ビジネス

2021.10.25

「メガブランド信仰」薄れが追い風に? 入浴剤のクナイプが2桁成長を続ける理由

クナイプジャパン代表取締役社長の大脇明憲


高価格帯の入浴剤がなぜ売れた?


同社がコロナ禍で注目を集めたのは、入浴剤カテゴリ全体の伸長に加えて、こうした企業姿勢に共感する消費者が増えたからだと大脇は言う。

「コロナ禍で消費者のニーズは“健康”や“癒やし”に集まりました。つまり、我々のDNAである自然やリラクゼーション、健康とうまくマッチしたんです」

大脇によると、新規ユーザーの特徴は入浴剤を日用品ではなく「ぜいたく品」と捉えている。特別なリラックスタイムや、非日常感を楽しみたいときに使用するのだ。

「彼らの多くは、これまで外食や旅行・レジャーといった“外出型消費”を楽しんでいた層だと考えています。その旺盛な消費意欲を、“巣ごもり消費”に振り向けてくれたんですね」

つまり、「価値があるものには、しっかりと対価を払う」という考えを持つ人が多い。だからこそ、人や環境への配慮にこだわりがあるクナイプの商品は、競合に比べて高価格帯であっても選ばれる。値引きは一切していないが、着実に顧客(ファン)を増やしてきた。

さらに9月には、クナイプ創業130周年を記念して日本市場に特化した「スパークリングタブレット」を発売。ブランド初となる日独共同開発で、日本国内で製造する商品だ。大脇は、さらなる新規ユーザーの獲得に期待をかける。

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「クナイプ スパークリングタブレット」。1錠入り税込308円、6錠入り税込1540円

「新製品は日本主導で企画し、OEMで制作しました。コロナ禍の日本で最も人気の高まったのが炭酸タイプの入浴剤でしたので、欧米とは異なる日本国内の消費者ニーズを的確に捉え、日本の方々に評価が高いバスソルトの香りを採用した商品を出したいと考えました」

入浴剤のヒットをバネに次のステップへ


クナイプの製品は、大きく「バス」と「ヘルス&ビューティー」の2カテゴリに分かれる。現在、日本ではバスカテゴリの入浴剤が主力商品で、売上の約75%を占めている。ただ、ドイツでは入浴剤の売上比率は約40%と少ない。本来は「ヘルス&ビューティー」に強みを持つブランドなのだ。

そのため大脇は、日本でも「ヘルス&ビューティー」を強化している。すでにハンドクリームやビオオイルなどのヒット商品が生まれているが、今後数年間で売上比率を50%まで引き上げることを目標に掲げている。


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「クナイプ ハンドクリーム ネロリの香り」(75ml、税込825円)、「クナイプビオ オイル」(100ml、税込1980円)

「幸いにもコロナ禍で入浴剤の成長軌道を確保することができたので、いよいよ別カテゴリに本腰を入れるタイミングかなと思っています。ボディケアやスキンケアに加えて、メンズビューティーなど新しい製品にも挑戦していきたい」と戦略を描く。

現在のメイン顧客層は30〜40代。これを、20〜30代まで下げていきたいという。
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文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨

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