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2023.02.27 11:00

多様な個性が活躍する未来を描く 発達障害児への持続可能な支援ビジネス

KXホールディングス 代表取締役社長 寄神拓磨

バイアウト投資を通して投資先企業の価値向上と永続的な成長を支援するクレアシオン・キャピタルが「日本の宝」と評する企業を紹介する連載企画。今回は、社会課題とされている「発達障害や精神障害による生きづらさ」を軽減するさまざまな事業を推進するKXホールディングスの成長性に迫る。


2022年2月に立ち上がったKXホールディングスには揺るぎないミッションがある。「ライフステージを通じた切れ目のない持続可能な支援を」というセンテンスに設立の趣意、すなわち社会に対する思いと使命感が凝縮されている。「こぱんはうすさくら」には同年4月、「ヴィスト」、「西日本自立支援協会」、「ハンズ」には9月に資本参加を果たした。現在、これら4つの事業会社により、主に発達障害を抱えて生きる未就学児から成人までにサービスを届けている。

支援の不足と不在に立ち向かう事業

「文部科学省が22年12月13日に発表した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」では、小中学生の8.8%に学習面または行動面で著しい困難を示す発達障害の可能性があるとされています。35人学級で3人が読み書き・計算・対人関係などに困難を抱えながら生活していることになるのです。これらのお子さんへのサポートは、学校現場を超えて取り組まなければならない全社会的な課題です」

KXホールディングスの存在理由に直結する社会的背景から教えてくれたのは、代表取締役社長の寄神拓磨だ。05年4月施行の発達障害者支援法により、自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害に対する関心や認知が広がり、支援の必要性についても認識され始めた。

しかしながら、前述の調査で発達障害の可能性があると指摘された小中学生のうち、教室内の座席配置や本人の習熟度に応じた課題への取り組みなど「個別の配慮・支援」を受けていない児童生徒は43.2%にもなるという。発達障害により、生きづらさを抱えている子どもは少なからずいる。彼ら・彼女らは、支援の不足あるいは不在にも直面しなければならないのか。

「学校の中だけでなく、外からも支援の不足と不在を埋めていく手立てが必要です。KXホールディングスにグループインしているこぱんはうすさくらは、『児童発達支援(0歳児から小学校入学まで)』と『放課後等デイサービス(小学生から高校生まで。引き続きサービスを受けなければ、その福祉を損なう恐れがある場合、満20歳に達するまで利用可能)』を切れ目なく提供する体制を整えています。どちらかのみで運営している施設が多いなか、ふたつの通所施設を併設しているのです。

児童発達支援から放課後等デイサービスへの移行がワンストップで行えるので、環境変化に敏感なお子さんの負担を軽減しながら、個々人に適した支援環境を持続可能にしています」



児童発達支援や放課後等デイサービスの運営においては、全国共通の枠組みとして障害児への支援の基本的事項や職員の専門性の確保などを定めたガイドラインが策定されている。各事業所はガイドラインの内容を踏まえつつ、各事業所の実情や個々の子どもの状況に応じて不断に創意工夫を図り、提供する支援の質の向上に努めなければならない。したがって、選ばれる事業所と選ばれない事業所が生まれる。

「KXホールディングスにジョインしている4つの事業会社のうち、こぱんはうすさくらを除いた3社は就労移行支援事業で創業しています。就労移行支援とは発達障害やうつなどの気分障害など何らかの障害のある成人向けのサービスで、就職活動から職場定着までを個別にサポートするものです。

西日本自立支援協会(福岡県)やハンズ(兵庫県、大阪府)には、地域の企業や医療機関等の関係機関との強固なネットワークおよび、それに裏打ちされた業界平均を上回る就職率という強みがあります。2012年に北陸で創業したヴィストは就労移行支援から始まり、児童発達や放課後等デイサービスへと事業分野を拡大しました。中高生までのお子さん向けのサービスも展開することで、グループミッションにある「ライフステージを通じた切れ目のない持続可能な支援を」を万全にしています。

また、お子さんの発達段階に合わせて、将来の就労時に必要なスキルが自然と身につく体験型プログラムも展開しています。これは、就労移行支援を祖業とするヴィストならではの強みです」

生きづらさや働きづらさのない未来へ

右はクレアシオン・キャピタル 投資チーム アソシエイト 金井孝貴。

右はクレアシオン・キャピタル 投資チーム アソシエイト 金井孝貴。


KXホールディングスの株主であるクレアシオン・キャピタル投資チームに属し、投資判断からグループ経営管理体制の整備などにまであたってきた金井孝貴がさらに説明を重ねる。

「ヴィストには北陸地方において障害者雇用の機会を拡大させてきた実績があります。職員が地場の企業に出向き、それぞれに特有の課題や困りごとをヒアリングしたうえで、障害者の仕事を開発し、企業と障害者のマッチングを行ってきました。そうしたノウハウの積み重ねにおいても同業他社に対して大きなアドバンテージを有しています。

こぱんはうすさくらは15年に事業をスタートし、独自のフランチャイズ方式により、23年2月現在で約160の事業所を全国にて展開しています。その顕著な成長の連続性は、こぱんはうすさくらの事業が社会から強く求められている証左と言えるでしょう。発達に心配のあるお子さんや障害のあるお子さん、そのご家族にとっては、できる限り身近な場所で専門性の高い療育を受け続けられるのがベストです。こぱんはうすさくらの成長は、お父さまやお母さまが安心して働くことにもつながっていきます」

最後に経営のかじ取りを担う寄神が今後の方針と決意を語ってくれた。

「これからは、私たちのグループならではのシナジーを発揮していきたいと考えています。こぱんはうすさくらの放課後等デイサービスにヴィストによる早期キャリア教育のエッセンスを取り入れることも、西日本自立支援協会やハンズの就労移行支援にヴィストの機械的・画一的ではない創造的マッチングのノウハウを組み込むことも可能です。

今後はメタバースなどのテクノロジーが発展することにより、発達障害のある人々の生き方や働き方も変わってくるだろうと考えています。障害者の可能性、そして私たちの可能性は無限なのです。誰もが生きづらさや働きづらさに悩まされることなく、自分らしく輝ける未来を目指して、KXホールディングスは着実な歩みを継続していきます」

投資ファンドの目線

KXホールディングスにグループインしているこぱんはうすさくら、西日本自立支援協会、ハンズ、ヴィストの4社は、それぞれに独自の強みがあります。これからは各社の強みをグループ全体で共有することにより、1と1の組み合わせが3にも4にもなっていくと確信しています。クレアシオン・キャピタルは、これまでに福祉業界(保育園)や教育業界(学習塾)の事業への投資を実行した経験があります。そこで積み上げてきた知見を生かしながら、さらなる成長を実現するためのディスカッションに参加するなど、ビジネス上の論点の整理や実施すべき施策の立案についてもKXホールディングスに伴走しています。


▶︎クレアシオン・キャピタル WEBメディア「Go Beyond_」



よりがみ・たくま◎1973年生まれ。98年に立命館大学経済学部を卒業。高齢者介護を手がける大手事業会社にて取締役事業推進本部長を務め、暗黙知を形式知に変えて仕組み化するといった数々の施策により、社会課題解決とビジネス躍進の両面において成果を上げてきた。2022年7月、KXホールディングスの代表取締役社長に就任。



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