Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2022.04.14

SASと東芝が示すDX導入の核心──アナリティクスとプラットフォーム

VUCA(不確実性)の時代の企業変革を、データ解析/予測の力で変革をサポートするSAS Institute Japanと、東芝の最高デジタル責任者が語った、「いま企業が向かうべき幸福なDXのあり方」とは。


SAS Institute Japan(以下、SAS)は、とかく課題の生まれやすいDX推進にまつわる知見を得てもらうために、さまざまな業界のIT・デジタル・DX推進担当者に向けたセミナーを開催している。東芝の執行役上席常務 最高デジタル責任者である島田太郎(2022年3月1日より東芝 代表執行役社長 CEO)が同社のモデルを披露した回をレポートする。

Analyticsを通じてはじめて、DXは奏功する



安海栄幸|SAS Institute Japanソリューション統括本部 コンシューマーインダストリーソリューショングループ(兼)運輸・社会サービスインダストリーソリューショングループ部長

オープニングはSAS Institute Japan 執行役員 本部長 ソリューション統括本部兼日本・韓国ソリューション統括である森秀之による挨拶からスタート。次にSAS Institute Japanソリューション統括本部 コンシューマーインダストリーソリューショングループ(兼)運輸・社会サービスインダストリーソリューショングループ部長安海栄幸(以下、安海)による講演「Analyticsが導くDXの奏功」が始まった。

安海は、各業界の経営管理などの業務効率化・高度化やデータマネジメント・ガバナンス、AI・アナリティクス基盤の構築・導入に向けたソリューション提案を長年行ってきた人物である。そこで彼はまず、DX推進の現状に言及した。

「いま起こっているのは、クラウド・シフトです。オンプレミスからパブリッククラウドへの移行が急速に進んでおり、2021年半ばまでには、企業データの50%以上が移行すると予測されています」

ベンダー依存に陥りにくいクラウド運用、さらに93%の企業が、ひとつのクラウドに囚われないマルチクラウド戦略を採用しているのだという。ただ、DXに成功しているとされる企業においても、課題はあるようだ。

「一貫したアナリティクス環境、AI開発戦略は多くの企業の悩みの種となっています。企業のIT 担当者は、アナリティクス/AI 採用の加速、投資を抑えながらの価値の最大化、クラウドベースのアナリティクス導入に積極的ですが、スムーズに進まないという声をよく聞きます」

安海はそれに対する回答として「クラウドですべての問題が解決するわけではない」と前置きしながらも、DX推進の勘所として次の4つを示した。

①スマートなクラウド移行マルチクラウドの検討。モダナイゼーションを含む。
②ModelOpsプロセスの検証……開発・検証・テスト・業務実装という一連のモデル工程の総合的なアプローチ。ユースケースの定義を含む。
③データサイエンスの民主化推進……IT担当者のみが活用できるのではなく、組織内の人間が誰でも使えるようにする。分析結果を自然言語でユーザーに説明できるなど。
④ガバナンスの適用……今後ますます厳しくなってくるであろう個人情報保護の法制に対しても柔軟に対応できる体制の構築。

それらの要素を踏まえた国内外企業の成功事例を、安海は挙げていく。
「例えば国内大手コンビニエンスチェーンでは、データ管理の複雑化/高度な分析が困難/分析ニーズ多様化への対応/外部データや非構造化データなどの分析という課題を抱えていました。それに対しSASは、情報システム間を安全かつ迅速に横断する仕組みを提供しました」

これにより、分析したいときに、必要なデータを、最適なタイミングでスピーディーに活用することができるようになったという。

もうひとつの事例はアメリカのスポーツ/ライブ エンターテインメント企業だ。オンプレミスの限界から、クラウドベースへの移行を検討しているタイミングで、SASが参画したという。

「クラウド移行のサポートだけでなく、SASは高度なアナリティクスの活用により、コロナ禍でのファンのニーズの変化に対応、予測する仕組みをつくりました。パンデミックの不確実性もデータ予測で軽減し、COVID-19の緊急時対応もスムーズに策定できるシステムを開発したのです」

どんなにデータがあったとしても、アナリティクスの力がなければ絵に描いた餅になる。DX奏功におけるアナリティクスの重要性についての大きな学びの感動が、観客の間に広がっていったようだ。

日本企業がGAFAに対抗できる日



島田太郎|東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者(2022年3月1日より東芝 代表執行役社長CEO)

次に登壇したのは、「世界有数のCPS(Cyber-Physical Systems)テクノロジー企業」になることを目指し、全社一丸となってDX推進に取り組む東芝の執行役上席常務 最高デジタル責任者・島田太郎である。

「スケールフリーネットワークで起こすDX2.0とQX」と題された講演では、日本が勝ち抜くDXの進め方について言及した。

最初に島田が指摘したのは、過去10~20年で隆盛を極めたGAFAが、データの臨界点を迎えるという予測だ。

「彼らがもっているのは、すべてデジタルで完結する“Cyber to Cyber”のデータに限定されています。しかし人はデジタルのみで生きているわけではありません」

それを島田は“Cyber to Physical”のデータを扱う、DX2.0の時代と名付けた。人の身の回りには、POSデータ、駅の自動改札、高速道路のETCに至るまで巨大なPhysicalデータが存在し、それら手つかずのままのデータを加えれば、ビッグデータの常識をはるかに越える規模になるのだという。

「鍵になるのはこれらのデータを活用するプラットフォームを、構築できるかどうかです。そうしたリアルのデータをCyberに接続することさえできれば、日本企業は確実に、GAFAに対抗できる存在になるでしょう」

そうした明るい未来を迎えるために、島田は東芝のなかでDXを進めるにあたり、理解(社内全体が同じ言葉で語れるようにする)し、試行(体感する)し、本格展開する、の3つの段階を設定したという。

「陥りがちな間違いは、まずAI人材を集めようと動くこと。最初に自社のパーパスを鑑みて、DXで何を得るかまでを考える必要があるのです。AI人材はそれらの決定後に調達しても全然かまわないのです」

では企業は、プラットフォームを生み出すために、何をすればいいのだろうか。
「変化の時代にあって、5〜10年後の世界を予見できる人は誰もいません。そこで大切になってくるのがスケールフリーネットワークを取り入れることです」

自分の意志でユーザーがリンクを張っていくスケールフリーネットワーク


「FacebookやInstagramは“コト”ではなく“コトが起こる場”をつくったと考えています。そこでユーザーがネットワークを積極的に広げて、膨大な価値が生まれました。これが、人間がつくり出したスケールフリー(べき乗)のネットワークです。それぞれの人間が、サービス・プラットフォーム上で自分の意志でリンクを張っていく。その活動が拡散し、一定以上の数になると爆発的な増大に転じる。サービス側はそのための場を用意するのみ。それは先行き不透明な時代に適した戦略なのです」

ではどのようにすれば、スケールフリーネットワークを生み出すプラットフォームを構築できるのだろうか。

「この仕組みの構築に、大きな投資は必要ありません。誰もが使いたくなる自社のアセットをオープン化すればいいのです。かつてIBMはAT互換機を開発し、仕様を公開しました。それにより多数のメーカーが参戦し、より安価で高性能のPCが次々生まれてきました。このときIBMが積極的に他メーカーに販売を促したのではないことに注意してください」

つまりIBMは、自社の独自技術を公開し、各メーカーの自由な活用が可能なプラットフォームをつくり出したとも言えるのだ。

東芝はこの仕組みを社内にも応用し、社員が事業アイデアを発表できる社内ピッチ大会の場などをつくることで、すでに50件以上が事業化に向けた実践プロジェクトとして推進されているのだという。代表的なものは以下の3つだ。

①物流データエントリーサービス(従量課金OCR)……既存のOCRでは読み取れなかった宛先情報を東芝のOCR技術で自動的に読み取るサービス。
②カメラ付きLED照明「ViewLED(ビューレッド)」……工場など製造現場を見える化し、さまざまなシーンを記録すると同時に、作業分析や安全アラート発報、人流分析サービスなどを提供する。
③スマートレシート®……スマートフォンアプリをダウンロードして対象店舗で提示すると、電子化されたレシートがアプリに送付されるサービス。

「スマートレシート®は、リアル店舗で送信されたレシートデータをもとに、さながらAmazonのように、レコメンドができるようになります」

(「スマートレシート®」は東芝テックの登録商標)

この仕組みはすでに福島県会津若松市内で約80店舗に導入され、地域ウォレットと連動することで、店舗が的確なレコメンドを実現できると証明された。現在では東急ストア全店舗、スギ薬局、ミニストップ全店など続々とスマートレシートに参加しはじめており、今後導入店舗10万店を目指している。

利用者個人はサービスを活用し、自身の得になると感じれば、自分の意志でさまざまな企業に自身の情報を紐付け(タグ付け)していくことになる。たとえライバル企業同士であっても、だ。

「グローバルでも個人情報の所有権は本人にあることが常識になっています。しかし逆に言えば、本人の意志ならば、どのような紐付けも行えるということになるのです」

その基準さえ全うすれば、今後さらに厳しくなっていく個人情報環境も怖くないのだと島田は指摘する。

「さらに忘れてはならないのは、DX2.0の向こうにはQX(Quantum Transformation)があるということです。これは巨大なデータの解析をリアルタイムに行う量子コンピューターを中心とした改革です。さらに超高速な量子インターネットが導入されると、どんな巨大なデータも500km離れた場所で同時に存在する状況が生み出せるのです」

その世界はまさに、予測不可能なワクワクする世界だと、島田は笑う。
「技術が結集することにより、今までには考えられなかったデータの接続、思いもよらない研究開発がどんどん発展していくでしょう。そしてものづくりに強い日本はPhysicalなデータの宝庫な分、より大きなデータを接続できるに違いありません。それはきっと日本にとっての大きなチャンスにつながるはずです」

ラウンドテーブル──参加者全員で探る改善へのヒント



(左)森秀之|SAS Institute Japan 執行役員 本部長 ソリューション統括本部兼日本・韓国ソリューション統括 /(中央)小笠原英彦|SAS Institute Japan 執行役員 コンサルティングサービス統括本部本部長

講演を聴き終えた参加者たちは、最後にラウンドテーブルを囲み、東芝・島田とともに和やかな対話の輪を生み出した。場を取り仕切るのは、Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香である。
出席者は製造業、金融業、インフラ関係など多彩な業界にわたっているが、その関心はひとえにDX推進の課題だ。まずはそれぞれの自己紹介。DXに対する各人の奮闘ぶりがうかがえて、会場内には共感と笑いが満ちあふれていった。

「開発部と向上をデータ化・連携することで、業務を改善しようとしたのですが……。"経験でわかっている、これで何十年もやってきたのだから"と、現場にみごとに拒絶されてしまいました」(製造業)

その課題に対して、島田が自らの経験と知見で解決の手がかりを示唆していく。
「昔もいまもIT担当者は嫌われるものです。ただ解決するために、IT人材を現場に行かせることはおすすめしません。

むしろ現場で信頼を得ている人材を、IT部門に招く方がはるかにいい。彼らはおそらく現場で本当に困っていることを知っているはずですから。そして施策はまずそうした意見を取り込んで、現場が楽になることから始める。これにより成功率はかなり上がるはずです」
そもそも現場は忙しく、勉強する暇などないということを把握する必要があると、島田は力説する。

もちろん、そうしたDXの入り口にも立てていない、次のような例もある。

「デジタルイノベーションを担当しているのですが、名ばかりで中身は何も進んでいません。結局のところ、もっぱら社内Wi-Fiが切れるたび、その解決をしているのが現状です」(金融業)

次に出た話題は、データの問題である。データがあったとしても、なかったとしても同様に問題になるようだ。

「データは存在するのですが、どれも非構造のデータばかりが蓄積されています。したがってデータ活用のための下準備段階でつまずいている状態です」(金融業)

「オンプレミスでシステムを構築しました。ただできて間もない会社なので、まだ触れるデータがほとんどありません」(金融業)

「社内システムを担当しており、ゆくゆくはビッグデータの活用も視野に入れています。しかしデータ活用自体が社内で抵抗を受けており、暗礁に乗り上げています。PoCの実施にたどり着くのはいつになるのか……」(電機業界)

難しそうに見える非構造データ問題の解決こそ、スケールフリーネットワークに適していると、島田は強調する。

「これこそスケールフリーネットワークが真価を発揮する局面ですね。プラットフォームを構築し、ユーザーが自らデータをインテグレートしてくれる仕組みを構築することが最適なのではないでしょうか。Facebook、Instagramなど、ユーザーが自発的にタグ付けをすることで成功している例が多数あります」

データに関してはプラットフォーム構築に際して重要なのが、マルチクラウド対応も含めたデータの汎用性だと、SASで執行役員 コンサルティングサービス統括本部 本部長を務める小笠原英彦は知見を述べる。

「DXを考えるとき、最重要なのがグランドデザインです。自社はどこで利益を得、顧客に対するセールスポイントはどこなのか、そこを割り出すことで、データのつくり方は見えてくるのです。そしてそれらデータの汎用性をAPI活用などで担保しておけば、来たるべき未来の変化に対応しやすくなります」

そう言う小笠原に対して、列席者は「尖ったことをしているベンチャー企業などを、我々にSASがつないで欲しい」という声が、次々寄せられる。

最後に島田が、参加者にエールを送る。「この世にDXから逃れられる人は誰もいません。だからチャレンジするしかないのです」

各業界・企業の具体的な論点が熱をもってやりとりされたラウンドテーブルでは、数多く、幅広い知見が会場内に行きわたり、この日のイベントは幕を閉じた。


SAS Institute Japan

島田太郎(しまだ・たろう)◎1990年より航空機設計などに従事。Siemensを経て、2018年コーポレートデジタル事業責任者として東芝に入社。19年に執行役常務 最高デジタル責任者、20年に執行役上席常務。東芝デジタルソリューションズ取締役社長、東芝データ代表取締役CEO、ifLinkオープンコミュニティ代表理事を兼任。上記は講演当時。22年3月1日に東芝 代表執行役社長 CEOに就任。

安海栄幸(あんかい・えいこう)◎2008年 SAS Institute Japanに入社、カスタマーアドバイザリとして、主に通信、運輸、製薬および小売事業者に対して、経営管理などの業務効率化・高度化やデータマネジメント・ガバナンス、AI・アナリティクス基盤の構築・導入に向けたソリューション提案等に従事。

Promoted by SAS Institute Japan | text by Ryoichi Shimizu | photographs by Takao Ota | edit by Yasumasa Akashi

ForbesBrandVoice