝負なので、京都のさまざまな企業さんとのマッチングを促したり、コミュニケーションを図るための交流会を開いたりといった仕掛けを、私たちがどんどんやっていきます。起業家のニーズに寄り添ったサポートを今後も続け、ビジネスが成長し、京都に貢献してもらえるようにしたいのです」

まさに伴走型支援であり、京都には、外国人が起業しやすい環境が整っている。

「京都のスタートアップビザは基本的に、相談から申請書の提出に至るまで、すべて英語で行うことが可能です。全国的にも非常に珍しいのではないでしょうか。言葉の壁が比較的少ないことも、京都の強みのひとつだと自負しています」(澤田)

外国人起業家に寄り添い、その熱意を昇華させることで、京都は産業界に化学反応を起こそうとしている。


オン・リン◎KOUad CEO。シンガポール出身。同国で不動産業界や建築業界に携わり、建築素材やインテリアなどを提供する企業を15年以上に渡って経営。2022年、京都でKOUadを設立し現職。

Promoted by ジェトロ京都 / text by Fumihiko Ohashi / edit by Akio Takashiro

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