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2022.04.08

理不尽な世界で理にかなった投資をするということ

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とはいえ、市場を揺るがすようなマクロ経済ニュースの場合、最も重要なのは、数字そのものに注目するのではなく、その数字に織り込まれた「期待」と、市場がどう「反応」するかを理解することです。ある経済報告が市場に及ぼす影響について考える際、心に留めておくべき3つの重要なポイントがあります。

第1に、全ての指標が同じ前提でまとめられたわけではないこと。
第2に、ニュースは額面通りに受け取るべきではないこと。
第3に、何よりも重要なのは背景にある状況を理解すること。

経済データに対してよくまぎらわしい反応がみられますが、そうした反応をより正確に理解するには、以下の3点が手がかりになります。
・悪いニュースが、じつはよいニュースのこともある
・第一印象は、必ずしも不変ではない
・本当の意味で市場が動くのは、経済指標や決算報告の結果ではなく、予測と開きがあった場合のみ

資産運用は、科学というよりもアート(芸術)です。より大きな視野で見た場合、市場の反応をみきわめる行為をゲームに例えるなら、チェッカーよりもチェスに近い。勝負の局面は常に変化します。チェスでは、何手も先まで読んだうえで駒を進めますが、それは金融市場でも同様です。

市場参加者の先入観が市場価格だけでなく、市場価格を決めるとされるいわゆるファンダメンタルズにまで影響を及ぼすには、いくつかのきっかけや条件が必要になります。新聞やリサーチ・レポートで目にするようなファンダメンタルズは通常、役に立ちません。市場価格にすでに織り込み済みだからです。ただし、他の人よりも先に何かに気づいた場合には、きわめて貴重な情報が手に入った可能性があります。

投資に関しては、アルバート・アインシュタインの今も色あせない名言である「想像には、知識の100倍の力がある」がそのまま当てはまります。頭が柔らかくなければ、優れた投資家とはいえません。何事にも偏見をもたない人がいれば、その人は優れた投資家や投資アドバイザーになる素質を備えた人です。

市場は報道に対して、正しい心理的「トーン」やセンチメントを反映する形で推移すべきです。専門的な分析は、投資家にとって貴重な情報となりますが、ファンダメンタルズは投資家にさらに貴重な情報をもたらします。ファンダメンタルズを分析すると、想定と実態の間のいわゆる「ずれ」が明らかになるからです。このように、投資にあたっては常に偏見をもたず、柔軟な思考でいる必要があるのです。

秩序と混とんのはざまで取引をするにしても、自身の投資スタイルを維持しましょう。過去は変えられませんが、分析することは容易です。一方、未来は流動的で不確かです。ですから、不確実な状況の中で可能性をみきわめたうえで判断することが求められるのです。


ライナー・マイケル・プライス/Rainer Michael Preiss◎東南アジアや中東の金融ハブで25年近い投資顧問の経験をもつポートフォリオ・アドバイザー。中国人民銀行(PBOC)の大学院で講義やコース設計を行うほか、シンガポールの南洋理工大学(NTU-SBF)アフリカ研究センターの研究員を務める。米CNBCやBloomberg TVへの出演経験があり、Forbes Asia、Forbes Kazakhstanのコラムニストとしても活躍中。

文=ライナー・マイケル・プライス

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