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左・三井物産 辻林(つじばやし)彩 右・クリエイティブ・ディレクター 辻愛沙子

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「女子大生なのにクリエイティブ・ディレクターってすごいね」
「若いのにバリバリ仕事やってすごいね」

これはメディアでも活躍するクリエイティブ・ディレクター辻愛沙子にかけられた“褒め”言葉だ。

この言葉の中に、無意識の偏見、いわゆる「アンコンシャスバイアス」が潜んでいることに、多くの読者は気付けるだろうか。

今回は二人の女性が徹底的に語り合った。一人は社会のアンコンシャスバイアスを乗り越えるために活動する前述の彼女である。

そして、もう一人はベンチャー企業を経て三井物産にキャリア採用された辻林(つじばやし)彩。

前回の記事に記した通り、三井物産では、「多様性を力に」という経営理念のもと、Diversity&Inclusion(以下、D&I)を力強く進めている。そんな同社にとって重要なテーマのひとつが、如何にして「アンコンシャスバイアス」を乗り越えるか。

三井物産でマネージャーを務める辻林と、クリエイティブ・ディレクターの辻。

二人はアンコンシャスバイアスの存在をどう捉えているのか。そして日本の社会を明るい方角へ導くために、私たちは一個人としてそれとどう向き合っていく必要があるのか、語ってもらった。

■前回記事はこちら:
「商社マン」時代の終焉──ダイバーシティを追求し、変革を続ける三井物産

いつから自分はマイノリティになったのか


アンコンシャスバイアスとは、無意識の思い込みや偏見のこと。

たとえば冒頭の「女子大生なのに」「若いのに」という言葉は、「女子大生にはできない」「若いとできない」という前提となる思い込みが発言者にあるからこそ「~なのに~」という表現になる。

辻がはじめてアンコンシャスバイアスを意識したのは中学時代。幼稚園からの一貫教育の女子校に通っていたが、辻は寮生活を伴うスイスの中学校への留学を決めた。

「当時『女の子なのにひとりで留学なんて、やんちゃね』って友人の親御さんから言われました。その時は、『そうなんです』と笑って返したけれど、私が男ならそんな風に言わないんだろうなとモヤモヤしました」(辻)

留学先には、全世界から学生が集まってくる。髪や肌の色、言語、習慣、宗教は多種多様で、画一的な“普通”という概念は存在し得ない。意見を求められるときは「愛沙子はどう思うの?」と常に個が尊重される環境だった。

しかし帰国後、大学に進学し仕事をはじめた頃、冒頭の言葉を受け、辻は改めてアンコンシャスバイアスの存在を強く意識したのだ。

反対に、三井物産の辻林は大学までずっと男女共学校で過ごしてきた。「自分が女性であることをことさら意識することはなかった」と振り返る。

しかし、社会に出て一変する。

辻林は、以前の職場で、「君は結婚したら仕事はどうするの?」などと聞かれて驚いたという。

「今でも総合職とアシスタント職(一般職)の2つの職種に分かれている会社もあると思いますが、たぶん私が男性ならそんな質問はしないだろうなと。前職のベンチャー企業で、バングラデシュの田舎の方に赴任したときは、『女性なのに、こんなインフラも整っていない環境で働くなんてすごいね』といわれて違和感を覚えました」(辻林)

インフラが整わない環境で働くことは、確かに大変かもしれない。しかし、それは男女の性差に関係ない大変さ。

「いつのまに私はマイノリティになってしまったんだろう」

辻林はつくづくそう感じたという。

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自分の中にだってアンコンシャスバイアスはある


「しかし自分の中にもアンコンシャスバイアスはある」と、辻林は告白する。

「実は今回の対談テーマを知って、自分自身のバイアスに気づいたんです。バングラデシュは人口の9割がイスラム教徒です。当時、私はTシャツとパンツで過ごし、車で各地を回っていましたが、現地の女性は伝統服を着て、あまり家から出てこない。すごく抑圧されていると感じていたんです。

ところが、ジェンダーギャップ指数(※)は、バングラデシュは65位で日本は120位。バングラデシュの首相が女性という要因もあるかもしれないけれど、それでも『抑圧されてる』というのは私の先入観。宗教と女性の地位を無理に結び付けてはいけないと思い直しました」(辻林)

自分の中のアンコンシャスバイアスについては、辻も同意見だ。

「誰にでもあるかもしれない。私も祖父母にLGBTQの話をするとき懇切丁寧に説明しようとする自分に気づいてハッとしたことがあります。同年代の相手なら『知っている』前提で話すのに。年齢は生きてきた時代背景もあるから、性差より傾向的なものはあるかもしれない。それでも本当は個体差でしかないんですよね」(辻)

今般、社会では、女性やマイノリティに対する偏見が課題視される。しかし、たとえアンコンシャスバイアスの対象に自分がなるケースが多いとしても、常に偏見を受ける側にいるわけではない。

思いのほか身近なケースで、自分自身がバイアスをかける側になっている可能性もあるのだ。そうふたりが気づかせてくれた。

(※ 世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report」2021年版)

より慎重さを求められるのは、評価する立場、育てる立場


「アンコンシャスバイアスには、ひとの人生まで左右しかねない危険性がある」──。

辻は、そう警鐘を鳴らす。

「現代に生きる私たちは少なくともアンコンシャスバイアスという言葉を知り、自分の中にも思い込みや偏見があるかもしれないと認識することが最低限必要だと思います。自分にバイアスはないと思い込むのがいちばん危険。

企業など組織内で、マネジメントの立場にあったり、誰かを評価するポジションにいるひとは特にそう。たとえば積極的な発言をした場合、女性だと『ワンマンで感情的』、男性だと『リーダーシップがある』とまったく異なる評価になることもあります。逆もあって女性なら『慎重』、男性なら『勇気がない』と捉えられてしまうことも。

でもその評価ひとつで、そのひとのキャリア、ひいては人生を変えてしまう可能性があるんです。働く人の能力の最大化がマネジメントの役割だとするなら、その責任として、自身のバイアスに自覚的になる必要があると思います」(辻)

組織の原動力は人。社員それぞれの能力発揮の為に、人材配置に携わる社員や評価を行う管理職層が、いかに自らのバイアスを認識して、適切な人事判断を行えるかが重要だ。

そのため三井物産でもマネージャーに必要なスキルを高めていくために社内研修等を推進している。「多様性を力に」する行動が求められている同社。

社員一人ひとりのエンパワーメントと実力主義の風土を醸成するため、組織的に取り組んでいくという。

一方、妊娠8カ月で産休を目前に控えている辻林は「子育てで自分がアンコンシャスバイアスを発揮してしまわないか」と心配する。

「日本に理系の女性が少ないのは課題と言われていますが、私が与える玩具ひとつで理系か文系か、子どもに固定された価値観を押し付けてしまうかもと思うと怖くて。もちろん周囲のいろんな方の影響を受けて育ってほしいのですが、それこそ海外留学など親の支援がないと選べない選択肢もあるから。親の責任をヒシヒシと感じていますね」(辻林)

本来なら能力を発揮できるものが妨げられてしまう。これこそがアンコンシャスバイアスのもつ、最も大きな負の力だ。

だからこそ上司であれ親であれ、人を育てる立場にいるならアンコンシャスバイアスに対する敏感さと見識が求められることは間違いないだろう。

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急速な変化の先には明るい未来。炎上だって変化の兆し


「社会課題xクリエイティブ」で社会を変えていこうと、辻が決意したのは数年前。ある雑誌の記事に、強烈なアンコンシャスバイアスの表現を見つけたときだった。

それからまだ数年しか経っていないが、辻は志を同じくする個人や企業との出会いがどんどん増えているという。「自分一人で孤独に戦っているという感覚は、今はない」と。

では10年後の日本は、どうなっているだろうか。

「明確に変わると思います。近代になればなるほど、社会は指数関数的な変化を遂げています。1年の変化の総量は年を追うごとに増えているからドラスティックな変化もありえます。
ただ最近は、社会の変化のスピードが速すぎて個人が追いつけていない。今の社会には深掘りが足りない気がします。

個人にとっては、社会の急速な変化に合わせて走り抜けるというより、時にゆっくりと内省しながら進んでいくことが必要ではないかなと。
企業ではアンコンシャスバイアス研修など増えていますが、そうした地道な取り組みも重要。個人が一度立ち止まって考える時間が、社会に生まれるといいなと思います」(辻)

辻林も同様に、未来をポジティブに考えている。

「私も社内研修を受けました。三井物産がかなりの時間を費やして、アンコンシャスバイアスなど多様性というテーマに力を入れていることは私も肌で感じています。

私は“炎上”を必ずしもネガティブに捉えなくていいと思うんです。研修や会議などでの発言が非難を招いたとしても、『相手に同調するほうが楽なこともあるのに、異なる意見がぶつかったから起こったんでしょ、むしろ面白いよね』とポジティブに捉えたい。意見のぶつかり合いも変化の兆し。これが積み重なって、少しずつ変わっていけると思うから。

役員からは、キャリア入社の私に『三井物産に染まらないでね』とよく言われます。そう声をかけてくださる方がいることは心強いです」(辻林)

アンコンシャスバイアスを理解して、行動する。その前に必要なのは自らが持つアンコンシャスバイアスの存在を認めること。

そして自らの視点や意見を慎重に見直す姿勢と、他者と話し合いを重ねることなのではないだろうか。にこやかに語る二人の表情に、多様性に溢れる明るい日本の未来が確かに感じられた。

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