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2021.03.31 16:00

誰もやらない“ぶっ飛んだこと”こそ大阪で!

ライトタッチテクノロジー代表取締役 山川考一

ライトタッチテクノロジー代表取締役 山川考一

国内で約2,000万人の有病者と予備群がいる(※1)とされる糖尿病。世界での有病者数は2019年時点で4億6,300万人にのぼり、これは実に成人の11人に1人に相当する。糖尿病を患うと血糖値測定やインスリン注射が不可欠になり、QOL(生活の質)を大きく低下させることになる。

そこに風穴を開けるのが、ライトタッチテクノロジーが開発した血糖値センサーだ。レーザー開発の研究者であり同社の代表取締役を務める山川考一に、現在までの足取りと大阪への思いを聞いた。



「針のない血糖値センサー」で糖尿病患者のQOLを改善


よく知られるように、糖尿病は体内でインスリンが生成できなくなったりインスリンが効きにくくなったりし、血糖値が異常に高まって死に至ることもある病気だ。また、さまざまな病気を誘発したり重症化させるリスク要因でもある。糖尿病患者は1日に4~5回、血糖値測定とインスリン注射のために自ら注射を行っている。特にインスリンが生成されない自己免疫疾患である1型糖尿病の場合、年間約3,000回もの注射が必要となっている。

ライトタッチテクノロジーが開発したのは、注射をせずとも血糖値を測定できる機器だ。センサーに指を当ててレーザーを5秒間照射すると、即座に血糖値が表示される。高輝度の「中赤外線レーザー」を応用し、血液中の糖(グルコース)の吸収を測定することにより、血糖値を割り出す仕組みになっている。

「最大の特徴は、注射して採血を行うことなく、非侵襲で血糖値を測定できることです。1型糖尿病でいえば、従来の3,000回の注射のうち、血糖値測定のための1,500回分を削減することができるのです。これにより、患者さんやご家族の精神的、肉体的負担が大きく軽減し、QOLの改善が期待できます。非侵襲で血糖値を測定するセンサーの開発は約30年前から行われていましたが、私たちは世界ではじめて、一定の条件の下、国際標準化機構(ISO)の基準を満たす機器の開発に成功しました。高い検出精度を実現しており、ある測定範囲において医療機器として認められる水準を実現しました」(山川)

原理実証はすでに済んでおり、現在、量産と臨床試験に向けた準備を進めている。その後、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による承認審査を経て、2023年の上市を目指している。



大阪のスタートアップを盛り上げていきたい


山川は国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の研究者として、高出力のレーザー開発に取り組んできた。2003年には、当時の世界最高出力である850兆ワットのレーザー開発に成功した実績もある。会社設立は2017年。出身地である大阪を拠点とした。

「スタートアップといえば、確かに東京が中心地です。しかし、その流れに乗るのに疑問を感じました。『大阪でもできるんだ!』ということを実証し、後に続く方たちの呼び水的存在になりたいという思いがあったんです。私たちが成功し、事業を成長させていくことで、大阪の雇用や人材育成の拡大に貢献したいという思いもありました。」と語る。

また、東京に比べてスタートアップ企業数が少ないことは、むしろ大阪のメリットであるとも指摘する。多くの企業のなかで埋もれてしまうよりも、「目立ちやすい環境」であることが成長を加速させるというのが、山川の考えだ。同社は医療や介護、健康などの分野で新たな需要創出が期待できる事業を大阪市が認定する「大阪トップランナー育成事業」に採択されているほか、近畿経済産業局による関西の有望なスタートアップを地域ぐるみで支援する「J-Startup KANSAI」にも選定され支援を受けている。これらは、支援機関から「支援を受けたことがさらに注目を集めることにつながる」という好循環をもたらした。支援が分散せず、成長サイクルが回り始めた企業へと集中しやすいことが、大阪の強みなのかもしれない。

「大阪トップランナー育成事業に採択されたことで、人的支援を得られたことも大きかったです。私は研究者出身なので、財務をはじめとした会社経営に関しては知らないことだらけ。専門家の先生を紹介してもらい、財務状況の改善を助言してもらうことができました。この他にも、組織づくりについて相談に乗ってもらえる専門家とのつながりを得ることができました。テレビや新聞で紹介され、活動が全国区になったのもトップランナーがきっかけです。」

大阪ならではの人と人との距離の近さも、山川の支えになっていると言う。スタートアップを率いるうえで、将来への不安や思い通りにならない現状への不満など、フラストレーションが溜まる場面も多い。それらを共有したり吐き出したりできる“大阪人の密度の濃いコミュニケーション”に救われたことも、一度や二度ではないそうだ。



大阪を「実証実験ができるまち」に


冒頭で紹介したとおり、世界では糖尿病の有病者数が4億6,300万人にのぼる。同社はもちろん、この巨大な世界市場を視野に入れている。すでにJETROのサポートを得てシンガポールでのイベントにも出展し、手応えを感じている。また、「世界から見たら、東京も大阪も変わらない」という感触を得ており、「大阪でもスタートアップができることを証明しよう」という思いをさらに強めた。そんな同社だからこそ、大阪のスタートアップ支援環境に期待するものも大きい。

「行政や支援組織が主体になって、スタートアップを取り巻くコミュニティづくりを進めてもらいたいです。私たちもつながりづくりには力を注いでいますが、やはり企業が個別に動いていては限界がある。各方面に知識と経験、ネットワークをもつ人を中心に据え、周囲を巻き込んでいってほしいです」

いま以上に資金を調達しやすい環境の整備も、山川が期待するポイントだ。現在の同社は、量産と臨床試験という最も資金が必要なフェーズにいる。しかし出資する側は、試験の結果を見てから出資を決めるというスタンスが多数だ。いわゆる「死の谷」に差し掛かっているだけに、将来性を見込んでリスクを取るという風土がさらに醸成されることに期待している。

スタートアップの先輩として、山川は後輩起業家へ2つのアドバイスをしてくれた。1つは、「手伝ってくれる人をできるだけ早く見つけよう」というもの。これは必ずしも自社内における参謀役的な社員というわけではなく、むしろ、社外の相談相手が望ましいという。

「適切な情報を適切なタイミングで提供してくれる人がいると心強いです。ダメなものはダメと言ってくれる人など、自分たちのことを思って率直な意見を聞かせてくれる人は、非常にありがたい存在です」

もう1つは、「創業は慌てなくてもいい」というもの。これは、研究開発型スタートアップに向けたアドバイスだ。

「私もそうですが、研究者は会社経営をはじめとして社会のことを知らなさ過ぎるケースが多いです。その状態で起業すると不必要な苦労までしてしまいますし、失敗のリスクも高まります。開発したコア技術に優位性があれば、簡単には真似されないはずです。ならば、社会やスタートアップについて学んでから起業しても決して遅くないと思います」

最後に、山川が思い描くスタートアップのまち・大阪の未来像を聞いた。

「例えば『この業界で起業するなら東京』という図式ができあがった業界がありますが、大阪にはそれがありません。これは決して悪いことではなく、『大阪なら何でもできる』という多様性や懐の深さを表していると思います。他の地域ならできないようなチャレンジや、誰もサポートしないようなスタートアップも、大阪でならチャレンジできる。いわば“実証実験のまち”です。ぶっ飛んだアイデアや技術をもつスタートアップが『大阪でならできる』と思い、集まってくるまちになってほしいです」

世界の研究者が30年にわたってチャレンジしたものの、実現できなかった技術を誕生させた山川。すでに“ぶっ飛んだ”存在とも言える同社が世界へ飛躍し、「大阪でもできる!」「大阪だからできる!」を証明してくれる日も、そう遠くないはずだ。

※1 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター



山川考一◎ライトタッチテクノロジー代表取締役。2017年7月に同社を設立。先端レーザー技術を駆使した、採血が不要なモバイル型血糖値センサーの開発および、医療機器並びに医療システムの研究開発を行っている。

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