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2022.01.13 11:00

新しい価値観によってマネーの動きが変わる。 「ウェルスマネジメントフォーラム」で語られた「事業承継」「資産継承」「資産運用」

11月26日に開催された「MUFG Wealth Management Presents ウェルスマネジメントフォーラム~あなたの豊かな人生設計に役立ちます~」は、サステナブルな時代にふさわしい個人と法人のマネー・マネジメントを考えるという、ユニークな切り口のフォーラムである。

SDGsという言葉は時代のキーワードとして、新聞等でも見ない日はない。あらためて概要を説明すると、SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された17の世界的目標、169の達成基準、232の指標からなる持続可能な開発のための国際的な開発目標を指し、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成することが決まっている。企業にとっても、グローバル・レベルで実現するべき課題であり、事業計画の策定でもそれを踏まえた思考が必要とされている。

つまり、従来の「経済成長」のイメージも、それに合わせて修正が必要となる。実は、そのことは個人と法人のマネー・マネジメントにも関わってくる。このフォーラムは、そんな問題意識から開催されたものだ。

フォーラムは大きく3つのパートに分かれる。「事業継承」「資産承継」、そして「資産運用」という3つである。それぞれ、テーマにふさわしい話者が対談を通して経験と知見を語り合うという形式で進められた。

企業はどうサステナビリティと向き合うべきか


最初に、三菱U F Jフィナンシャル・グループの亀澤宏規取締役 代表執行役社長グループCEOが登壇し、日本におけるSDGsの第一人者である環境学者の蟹江憲史・慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授と基調対談を行った。

テーマは、「企業はどうサステナビリティ(SDGs)と向き合うべきか」「変化の速い時代に、MUFGとして果たすべき役割は何か」。

まず、亀澤CEOがサステナビリティ経営に力を入れる理由を説明した。

「環境や社会が持続可能であって初めてMUFGも持続的に成長できる。会社は社会の一部を構成していて、私たちMUFGが、本業を通じて社会にいいことを成し遂げれば、社会に存在した方がいいと評価され、次世代にもつながる。この一連がサステナビリティであり、そんな循環を回すためには、私たちの周りの環境・社会も持続可能でなければならず、サステナビリティ経営は必然だと考え、取り組んでいる」

その考えに基づき、MUFGは「世界が進む力になる。」と企業のパーパスを再定義している。

話はSDGsと、それに関連して企業が取り組むべきESG、すなわち「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」という課題をめぐって展開された。


写真左から、日本テレビアナウンサー 豊田 順子氏、慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授 蟹江 憲史氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 亀澤 宏規氏

企業にとってSDGsは、自由な事業活動の制約になるイメージもあり、守るべき指標としてのESGにも負荷を感じる向きもある。しかし、本当にそうなのだろうか。

亀澤CEOの「SDGsには守りとか管理という側面が強いが、ある意味でビジネスチャンスにならないと持続しないのではないか」という問いかけに対し蟹江教授は「ESGは企業にとってリスクに関する話だが、SDGsはチャンスだと思う」と呼応する。

それはどういうことか。

「17の目標、169のターゲットについて、例えば気候変動の目標に達成するようなビジネスをすることで雇用を増やしたり、貧困をなくすことで雇用を増やしたり、というように、17の目標を全部つなげていくとチャンスが非常に大きくなる。“何が世界にとって必要なのか”という発想によって新しいビジネス・シーズの結びつきが生まれ、それがビジネスチャンスを生む。この視点は、SDGsに新たな可能性を見出すための大事なポイントではないだろうか。

実際、同社ではMUFGファースト・センティア サステナブル投資研究所を設立し、SDGsをチャンスと捉えて事業展開を積極化する企業のリサーチを始めている。蟹江氏もアカデミック・アドバイザリー・ボードの一員となっているこの研究所は、日本に閉じないグローバル・中立的な視点により、リサーチ情報を発信していく。

MUFGのパーパスは「世界が進む力になる。」

お客さまやステークホルダーなど、一人ひとりみなさんが一歩前に進んだり、思いを叶えるための力になり、そして様々な社会課題に貢献する。本基調対談では、その企業姿勢を明らかにした。

「日本酒界のスティーブ・ジョブズ」が語る事業承継


「事業継承セミナー」では新政酒造(本社:秋田県)の佐藤祐輔社長が登壇し、三菱UFJ銀行 ウェルスマネジメント営業部ファミリーオフィス室の岡田将稔室長と対談を行なった。ファミリーオフィス室は創業家の持続的発展をサポートする業務を行なっている。


写真左から、日本テレビアナウンサー 豊田 順子氏、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部 ファミリーオフィス室長 岡田 将稔氏、新政酒造株式会社 代表取締役社長 佐藤祐輔氏

佐藤社長は、老舗酒造会社の長男として生まれたが、東京大学を卒業した後、ジャーナリストとしてマスコミで働いていた。家業に興味がなく、それは弟が継ぐものと考えていたのだという。

しかし、知人の勧めで日本酒を飲んだことをきっかけに、日本酒の美味しさに目が覚めた。当初はあくまでジャーナリストとして酒造りに興味を持ったのだが、研修を受けるなどするうちに使命感が生まれた。その後、新政酒造が経営危機に陥りそうなことを知り、秋田に戻って入社した後は、安価な普通酒から純米酒への方向転換をリード。従来路線からの一大転換に親族や取引先から反発も招いたが、新しく製造を始めた純米酒の評価は高く、業績が回復するとともに、業界を改革する若いリーダーとしても注目を集めるようになる。「日本酒界のスティーブ・ジョブズ」との異名もあるのだとか。

佐藤社長は、事業承継とは単に昔からの家業を引継ぎ続けて行くのではなく、時にはその時代にあった大胆な改革も行い、時代と共に柔軟に成長していくことが必要と考える。

これに対して岡田室長は、佐藤社長の改革を評価しながら、日本の中小企業の問題として、代表者の高齢化や後継者問題、後継者難による廃業等が顕著となっている事などを、数値を交えて解説した。

望ましい資産継承は、どのように進めるか


続く「資産承継セミナー」では、歴史小説をはじめとして幅広いジャンルで数多くの作品を執筆してきた直木賞作家の浅田次郎氏が登壇。三菱UFJ信託銀行MUFG相続研究所の小谷亨一所長との対談で、長い歴史の中での日本人の死生観の変化を踏まえて「想いや財産のつなげ方」を語った。


写真左から、日本テレビアナウンサー 豊田 順子氏、三菱UFJ信託銀行 MUFG相続研究所 所長 小谷 亨一氏、小説家 浅田 次郎氏

話は浅田氏が昨年上梓した『流人道中記』を題材として進められた。本作の舞台は江戸時代。罪を犯し、蝦夷、今の北海道へ送られることになった旗本と彼を途中まで送り届ける役目を与えられた19歳の与力の物語で、当時の庶民の人間模様や生き様が描かれている。法やしきたり、道徳、義理など、「武家」に縛られる侍は、どのように時代独特の死と向き合い、家族への配慮などを行っていたか。それは、現代の家族と重なるところがある。

小谷所長は「この作品を読んで、仕事柄強く共感を受けた部分が2か所あった」という。一つは「法の上に礼がある」、もう一つが「情理は表裏」というところ。

「情の無い理屈や理屈の無い情の話だが、これはわれわれのように相続業務を行っている人間には非常に重い響きがある。相続で争う場合、この二つが欠けているケースがほとんどと言えるからだ」

それを受けて、浅田氏も持論を述べる。

「自分が築いた財産は、子どもが引き継ぐべきものではない、というのが僕の基本的な考え。というより、財産というのは、自分の力で築き上げていくべきものだ。これが基本である、ということは忘れてはいけない。長寿社会になって承継する年代がみんな高いので、社会知識もみんな蓄えての承継になるから、これは若いときより、もめることも増えるだろう。だから、これから非常に難しい時代に入るのではないか」

では、望ましい資産継承は、どのように進めるか。対談では遺言について、また資産の承継の仕方について話は進んだ。

「長寿時代、加齢による機能低下は避けて通れない。そして、その場合、日本人は周りに迷惑を掛けたくないと考え、自分だけで頑張ろうとする。しかし、これからはそうではなく、サポートを受けて楽しく人生を過ごす時代だと思う。財産に関するサポートとしては、本人だけでなく家族も安心できるよう、遺言や信託の活用をお勧めしたい」。小谷所長は、こう語った。

世界で3900兆円にも及ぶESG投資


最後の「資産運用セミナー」では、先に挙げたESGによって企業を評価する投資法をめぐって、座談会が行われた。ゲストは報道・情報番組のコメンテーターも務めるタレントの眞鍋かをり氏。専門家として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経営企画部の吉高まり副部長、三菱UFJ国際投信 商品マーケティング部門の駿河秀樹常務執行役員、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の浜田直之取締役副社長。

眞鍋氏の質問に、専門家たちが答えるという形で座談会は進められた。


写真左から、日本テレビアナウンサー 豊田 順子氏、タレントの眞鍋かをり氏、三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経営企画部の吉高まり副部長

ESG投資とは、SDGsを実践していくために必要な企業の実践を評価して投資を行うこと。環境意識の高いヨーロッパを中心に、世界で3900兆円が投資されているという(2020年)。

企業の財務情報には出てこない「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」への取り組みを評価し、投資を行う考え方だが、その背景や具体的な運用法などが3人の専門家によって語られた。

「環境、社会問題などへの事業を通した企業の取り組みによって、資本市場へのマイナスの影響を減らしていく。そのことによって企業価値は向上し、投資家にとっては投資リターンが向上する。そうした相乗効果によって持続可能な社会を実現する、というのがESG投資の基本的な考え」(駿河秀樹常務執行役員)

投資対象は環境に直接関わる業種だけではなく、幅広い。その背景には、いうまでもなくSDGsに対する投資家の関心の高まりがある。一例を挙げれば、大手IT企業はデータセンターを維持するのに原子力発電所何基分ものエネルギーが必要とするが、それについてESG投資家や消費者から気候変動の課題対応が意見されるようになり、対応が必須となっているという。

サステナブルな社会をどのように築いていくか。この新しい価値観がマネーマネジメントを変える。フォーラム全体を通して、このことが強くリアリティを持って迫ってきた。
 

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Promoted by MUFG Wealth Management / text by 間杉俊彦